表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/5

決勝戦


  挿絵(By みてみん)


 再び、闘技場内に二人の女性が現れる。

 右方、普段着にエプロン姿ながら冴え渡る剣技を見せつけた、風見鳥 楓花。

 左方、黒いスーツ姿の鉄拳事務員、山梨 佳奈子。

 微笑む暖かい視線と無表情な冷たい視線が絡み合う。


「さてさて。この試合で終わりですね。早く帰って夕飯の準備をしたいですね」

「そうね。私も行き付けの飲み屋にでも行きたい気分よ」


 朗らかな楓花に釣られるように佳奈子も笑う。

 どちらも雰囲気の違う美女で、観客席からは様々な声が飛び交う。


 激励の声、応援の声、ただの怒声、LOVEと叫び散らすオタ芸集団。

 とにかく喧しいので、今回も観客席からの声はカットしていきます。


「佳奈子さんでしたよね。お互い頑張りましょうね」

「そうね。やるからには全力で行くわ」


 ニッコリと笑って握手を交わし、離れる。

 楓花は白ネギを手にほほえみながら。

 佳奈子はメリケンサックに指を通しながら。

 やがて、二人が振り返ったのを見計らって、試合開始の鐘が鳴らされた。


 両者共に、動かない。互いが相手の力量を知っている為、迂闊に踏み込むことが出来ないでいる。

 間合いは楓花に分があり、手数は佳奈子に分がある。

 しかし自身の間合いを維持した方が有利になる以上、どちらが先に動くのかは分かりきった事ではあった。


 トントンと軽く跳ねていた佳奈子が、突如として突進する。体を低くして両拳を顎の前に置く、ピーカブースタイルと呼ばれる構えだ。ガードを固めて接近し、己の間合いへ踏み込まんと試みる。

 しかし相手もさるもの。強みであるリーチを活かす為、左右に動き突進の的を絞らせない。

 ジワジワと距離が縮まる中、楓花がその状況を打破した。斜め上からの振り下ろし。最も回避の難しい軌道で繰り出された白ネギ。しかし、下から拳を打ち上げて相殺、更に距離を詰め、至近距離へ。

 拳の距離。メリケンサックの間合い。そこから繰り出されるフック、アッパー、ボディーブロウ。それらを組み合わせて様々な角度から撃ち込むも、華麗な白ネギ捌きで悠々と受け止められる。

 不意に、佳奈子が背後を振り向き、前に倒れる。

 何事かと警戒する楓花の左腕に、打ち上げ気味の裏拳が炸裂した。


「きゃあっ!?」


 武術大会が始まってから初の楓花の悲鳴。佳奈子はすぐさま体勢を立て直し、再度近接距離へ入り、激しいラッシュを浴びせていく。何とか白ネギで直撃を免れるも、劣勢。反撃に転じることが出来ず、次第に押されていく。


「フッ! ハッ!」


 左、右とワンツーを叩き込み、意識を上に持って行った後にボディーブロウ。ギリギリでこれを受け止めるも、あまりの威力に腕が痺れる。

 しかしまだ、楓花は戦意は失っていない。ギリギリのラインで受けながらも、チャンスを伺っている。

 それは佳奈子にも理解されているようで、彼女は無理に攻めず、じわじわと追い詰めていく。

 ラッシュ。ラッシュ。ラッシュ。

 息もつかせぬ勢いで攻め続ける佳奈子。魔力で強化されているのか、スタミナが衰える素振りも無い。

 このまま決着がつく。誰もがそう思った時だった。

 ふらりと、楓花がふらついた。

 その隙を見逃さずに巻き込むようなフックを放つ。しかし。


「かかりましたね!」


 その一撃を躱し、一閃。

 研ぎ澄まされた白ネギの攻撃が、佳奈子の胸に吸い込まれるように直撃した。


「――ッ!」


 声にならない悲鳴。そして。


「これでっ!」


 刺突。鋭い一撃が胸の中心に打ち込まれ、佳奈子の体が吹き飛ばされた。

 ふう、とため息。白ネギを下げて、背中を向ける。

 次の瞬間。

 突如として跳ね起き突撃してきた佳奈子。


 その胴体に、振り向きざまの楓花の居合抜きが吸い込まれる。


 薄皮から漏れるトロみのある汁を利用した神速の攻撃は、抵抗する間もなく佳奈子の意識を刈り取った。


「先程の試合を見てなかったら危なかったですね」


 白ネギを振り払い、穏やかな表情で呟いた。

 決着。決勝戦は風見鳥楓花の勝利で幕を閉じた。





 ほうと溜息をつく。ありがとう、サイコロの神様。佳奈子が勝ってたら私がヤバかったです。

 でも白ネギが最強って大丈夫なんですかね?

 まさかの優勝なのですが。

 まぁとりあえず、参加者の皆さんにはお戻りいただいて……


「さて。ちょっとお話(物理)しましょうか」


 ポン、と後ろから叩かれた私。

 振り返るとそこには、先程まで倒れていたはずの佳奈子の姿。


「アッー!」


 暗転。


ーーーーーーーー


以上を持ちまして、閉幕とさせて頂きます。

お読みいただいてありがとうございました。


とにかく白ネギ無双でしたね。これを真面目に書ききった私を誰か褒めてください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ちゃんと作品になってる!すげえ!やりますねえ! [一言] 私もやろうかな(不定の狂気)
[良い点] 痛み(主に頭の?)に耐えてよく頑張った! 感動した!(小並感) [気になる点] チャクラム戦の時に、クリティカル三回は反則です(大泣)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ