25話 少し異様な食卓
「最近、2人でよく遊んでいると聞いた。先日の件があるが……2人とも、体はもういいのか?」
食事中、お父様がそう声をかけてきた。
それを聞いたお母様は、笑みを見せた。
「ええ。もう大丈夫ですわ。主治医も問題ないと申していました」
「そうか」
特訓のことはお父様にも話していないため、遊びということになっている。ルーシーとの特訓の時にも、言わないようになっていた。
以前は隠す理由を疑問に思っていたが、2度もこうなると流石に理由は察した。この世界は中世ヨーロッパモデルにしている。恐らくだが、幼少期からあまりにも天才すぎると命を狙われる、とかそういう理由だろう。そして、他者にバレるリスクを減らすためにお父様にも話していない。多分、そんな感じだ。
「サラはよく食べるな」
「最近、よく遊んでいますからお腹が空くのでしょう」
あんな猛特訓をすれば誰だってお腹が空く。魔法を使えばお腹が空いてくるということもあるのかもしれないが、明らかにそれだけではない。
そんな私の一方で——
「いぎゃああああ!」
メイドが持っていた哺乳瓶を振り払い、泣き叫んだ。床に落ちた哺乳瓶からは大量のミルクが溢れた。
「私に任せて」
この前の一件がトラウマなのだろうか。ダグラスは事あるごとに悲鳴のような泣き声を上げるようになってしまった。以前でもかなり手がかかっていたが、今ではそれ以上だ。
「はーい、よしよし」
お母様があやすと、少し落ち着いてきた。
こんな風になるのも、母親から長時間離れていたのも原因の1つだろう。だが、魔法の特訓の場にまだ赤ちゃんの弟がいるのは危険だ。その間のメイド達の苦労は計り知れない。
「……」
「……?」
それを何も言わず、ただ見つめるお父様。その表情はどことなく重い気がして、疑問に思った。いつものお父様なら、これを微笑ましい光景として見ているはずなのに。
「……後で話がある。私の執務室に来てくれ」
「……承知しましたわ」
その返事聞いたお父様は無言で席を離れてしまった。まだ食事は終わっていない。お父様にしては珍しい行動だ。
「サラ、食事が終わったら私と一緒に執務室へ行くわよ」
「えっ」
驚いた。お父様はほぼ間違いなく深刻な話をお母様にするつもりだ。それなのに、私も同席?
「貴方がくっついて離れないことにしておきましょう。私の足にでもずっとしがみついてなさい」
「は、はあ……」
それでいいのか、と思わず思ってしまった私であった。




