16話 魔法の取り扱い
「はー……」
1週間が経過した。あの感覚を元に、魔力を感じようとする。だが、全く分からない。この初期の段階でここまでかかるとは思っていなかった。
「あら。もしかして挑戦しておられるのですか?」
そう話しかけてきたのは、あの時のメイドだ。1人で苦戦している私を見て、少し笑っていた。
「成長とともに魔力は増えていきますからね。1歳の魔力量では難しいのでしょう。自力で魔力を感じることができたとして、早くても3歳くらいですからね……」
それを1歳から挑戦しようとする私。誰がどう考えても、無謀だ。
しかも、魔力は成長とともに増える。つまり、今のままでは魔力はかなり少ないということ。1年の間に、大人を相手にできる魔力を手に入れるなんて、更に無謀だ。
「その上、3歳までに自力で魔力を感じる場合——その殆どが、魔力の暴走なんですよ。魔力が多いと子どもでは制御しきれなくなり、感情の起伏でも暴走しやすいのです」
そういったこともあって3歳児には魔力の扱いは難しく、魔法を勉強するには早すぎるという結論に至った。そして、魔法の勉強の開始時期は基本的に5歳からとなっている。義務付けているわけではないが、これが一般的だ。
……そういえば、魔力の暴走、といえば私の弟だ。ダグラスではなく、もう1人の弟。まだ生まれてきてはいないが、1年後に生まれる。
彼は魔力量が常人よりも多く、扱いにも長けた天才。魔力が常人よりも多いが故に、幼少期は魔力の暴走に悩まされていたという。彼の扱いには要注意だ。
「……失礼しました。お嬢様に暗い話をしてしまいました。だから、本当はお嬢様も魔法を知らない方が……良いのでしょう」
「なら、どーちておせーてくえたの?」
真っ先に思い付いた疑問を投げかけた。
我ながら、生まれ変わってからは1番上手く言えたような気がした。
「天才のお嬢様ならそんな心配もないし、教えるべきだと……そんな気がするんです」
天才とは大袈裟な……と思ってしまうが、それは私の精神年齢が23歳だから。肉体年齢は1歳。中と外の年齢が違うから、周りからすれば天才になるだろう。
「……って、お嬢様。今、結構はっきりと喋られませんでしたか? 『どうして教えてくれたの?』と」
彼女の表情に私は何故か焦りを覚えた。そんな必要はどこにもないはずなのだが、「やってしまった」という感じがした。
「やはり……私の想像以上でした。先に言っておくべきでしたね。どこまで私の言葉を理解されていらっしゃるかは分かりませんが、他の人の前ではそのようなことはなさらないでください。旦那様達も含め、です」
あまりにも真剣な眼差しに、私は何も言えなかった。私から訊くこともできず、かと言って彼女から理由を語ることもない。気付けばいつも通りの彼女に戻っていた。
——流石にもう、“今まで通り”は駄目らしい。