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呪絶  作者: 真冬猫
4/6

4話 「別解」

4話



「七海〜!七恵〜!準備できた〜?」


「「ばっちし!!」」




〜7年前〜


七海が、小学校5年生の夏休み、家族でキャンプへ行った時のこと。


「ねぇちゃん、みてみて、富士山見えるよ!

「七恵!夏休みの宿題の自由日記に富士山の絵を描こっか!」

「書く〜!あとねあとね、お昼はカレーでね、夜は焼肉なんだって!!」

「あんまり食べちゃうと、夜おしっこ何回も行かなきゃいけなくなって大変だからほどほどにね!」


キャンプ場へと向かう車の中で妹の七恵はあちこちに興味を示していた。



七恵は来るの初めてだから、とても興奮しちゃってるな。私がはじめて連れてきてもらった時も、はしゃぎ過ぎてお母さんに怒られたな。


「もう少しで着くぞ!」

「わぁ、木がいっぱい!!あっちに川もある!!」

「父ちゃんが魚、いーっぱい釣ってやるからな!!」

「貴方、来るたびにそれ言ってるじゃない。一度も釣れてないでしょ。」

「今日は分からんぞ。星座占いも3位だったし、釣具も新しくした!」


3位って。。うん。。めっちゃ微妙じゃん!!

思わずフフっと笑ってしまった。


「さぁ〜着いたぞ。俺たち以外は誰もいないようだな!車が一台もないぞ!」

「やったぁ!!ねぇトイレ限界!!トイレどこ!」


お父さんと妹が一緒にトイレに行ったので、先にお母さんと荷物を川の近くに運ぶ。


「やっぱりが山の空気は新鮮だね!」

「そうねぇ。たまには都会から離れて美味しい空気を吸うのもいいね。たまには学校のことは忘れて羽を伸ばしなさい?」

「うん、今日は七恵も居るし、私が色んなとこに連れてってあげるんだ。」

「あんまり遠くへ行くと目が届かないから気をつけてね。」

「わかってるよ。お母さん。」


それからしばらくして、テントを張り終えお母さんとお父さんがカレーを作ってくれている間に七恵と川へと向かった。


「ねぇちゃん、魚跳ねた!、私捕まえる!」

「じゃあ競争しよっか!どっちが先に捕まえられるか!靴と靴下はちゃんと脱いで川に入るんだよ!」


川の深さはギリギリ膝に浸からないくらい。

ほんの少し油断すれば一気に川の流れにバランスを持ってかれる。


お、何か流れてきた。なんだろ、あれは?

白い紙??いや布かな。


手にとってみたところ、スケッチやレポートに使うクロッキー帳であることがわかった。


そのクロッキー帳をよく見ると表のページに黒く色塗りをされたような形跡があった。川に流されてきたので、その絵?は滲んで元々何が描いてあったかはまるで分からない。


でもなんでこんなものが流れて来たんだろ。

私たち以外に誰かいるのかな。まぁここはキャンプ場だし、そのクロッキー帳を見る限りは、この自然の景色を絵にしてるんだろう。


でも駐車場には私達が乗って来た車しか無かったし。後から来た人たちが。。ってそれは考えられない。私たちが着いてからまだ30分も経ってないし、それだけの時間で絵を描いて、その絵が川に流されて来たのだから...きっと他の誰かが今日じゃない日に絵を描いてそれが時間をかけて川を流れて来たんだ!


「捕まえたっ!!ねぇちゃん捕まえたよ!あたしの勝ち!ねぇちゃんの負け!」


そういえば勝負中だったんだ。


「どれ〜?見せてみてよ!」

「じゃ〜ん!おっきいおっきいお魚!!ヌメヌメしてないよこれ!」

「じゃあバケツに入れて、お父さんとお母さんに見せてあげよっか!きっと驚くよ!」

「うんっ!」




それから、お昼のカレーを食べ、お昼寝をして、おやつの時間を終え、夕方になる前に自由日記の課題をやるために絵を描きに行くことになった。


お父さんがおすすめのスポットへ連れてってくれるらしい。私はここにキャンプに来たのは3回目だが、そこへはまだ連れて行ってもらったことがない。


どんなところだろう。目的地までもう結構歩いたはず。それにこれは道なき道とでも言える、整備されていない道を進んでく。

そういえば、さっきから気になっていることがあった。


「ねぇお父さん、途中途中枝が折れてあるんだけどなんで〜?」

「さぁーな、いたずらだろ。全く。自然を汚しおって。そんなことよりほら着いたぞ。」





そこにはかつてないほど神秘的な光景が広がっていた。そのあまりの美しさに思わず口が開いてしまった。


目の先には端から端まで富士山が広がっており、その下の湖がその富士の山を反射していた。


気づけば涙を流していた。



「うわ〜めっちゃ綺麗!!凄いすごいよ!!こんな凄いとこはじめて来たぁ!!」


妹もあまりの綺麗さにおおはしゃぎ。


「パパ〜ここ初めて来たけどなんかでみたことあるぅ!千円札に描いてあった!!」

「せいかい!ここは本栖湖だ!!」


そうだ!!たしかにどっかで見た事があるような気がしていた。千円札かぁ!!


う〜ん。でもそれもそうなんだけどこの光景他にどっかで...




「そうだ!!お父さんのパソコンのホーム画面!!」

「だいせ〜かい!その通りだ!」


パソコンのホーム画面は、若い頃のお父さんとお母さんにこの景色が写っていた。


「これは俺がお母さんにプロポーズした場所だ。そしてあのホーム画面の写真はその時撮ったものだぞ。」

「お母さんこの時、プロポーズされたあとだったの??」

「ええ、そうよ!とっても長い時間歩かされたと思えば急に、結婚してくれって言うんだもの。」


そうだったんだ。こんな綺麗な景色の前でプロポーズされたんだね。お父さんにしては、嬉しいサプライズ考えるじゃん。


私もこんな綺麗なとこでプロポーズされたいなぁ。


「それでな、その時、家族出来たら、家族のみんなでここに来て写真を撮ろって約束したんだ。」

「懐かしいわね〜!七海にはね、七恵をここまで連れてこれるようになるまでは内緒にしてたのよ。」


そうなんだ。全然知らなかった。

でもお父さんもちゃんと何年越しかの約束を果たせて良かったね。


「でもお父さん、誰か写真撮るの〜?」

「お父さんがなんも準備せずに来ると思うか?」


いや、いつも何かを見落とすから聞いたんだけどな。でもこれはお父さんの夢だったんだろうし、さすが準備完璧!


「ほら、七海!こっちこい!七恵もほら!」

「10秒後に連写で行くよ〜」


ポチッ。


「さぁ早く早く!!」





カシャカシャカシャカシャカシャカシャ





みんな、天真爛漫な笑みを浮かべた。









そしてこれがこの家族で撮る最後の写真となった。





再びキャンプ場へと戻る頃には既に夕陽も沈みかけていた。 


待ちに待ったバーベキュー!!

お肉〜♪お肉〜♪


キャンプと言ったらやっぱりこれだ!!

たくさん歩いた疲れた後のバーベキューは最高!!

完全に夕陽が沈むまでの、この絶妙な暗さがまた良いね!

家族の前だし、超肉食型であることを気にしなくて良い!!


「ほれ、どんどん食え!!」


家族みんなが勢い良く、早い者勝ちで肉を取る。それには七恵も、そしていつも小食のお母さんですら凄いペースでお肉を食べていく。


持ってきたコーラとファンタもまた焼肉に合うね。


「七恵!ほれ、おまえが釣った魚だ!食べろ食べろ!」


自分で取った魚を食べられたこと、そしてそのあまりの美味しさに七恵はもう、それはそれは幸せそうな顔してる。




ご飯を食べ終え、胃休みに皆んなでトランプをし、完全に陽が沈んだところで寝る準備を整えた。 

そして全員が寝床について、


「明日の朝早くから、俺は釣りするがお前たちは来るかぁ〜?」

「いく〜!!どうせお父さんじゃ釣れないからあたいが素手で捕まえる!」

「七海はどうするんだ?」

「そうねぇ、朝寒いし、その時次第かな!」

「お母さんはパス。お父さんの「今日も釣れなかった〜」が聞き飽きたわ」

「分かった〜それじゃあ、おやすみ〜」

「「「おやすみ〜」」」


明日の朝、釣りに行く!と張り切っていた妹だが震えているのが分かった。

私は三回目のキャンプということで、テントで寝ることも慣れているが、七恵はどうも慣れていないようである。もちろんそれは単に怖いからである。

そしてずっと私の寝衣を強く握っている。私も初めてきた時はお母さんの布団にすぐに入り込んでたっけな...


ここにきて、こうやって思い出に浸るのも楽しみの一つ。

また、4人出来たほうが楽しいなって思った。






(おねぇちゃん。おねぇちゃん。)



「おねぇちゃん!!!」

「ん〜どうした〜。」

「えっと、そのトイレ、行きたい。」


うーん。「分かったよ。」


懐中電灯を持って、妹と一緒にトイレに行くことになった。トイレまでは15分くらいと意外と時間がかかる。

どのくらい寝たのかわからないけど夜中の1時くらいかな。とても冷える。



「はぁ〜スッキリした!!」


私も正直一人でトイレに行くのはは怖いし、今していなかったらきっと夜中に目を覚ましていたと思う。このタイミングで行けてよかった。


とはいえ爆睡して起こされたこともあり頭がぼ〜っとしていたがひたすら歩いていく。

自然が作る風の音、そして風が木々を揺らす音がする。


この音が実は少し怖い。台風の時とかもヒューヒューって風が通って家が壊れるんじゃないかって少し心配になるし、何かとあの音はトラウマだな〜。





「ねぇちゃん??こんなとこ通って来たっけ?」

「え、あれ、ごめんちょっとぼーっとしてた。」


妹に問いかけられてハッと気づいたが全く気に覚えのないところに差し掛かっていた。

そして寝ぼけてしまっていたが、よく思い出せばもう30分以上は歩いていた。


「どうしようおねぇちゃん。今来た道急いで戻ろうよ。」


そして再び 


「こんなところに来てないよ。大変だよおねぇちゃん」

「大きな声で叫んでみるね。」


おかぁ〜さぁ〜〜〜ん!!!

おとぉーさぁ〜〜〜ん!!!


大声で叫んだものの返事はなかった。


「どうしよう。帰れなくなっちゃったよおねぇちゃん。。」

「とりあえず懐中電灯をいろんなに方向にこうやって照らせば気づいてくれるかもしれない、」

「おねぇちゃん、確かね、こういうのは光をつけたり消したりした方がいいんだよ。助けて〜って合図もこうやって光を使ってできるってせんせーが言ってた!」

「でもね、七恵、その光を見つけてくれる人がいなきゃその合図も伝わらないんだよ。」


この森で叫び声が届かないのに、光で合図を送っても、どうしようもならないという事実を私は冷静さを失い見落としていた。


こういう時はどうするのが正解なの。あまり叫んだら喉が枯れて、声も出せなくなっちゃうしそしたら助けも呼べないよね。


そして、冷静さを失った私が懐中電灯の電源を切るように指示し、妹と手を繋ぎ、この山の森の中を散策した。




その時だった、




茂みを踏み、慌てて走ってくる人の気配を感じた。

先入観で私たち以外誰も居ないと思っていた私はあまりの恐怖に腰を落とし、後ろに倒れるような形になって、手を着こうとした。




だがその手は地面に着くことはなかった。




そこは崖だったのだである。




2メートルほどの高さから落下し背中を打った私は気絶した。







ここから先は妹の七恵から聞いた話である。

茂みを踏む音の正体は、見知らぬ親子だったらしい。

男の子とその子のお父さん。男の子は山をたくさん這い回ったらしく手が血だらけで、お父さんも木の枝で服が擦れて血が出ていた。


そこで私の妹が、おねぇちゃんが落ちちゃったから助けてほしい。また家族で来ていて迷子であるということの趣旨を伝えた。


すると手が血だらけの男の子は、「探すの手伝うよ。ね?お父さん。」と聞き「あ、あぁ、とりあえず落ちた子の安否を確認しよう。」

といったらしい。


妹曰く、男の子が木の断面や星などを見て、方角や川までの距離を推定して、川までたどり着き川を辿って見事テントまでたどり着いたとのこと。


それからお父さんお母さんに七恵とその親子が状況を説明し、お父さんの車で車できていなかったその親子を連れ、急いで病院へと向ったらしい。




車の中で朦朧とする意識の中、自分がどのような状況にあったのか、を理解した。


「七恵ちゃん、これ、おねぇちゃんが元気になったらこの絵を見せてあげてね。」

「分かった。」


男の子は七恵に絵を渡したらしい。


「陸、それを見せてみな。...


おぉ、上手に描けてるじゃないか。きっと七海さんも元気になってくれるよ。、、、」





それから私は病院で目を覚ました。




その刹那、恐ろしいことに気づいた。




両手、両足の感覚が無い。




「七海、七海!先生、七海が目を覚ましました。七海大丈夫なの?」


「手足が動かないの。」


医師の難しい説明を理解することはできなかったが要するに背中の大事な骨を強打し、神経を傷つけたのだと。


「先生これは治るんですか?」

「治る保証はありません。ですが過去に完治した。という事例があります。それも数年かけての完治ですが。」

「娘が治るのならなんでも構いません。お願いします。」

「ですが、その手術費、通院費、もろとも合わせて4000万円ほどかかります。」

「4000万!?そんな大金うちには、ありませんどうしたら。。」


お母さんはその日一日中泣いていた。




「おい、お母さん!これをみてみろ。」

「これはなに?」

「これは病気の手術を受けられない人が作った募金サイトだ。実際にこの募金のシステムを使って何千万と募金してもらい、手術を受けることができた人がいるらしい。」

「うそ?そんなことが可能なの?」

「やってみないことには始まらないだろ。」

「ええ、そうね。信じるしかないわ」


そのサイトというのは病気の状況や、その人の心境を書き、それを見て世界各国から募金できるというシステムだった。


「ねぇ、七海?あなたが今一番したいことは何?」


「自分の足で歩きたい。そして、自分の手を使って、箸でお肉食べたい。」


それをそのまま概要のとこに引用したらしい。






驚くべきことにそれはわずか2日で集まった。


もちろんみんな大喜びをしていた。


「一体何人もの人が募金してくれたのかしら。」


泣きながらそう言っていた。

が、お父さんはこう言った。


「1人、1人だ。たった1人で4000万を提供してくれた。」


それはあまりに衝撃的であった。




募金をしてくださった方からのコメント概要が


「きっとあなたが自分を恨むことなく、また前を向いて歩いていけることを応援してます。是非、あなたの手で足で、幸せを手に入れてください。




高崎 天」




と。




それから私は手術を受け、少しずつ少しずつ順調に回復していった。


七恵、お母さん、お父さんそして手術後には私を助けてくれた親子も来てくれた。


募金をしてくれた人。そしてこうやってお見舞いに来てくれる人のおかげで人生諦めかけた私が死ぬ気で生きたいって思った。

可能性を捨てちゃダメ。可能性がある限り、きっと良いこともある。



ただ当然悲しいこともある。



とても悲しいこと。



お母さんは言った。



「お父さんが事故で亡くなった。」と



とても泣いた。2、3日は泣いたのかな。

今でも思い出すと泣いてしまう。お父さんの思い出の場所で撮った写真が最後の写真になってしまった。



それから3、4年ほど経ちお母さんは私を助けてくれた親子のお父さんと結婚した。



新しいお父さんは

古谷(ふるや) 雁英(がんえい)


その息子、つまり新しい弟にあたる子は

古谷陸(ふるや りく)


そして新しい姓の古谷をもらった。



陸とはすぐに仲良くなったし、新しいお父さんもとても優しい人だった。



そう。陸が私が気絶した時にくれた絵は画用紙に書かれた星の絵だった。

少し苦味のあるような匂いもしたが陸が元気になるようにと私にくれた絵だ。とても嬉しかった。



本当のお父さんを亡くした時は相当辛かったけも、今は今で幸せである。


高崎 天さん。


貴方にもらった命です。私は精一杯生きたいと思います。


そして貴方に会ってみたい。


そして貴方にお礼を言いたい。


もしそんな夢が叶うなら。




「はいこれ、七海、これ高崎 天さんの情報手に入れたよ。高校1年生だってさ、おねぇの一個だよ、これはもうここの高校へ行くしか無いんじゃないの?」

「え?ええ??七恵、どうしてそんなことがわかったの!?」

「ふふ〜んそこ気になっちゃった???それはねぇハッキングして特定した!!でもこれバレたら捕まっちゃうからお父さんにもお母さんにも陸にも内緒だからね!おねぇにはこの人にお礼言いたいんでしょ??」

「う、うん!えぇ驚いたなぁ。そんなことが出来たんだ。まって、私の手術費くれたの高校生だったの!?」

「え、いや、正確に言えばおねぇが小学校5年生の時に募金したからその時たかさきさんは小学6年生だよ。まぁ言ってしまえばとにかく頭の切れる天才で、この人はその歳で投資を成功して何億と稼いでる社長さんっていう人間を辞めた人みたいな肩書きだね。」

「社長さん、?凄いなぁ、なお会ってみたいよ」

「うん、おねぇならきっと会えるよ」


私は精一杯病院で勉強し、やっとのことで退院することもできた。そして高崎天さんと同じ高校に合格することが出来た。


そしてあの人にもやっと会えるかな。これはもう夢じゃないって、つい興奮してしまう。


早く家に帰ってみんなに合格を知らせたい。みんな喜んでくれるかな。七恵びっくりしちゃうかな。


「ただいま〜受かったよ〜!!!!」




そこに返事はなかった。




あれ。誰もいないのかな。おかしいなぁ。

リビングの扉を開けるとそこにはお母さんがいた。


「お母さん、受かったよ!!」

「七海、今から言うことをよく聞いてね。」

「う、うん?」





「陸と七恵が誘拐された。」


「え?」


思いもしないその発言に言葉が出なかった。


「陸と七恵がね、貴方が受かった時のためにケーキを買いに行ったの。でもしばらく帰ってこなかった。そして一つの電話が来たの。

誘拐した、と。そして警察に電話すれば命は無いって。」




その言葉を聞いて私はついに死にたいっとまで思った。



だってそうでしょ。私がいなければこの子たちはそんな目になることはなかった。


そもそも昔のキャンプだってそうだ。私がしっかりしていれば迷子になんてならなかった。


全部私のせい。だよね。


わたしはもう無意識に泣いていた。お母さんは、貴方のせいでは無いから泣かないでほしい、と言うように私を抱いた。


でもねお母さん、それじゃあわたしのせいって言ってのとおんなじだよ。




ガチャ。


単身赴任のお父さんが帰ってきて、もろともお母さんが全てを説明した。


どうにかして七恵と陸を助けたい。でもどうしたらいいのかわからないよ。


私にはわからない。


でももしかしたらあの人なら、私を救ってくれたあの人ならもしかしたらあの子たちを救えるかもしれない。


私はその可能性にかけることにした。


その後高校へ入学し、その高校ではクイズ大会があるとのこと。もしかしたら、その大会に高崎天さんは出ているのかもしれない。いや間違い無いよ。あの人なら。



案の定あの人はクイズ大会に参加していた。それも二年生ながら3年生ですら、手も足も出ない強さである。



でも私は思った。

急に私があの人に昔の4000万円貰った人です。それで妹達を救って欲しい。って言ったら訳わかんないよね。都合良すぎるよね。

でも早くあの子達を助けたいし、一か八かで。。






結局そうするには至らなかった。

ステージ上の部品が先輩の頭部を直撃し、救急搬送。


高崎さん。大丈夫かな。でもあの人は私に生きる希望をくれた人。そんなに弱い人じゃない。あの人はきっとあの舞台に戻ってくる。



その時までに、私はあの人の隣に立てるような人になる。そして妹達を見つけて欲しい、と。お願いをする。



もし先輩にクイズ大会で勝てたならちゃんと伝えたい。






「あの時はありがとう」って



 



4話 完



次回 七海の家で始まる1日は?


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