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呪絶  作者: 真冬猫
3/6

3話 「裏の逆の対偶」

3話



「なぁ、俺がご飯作ってやるから下に来いよ。」



正直、料理なんて家庭科の調理実習で触れたことがあるのと親が料理しているのを見ていたくらいだった。でも何か、今、してあげられることは無いか。そこで咄嗟に料理を振る舞うように言ってしまった。


七海はまた、無理やり笑顔を作って、

「先輩料理できるんですねぇ、出来ない癖に見栄を張ったんじゃなくてですか?」


あ、やっべ、これバレてるかもしれない。エスパーか?それとも料理できる男子の顔をしてないからか!?


「なめんな、料理の一つや二つくらいどぉってことねぇよ。」

「ほんとかなぁ?仕方ありません。そこまで言うなら食べてあげますよ!」


とりあえずチャーハン位なら作れるはず。。

まずはベーコンを包丁で切ってと。




「何ですか、その持ち方!!左手は猫の手ですよ、猫の手!!」

「いやいや、包丁イコール圧力だ、この方が切れる!、、」

「だめだめだめだめ、だめですよ、先輩に包丁持たせるといつ人を刺すかわかりませんね。」

「まて、ご飯は味が良ければ良いの!切り方変えても味は変わらないって!」


はぁ、ご飯を作るのにも一苦労だな。結局七海に作るの手伝ってもらってるし、というかもう俺は見てるだけだった。


「先輩できました!!先輩が切った残念なベーコンが入ったチャーハンの完成です!!」


その前置きは辞めて頂きたいところ。


二人とも手を合わせ


「いただきますっ!!」




「いや、うまっ!!七海料理上手だな!!」

「チャーハン位作れますよ!バカにしないでください!!まぁでも美味しいなら良かったです。」

「俺はね、ずーっと一年病院で一人でご飯食べてたからね、こうやって一緒にご飯を食べるのはサイコーだって思うよ!」

「そう言って頂けて嬉しいです!また一緒に料理作りましょうね!!私が教えますから!」

「え、いいの!やったー!」


七海の方からまた会う口実を作ってくれたのはとても嬉しい。


「先輩がもし一人暮らしでもしたら、って考えたら放っては置けませんから!それに料理できる男子はかっこいいですから!少しずつ上達しましょうね。」


面倒見がいいな。本当にしっかりしている子だ。

料理を一緒にして、一緒にご飯食べたことで七海も元気を出してくれたみたい。良かった。


俺の料理があまりに美味しくて涙が出てきてもう悩みなんてどうでも良くなるような、あの千と千◯の神隠しのようには出来なかったが、結果はOKといったところだ。



しかし根本的な解決にはなっていないことは俺が一番良くわかっていた。これでは七海が笑顔を作っていられるのも一時的なことに過ぎない。かと言ってあまりにヒントが無さすぎる。


「今夜はベッドの横に布団を敷きますので、先輩はベットで寝てくださいね。」

「え、俺泊まっていいの?お母さんとか帰って来ない??」

「さ〜?お母さん帰ってきて知らない男の人と私が同じ部屋で寝てるの見たらきっとビックリしますね!」


ニコッって笑いながらそういう七海。

いや、アウトやんこれ。どーしよ学校中に広められたらお終いだな。


病院に一年間くらい居て?ちょっと性欲溜まったから?大会で仲良くなった年下の子の家に泊まった?完全アウトだな。


「あのさ、やっぱりちょっと出会ったばかりのさ、年下の女の子の家に行きなり泊まるのはさ、、、」

「変な料理を作ろうとして勝手に帰るんですか?そんな酷いことするんですか??」


そんな酷いことなのか??俺ほとんど料理してないじゃんか。これって向かうが帰って欲しくないって言ってると解釈していいよねもう。


「しゃーないな〜泊まってくよ!!そこまでいうなら!!」

「お母さん帰ってきたら面白いですね。」




頼むから怖いことを言わないでくれ。

まぁ疲れてるし、本音は泊まって行きたかったからね〜。相手がその口実を作ってくれたわけだし、何言われても勝てるよね。




結局その日はお風呂も上がらせてもらって、

鞄に入れてあって体操着で夜を越すことにした。明日が土曜日だから学校はないし、今日はもうゆっくり寝よう。



緊張して寝れそうにないわ。今日の朝、こんな1日になると思ってもなかった。思ってたらちょっと怖いけど。今日一日さぁ、驚くこと多すぎだよ。もう本当に疲れた。



部屋の灯りを消してお互い寝る準備が整った。


「先輩、今日は泊まってくれてありがとうございますね」

「あ、うん。俺も疲れてたし、助かったよ。」





少しの沈黙をおいて、




「私、今日初めて家族以外に兄弟の話をしました。先輩がちゃんと聞いてくれて、少し元気になりました。それと共にあの子たちの事を思い出すとどうしても寂しい想いが舞い上がってしまいます。本当はただ、1人では寂しかったから先輩に泊まって欲しいってわがまま言っちゃって。」

「お互いがお互いのために。ってお前が言ったんだろ。それにお前が居なかったら俺も今頃、不安で寝られなかったと思うよ。ほんと、サンキューな七海が居てくれて良かった。」

「お互い様。良いですね。ほんと、良かった...」


七海は安心してくれたのか眠りについたようだ。






もう完全に寝たかな??




最後の会話から45分くらいが経過した。




そろそろ始めるか。


トゥルルルルル   トゥルルルルルル


「そらぁ、遅いよ。おいら、もう電話こないんじゃないかぁって思ったんだよぉ。」

「ぁぁ、すまん、ちょっと色々あってな。」


七海を起こさないよう、ノンレム睡眠、および深い眠りが始まるまで、考え事をしながら時間の経過を待ち、小さな声で大ちゃんに電話をかけた。


「でもそらぁの声が聞けて良かったぁ」

「ゲイかよおまえ。可愛いな」

「おいら、ゲイ違うぞぉ。そらぁ、今日色んなことあったろぉ、精神ズタズタで元気が無いんじゃないって心配したんよぉ〜。」

「紛らわしい言い方をするなよ!最初から、心配だったから電話出てくれて良かった!で良いだろ!」


こんな馬鹿な会話をできる数少ない友達、大ちゃん。もちろん彼は俺の大親友である。ただ彼とは大親友という関係だけではないのである。


「そらがなぁ、病院で体を治してる間になぁ、自力で海外にも手をつけることができるようになったんだぁ。」

「ほぉ〜、それでその相手は?」

「インドとシンガポールだぁ〜。俺なぁ、ここが狙い目っておもったんよぉ。」

「インド、それにシンガポールか、アジアに焦点を当てたのか。」

「これがそらに頼まれた資料だぁ。今送るんよぉ。まずはインドだぁ、見ての通りすっごい経済成長率だろぉ。中国は少し停滞してるんだぁ。それに比べてインドは順調に伸ばしてるんなぁ。この成長余地に目をつけたんだぁ。」

「うわ、すっごい資料だな、隅から隅までよく調べてあるなぁ。お前、これ1人でやったのか?」

「そうだぁ、昔からやってるそらぁにはまだ足元にも及ばないかもしれないけどなぁ、そらが帰ってくるまでに頑張って勉強したんだぁ。」

「え、やるじゃん。凄いよ大ちゃん!一年でこんなに、大ちゃんの方がプロだったりして」

「そらぁには勝てないなぁ、そらぁみたいに頭のキレる男じゃないからなぁ。」


俺と大ちゃんは投資のビジネスパートナーでもあった。俺は小学2年の頃から投資をやっている。高校で仲良くなった大ちゃんは俺が投資をやっているのを側で見ていた。それから少しずつ教えることもあり、大ちゃんは驚くべき速さでその知識や経験を吸収していった。万が一俺が手をつけられなくなったら大ちゃん俺の代わりにやってくれよな、という冗談を交わしたことがあった。だがそれは現実となり俺が入院している間は大ちゃん1人で投資をしてくれていた。


1年のうちに数万ドル単位の投資で見事、プラスに保ってくれた。大ちゃんが自らたくさんの経験値を手に入れたことだけでもう十分なんだけどな。


「大ちゃんが手に入れた分は大ちゃんが好きにしてくれて良いんだからね?何度も言うが別に俺みたいな使い方をする義務は無いからね。」

「じゃあラーメンたくさん食べようなぁ。」

「ったく夢のねぇやつだなお前は。まぁお前らしいっちゃお前らしいけどな。」

「俺が一番したいのはそらぁ、お前といつもどおりの日常が過ごしたいんだぁ。たまに放課後行くラーメンが好きなんだぁ。それだけは金じゃ買えないだろぉ。それにな俺がなぁ、一番尊敬してるそらぁのやり方自体好きなんだぁ。そらぁが俺に言ったあの言葉がカッコ良かったんだぁ」 

「だーかーらーそれは俺が昔言われたセリフだって言ってんだろ!俺の言葉じゃねーよ!......


お前はほんとにそれで良いんだな?」

「あぁ、俺もそらぁのようにカッコいいことがしたいんだぁ。」

「そうか、でもなんか嬉しいな、お前が俺のやり方を肯定してくれるだけで俺は自分のやり方に自信が持てる。まじ、ありがとな。」

「おぉ。そうだぁ、そらぁ、お前あの一個下のクイズ大会に出てた女の子に惚れるだろぉ。親友の俺には分かるんだぁ。」

「何でそうなるんだよ!今日会ったばかりの子だぞ!!今日ちょっと話したくらいで何もねーから!」

「そらぁ、嘘つくの下手になったんだなぁ。去年と同じとんでもねぇ出来事あったんにらあんな安心した表情してたんろぉ。あれはその子になんか嬉しくなるようなこと言われたんろぉ。」

「大ちゃん...お前にしてはちょっと鋭いな!うん、まぁ、正直、間違ってはないのかな。

あの時ね、俺の味方でいるよって言ってくれたんだ。とても暖かい子だった。本当良い子だったよ。」

「そっかぁ、それでそらぁはその子のこと好きなんかぁ?」

「さーね、どうだかな。」


俺自信七海が好きなのかどうかはわからない。

だけど、仮に好きだったとしても、俺には好きだって伝える資格は無い。今はまだ。


「そろそろ寝よっか。流石に俺も眠気が限界だわ。ありがとな大ちゃん。また続きの話聞かせて!」

「わかったぁ!おやすみなぁそらぁ」


こうして大ちゃんとの電話も終わったところで俺もやっと睡眠に着く。


本当に寝た。






(ドキッ、ドキッ、ドキッ)





寝れる訳ないっ。



あの人が、



ずっと会いたかった人が、



ずっと話したかった人が、



ずっとお礼を言いたかった人が隣りで寝てるんだから。



貴方はもう覚えていないかもしれない。私が貴方に助けられた事を。



そら先輩、貴方は私の命の恩人なんですよ。




私はずっと前から貴方の事を知っていたんだよ。ずっと前から







3話 完



次回 七海の過去が明らかに?

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