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22話 目覚めの時

「ん……」


真っ黒な世界から彩りのある世界へと移り変わった。

目を覚ました直後だからか、頭がぼーっとする。だが、今の私の状況は、不思議とすぐに理解できた。


「サラ!? 目が覚めたのね! 分かる!?」


「……お母様?」


「そうよ! 良かった……貴方、1週間も眠っていたんだから……」


ああ、1週間程度で済んだのか。お母様のその言葉を聞いて、私はそう思った。

数年眠ることは覚悟していた。あの男を殺してしまえば現時点の面倒事はなくなる。他にも面倒事はあるが、10年以上先のこと。だから、慌てる必要はないと思っていたからだ。


「申し訳ございません、お嬢様……」


お母様の横にいたメイドが頭を下げた。……ああ、私のお世話をしてくれている人か。何も謝る必要なんてないのに。


「……全て聞いたわ、サラ」


ああ、そのことを謝っていたのだろうか。そうであれば、謝りたいのはこちらの方だ。私の我儘に付き合わせてしまったのだから。


「広範囲魔法を強制的に1点に集中させて、より上位の魔法とほぼ同等の威力にしようとした、って感じかしら。暴走中にあんな芸当……暴走を制御しないとできないはず。そんなの、矛盾していて普通はできないわ。その小さな体で、戦闘魔法が使える大人2人分の魔力を受け止めるだけでも凄いのに……」


呟くようにお母様はそう言った。

無我夢中でやったせいか、暴走の反動なのか、正確なことは覚えていない。だが、少なくともお母様の考えのほとんどが正解だ。


「あえて自分には大きすぎる魔力を得ることで暴走、それを制御……意地と根性、って次元じゃないわ。火事場の馬鹿力……いいえ、それ以上かしら。全身に痛みも走ったでしょう?」


これがプロの力なのだろうか。全て見抜かれている。当たり過ぎて、逆にちょっと怖い気もする。


「あの場でサラがどうにかしてくれてなかったら、全滅だったでしょう。あまり強く責められないですわ。ですが……」


何時(いつ)にないほど、お母様は真剣な表情だった。それに呼応するように、メイドは俯いた。


「娘も無事に目を覚ましました。貴方は謹慎処分とします」


「……はい。奥様の仰せのままに」


「だ、だー!」


それはダメだ。全ては私のせいなのに。私の我儘なのに。それに、魔法を学ぶ機会を失ってしまう。

私の抵抗も聞き入れてもらうことはなく、メイドは部屋から出て行ってしまった。


「本当に賢いのね。でも、自分を責めないで。謹慎処分と言っても、すぐに戻るから」


そう言って、お母様は私に微笑みかけた。それを聞いて、少し安心した。


だが、その直後にお母様はまた先程のような真剣な顔に戻ってしまった。


「……彼女にも非はあるの。そうね……貴方には少し話しておく必要があるわね」


そして、お母様はゆっくりと語り始めた。

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