表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/52

18話 習得までの道のりは順調にはいかない

「ぬー……」


 何日もかけて何度もやることで、水に魔力を流すことはできているように感じる。だが、そこからが問題だった。

 魔力操作が分からない。多分、そこで行き詰まっている。


「その調子ですよ」


 そう言っているが、全く進んでいないのではないだろうか。何度もそう言われているが、私自身はやはりそのように感じている。

 どうしても、前世の魔法のない世界の感覚に引っ張られているからかもしれない。精神年齢は大人だからこそ、子どもがやるような感覚や直感などよりも理論立ててやろうとしてしまう節もあるのかもしれない。


「補助した方が、上手くいくでしょうか?」


 彼女の手が私の手に触れる。すると、水が動いた。

 自分の体には今までとは違う、知っていそうで何とも言えない違和感を感じる。成程。これが魔力操作か。


「この感覚です」


 感覚は分かった。だが、それを再現するのが難しい。魔力を感じるのとはまた違った難しさがある。


わきゃらん(分からん)


 思わず、そう呟いてしまった。だが、本当に分からない。

 それを聞き取ったのか、メイドは何かを考え始めた。


「そうですね……本来はない、3本目の手足を動かす感覚と似ているでしょうか……?」


「ほー」


 そう言われて、頭の中でそんなイメージを思い浮かべてみる。水に流した魔力を自分のもう1つの手だとして、それを動かすには——


「おっ?」


 ほんの少しだが、水に波紋ができた。魔力が動いた感じもする。どうやら、成功したようだ。

 やはり私は感覚よりも言葉で説明された方が理解が早いかもしれない。


「いいですね」


「よし!」


 今度はもっと大きく動かそうとしてみる。波紋では動かしたという感じがしないので、水を上に持ち上げてみようか。

 だが、流石にそれはまだ早いのか動かない。どうすれば良いのか……


「あっ!」


「!?」


 突然、そう彼女が声を上げた瞬間、私は驚いた。その影響か、水がコップから大きく溢れ出した。

 その水は彼女の体を濡らした。だが、私の方には水は飛んでこなかったようだ。


「大丈夫ですか!?」


「え、うん……?」


 彼女のあまりにも慌てた様子に、少し困惑した。私が水がかかったことを心配しているにしては、慌てすぎだ。びしょ濡れになったのであればまだしも、そんなことは全くない。

 私が何かやらかした可能性を考えて、自分がミスでもしたか思い返す。だが、特に思い当たることもない。


「良かった……」


 そう言った彼女の目からは透明な液体が流れていた。


 それが先程彼女を濡らした水なのか、涙なのか。私には分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ