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14話 弟の誕生

「可愛いなあ、ダグラス」


 私が産まれてから約1年後、弟のダグラスが生まれた。成長したらイケメンになるからだろうか。赤ちゃんの時から可愛い。

 この1年間は問題なく過ごせている。何の変哲もない、公爵家の日常。だが、不満がある。自分の意思を全て伝えられないことと、赤ちゃんの体では自分のやりたいことはほとんど何もできないこと。そのせいで退屈だった。


 不満はあるものの、平和なのは有難い。だが、脅威が消えたわけではない。


「ほう、嫡男の誕生ですか。私に教えてもくれないなんて、酷いですよ」


 この場に相応しくない声が部屋中に響いた。あまりにも唐突だった。

 ……あの男が今年も現れた。しかも、今回は弟の誕生とほぼ同時だ。格好は相変わらずで、私の時と同じだった。


 我が家の警備はどうなっているんだ? それとも、“この男”だから、わざと通しているのか?


「帰れ」


「ご冗談を。折角の客人を手土産もなしに帰すと?」


「ひゃんかひゃふひんしゃ」


 長文を話すと、滑舌の悪い1歳児の体では自分でも何を言っているのかさっぱり分からなかった。ちなみに「何が客人だ」と言ったつもりだった。


「可愛いなあ」


「だー!」


 私を触ろうとする男に全力で抵抗した。何をされるか、予想がつかないからだ。

 早く追い出せ! という気持ちも込めて必死に暴れてお父様に訴えるが、全く伝わらない。ダメだこりゃ。


「あらら。私も家族だろ?」


にゃんばきゃほきだっ(何が家族だ)!」


 先程よりもはっきりと言おうとしたが、結果は相変わらずだった。

 だが、この1歳児の体だからこそ言いたい放題できるのも利点ではある。これが本編時のサラの年齢であれば、こんなことは言えない。……伝わらないので、何の意味もないが。


「よく喋るなあ」


「帰れ」


 もう1度、男が私に触れようとした瞬間だった。身の毛もよだつような殺気が発せられた。誰のものかは、見なくても直感で分かった。お父様のものだ。


「ゔわぁーっ!」


 弟のダグラスが悲鳴にも近いような泣き声を上げた。赤ちゃんでも、殺気を感じて恐怖してしまったのだろう。……いや、赤ちゃんだからこそなのかもしれない。

 本当かどうかは知らないが、赤ちゃんは霊感が強いという話を聞いたことがある。そういう、第六感が鋭いのかもしれない。


「おうおう、怖いなあ。御子息様が泣いてしまわれたじゃないか」


「いい加減にしろ」


 お父様は無理矢理追い出そうとはしないものの、言葉で牽制した。いい加減諦めたのか、正面を向いただが扉の方へ向かう。


「じゃあね。また会いにくるよ」


 そう笑って、男は出て行った。その目線は、何故か少し遠くを見ていた。私でもダグラスでも、お父様でもない。唯一奥の方にいるのは、お母様。


「よしよし、ダグラス。ごめんなあ」


「サラはあなたの殺気にも平気そうですわ。強いのかしら?」


「お前に似たのかもな」


 いいえ。精神年齢23歳でも泣きそうなほど、滅茶苦茶怖かったです。だから、別に似てないと思います。


 そう心の中で答えて、私は2人にバレないように苦笑いした。

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