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21話 暴走の果てに

「あ、あ……」


 そんな私達の横ではメイド達が怯えて、床に座り込んでいたいた。恐らく彼女達は魔法を使えないか、使えても生活魔法程度で戦闘ができるほどではないのだろう。ただ見ていることしかできない。


「私の闇魔法にも気付いていなかったから、こんなにも警備が甘かったんでしょうか? ああ、そういえば気付いても無駄だったんでしたねえ。忘れておりました。まあ、いいでしょう。ここで貴方を手に入れられるのなら、文句はない」


「……っ! この子達だけでも……!」


 ダグラスを後ろのベッドに置いた。そして差し出す男の手を振り払い、私達の前に立って必死に魔法を使い続ける。魔法だけではダメだと感じたのか、体術も使い始める。だが、全てかき消されていくかいなされてしまう。


 お母様のこの動き——恐らく、すでに闇魔法の影響を受けている。動きがおかしい。だが、いつ魔法をかけた? 詠唱も、それらしき動作もなかった。


 ……広範囲魔法か? だけど、それならこの屋敷にいる全員が無力化しているはずだ。私達の居場所も不明確なのに人によって効果を変えたりするほどの高等技術がこの男にあるか? あったとしても、魔力効率が悪い。通常よりも魔力を使ってしまうはず。


「きゃっ」


 お母様はフラフラになり、壁に手をついた。それでも諦めずに、私達を守るために戦っている。

 だが、このままでは魔力が尽きる以前に、お母様の体が保たない。


「……」


 ああ。そういえば、もう1人いるではないか。頼りになる人間が。

 今の状況では、誰よりも役に立つ人間が。


「サラ!? ダメよ、下がりなさい!」


「おや?」


 お母様の腕を引っ張り、扉の方へと向かう。当然だが、男は扉を塞いで行手を遮った。


 ——方法なら、1つだけある。


「弟を置いて、お母さんと逃げるつもりなのかな?」


「はっ、ましゃきゃ(まさか)


 ごめんなさい。約束、守れそうにないです。こいつの前で子どものふりなんて、できない。


「……!」


 あまりの雰囲気の変化に驚く男。私はそんな男を下から睨みつけた。そして、メイドとお母様に触れた。


 ……2人とも、借りるね。


「接続完了。清き精霊の泉、流れ揺蕩(たゆた)う河川、大地を繋ぎし大海。我に従い、我が手に集いて限界を超えし力となれ」


 この詠唱はゲームでも出ていたので、覚えていた。言える自信はなかったが、詠唱がスラスラと出てきた。もしかしたら、詠唱は勝手に言えてしまうものなのかもしれないけど。


「!? ダ、ダメ!」


 混乱しながらも止めようとする母を無視して、私は続ける。

 まだこの詠唱だけなのに、全身が猛烈に痛い。体の内側から焼けてしまいそうだ。想像以上だった。


 このままやってしまえば、流石に屋敷が保たない。1点に集中させろ。こいつ1人だけであれば、そこまで広範囲でなくていい。


「っ、水よ……強大なる我らが敵を薙ぎ払い、打ち砕け!」


「なっ……!?」


 どんな手を使って闇魔法の中でも強力な魔法を行使したかは知らない。だが、この広範囲魔法をどうこうしようとしても、闇魔法程度では既に手遅れ。


「ぐああああっ!」


 あっという間に波にのまれ、流されていく。あまりの威力に家を一部破壊してしまったが、火魔法よりは被害は少ないはずだ。


「あ……」


「サラ、サラ! しっかりして!」


 力を使い切った私は、そのまま意識を手放した。

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