18話 習得までの道のりは順調にはいかない
「ぬー……」
何日もかけて何度もやることで、水に魔力を流すことはできているように感じる。だが、そこからが問題だった。
魔力操作が分からない。多分、そこで行き詰まっている。
「その調子ですよ」
そう言っているが、全く進んでいないのではないだろうか。何度もそう言われているが、私自身はやはりそのように感じている。
どうしても、前世の魔法のない世界の感覚に引っ張られているからかもしれない。精神年齢は大人だからこそ、子どもがやるような感覚や直感などよりも理論立ててやろうとしてしまう節もあるのかもしれない。
「補助した方が、上手くいくでしょうか?」
彼女の手が私の手に触れる。すると、水が動いた。
自分の体には今までとは違う、知っていそうで何とも言えない違和感を感じる。成程。これが魔力操作か。
「この感覚です」
感覚は分かった。だが、それを再現するのが難しい。魔力を感じるのとはまた違った難しさがある。
「わきゃらん」
思わず、そう呟いてしまった。だが、本当に分からない。
それを聞き取ったのか、メイドは何かを考え始めた。
「そうですね……本来はない、3本目の手足を動かす感覚と似ているでしょうか……?」
「ほー」
そう言われて、頭の中でそんなイメージを思い浮かべてみる。水に流した魔力を自分のもう1つの手だとして、それを動かすには——
「おっ?」
ほんの少しだが、水に波紋ができた。魔力が動いた感じもする。どうやら、成功したようだ。
やはり私は感覚よりも言葉で説明された方が理解が早いかもしれない。
「いいですね」
「よし!」
今度はもっと大きく動かそうとしてみる。波紋では動かしたという感じがしないので、水を上に持ち上げてみようか。
だが、流石にそれはまだ早いのか動かない。どうすれば良いのか……
「あっ!」
「!?」
突然、そう彼女が声を上げた瞬間、私は驚いた。その影響か、水がコップから大きく溢れ出した。
その水は彼女の体を濡らした。だが、私の方には水は飛んでこなかったようだ。
「大丈夫ですか!?」
「え、うん……?」
彼女のあまりにも慌てた様子に、少し困惑した。私が水がかかったことを心配しているにしては、慌てすぎだ。びしょ濡れになったのであればまだしも、そんなことは全くない。
私が何かやらかした可能性を考えて、自分がミスでもしたか思い返す。だが、特に思い当たることもない。
「良かった……」
そう言った彼女の目からは透明な液体が流れていた。
それが先程彼女を濡らした水なのか、涙なのか。私には分からなかった。