8話〜正昭(まさあき)と蒼龍(はるひこ)〜
日が少し傾いた頃、聡と綾乃は昔来たことのある村に着いた。小さな村だが活気ある場所で、原木やその加工品を扱っている。
「ここら辺はやっぱり変わってないな。」
「えぇ、植林も同時に行ってるからでしょうね。」
「おぉ、聡殿に綾乃殿ではないか!2年ぶりですな!」
と声をかけてきたのは、20歳くらいの青年だ。鍛冶屋と思われる大きな金槌を担ぎ、ゆっくり近づいてくるその姿はまさに護衛人のようだ。
「お久しぶりです。また身長伸びました?」
「そうなんだよ!まったく、身長じゃなくて腕力が欲しいのによォ…」
「いい事じゃないか正昭、身長が高いということはそれだけ力が加わる。経験を積めばいい鍛冶屋になれる。」
「それはそうだがよォ蒼龍。それは商人としての観察眼か?それともただのお世辞か?」
蒼龍と呼ばれた青年は、この村の原木の有用性を見いだした商家の息子だ。いずれは父親を継いで商人をやるそうだ。
「観察眼ではなく勘と言って欲しいな。聡、綾乃。2年ぶりだな。」
「蒼龍さん、今度はなにか考え事でも?クマができてますけど。」
「あぁ。管理していた家が老朽化してきてね…建て直さないといけないのだが…僕は専門外だからいい案が思い浮かばなくてね。」
「…なにか希望とかありますか?出来るだけ詳しく。」
「そうだなぁ…家と倉庫を往復しやすい、木材ではあるが保温性に優れた造り、今使っている共同料理場のような場所が家に欲しい…この3つだが何故だ?」
「建てるんですよ、2週間で。」
「に、2週間でだと!?村の全員で作業しても5ヶ月はかかる筈だ!一体どうやって!?」
「商人の蒼龍君なら、これが何かわかるよね?」
「…これは召喚魔石!?しかもかなりの純度だ!!い、一体何処でこんな物を!?」
「旅先だな。天然物でもかなりの純度だけど、向こうはほぼ危険領域だからこれが低いくらいだった。でもかなり奥深くだったからこれくらいのものしか持ってこれなかったんだが…これなら2週間で出来るだろ?」
後3つほど同じ高純度の召喚魔石を取り出した聡を見て、蒼龍と正昭は驚きを隠せなかった。無理もないだろう。危険領域は魔素濃度が非常に高く、魔素濃度に適した魔物が住み着いているのだ。最悪の場合、危険領域に行った人類に待つのは1つしかない。それを無事に帰還したどころか召喚魔石まで持ち帰ってきたのだ。熟練冒険者でもほとんど難しいことを子供がやり遂げたのだ。
「ねぇ聡?これいつ取ったもの?」
「2年半前だな、綾乃とこっちで会ってまもない頃。」
「てことは当時は?」
「もっと高純度だ。そもそも召喚魔石を作ったのは俺とパパだ。原理そのものを知ってる。これは召喚魔石の原石だ。高純度で当たり前なの。今この村で使えるのは俺と綾乃だけだと思う。」
(もうなんでもありね聡って!?)
心の中で突っ込むしかない綾乃であった。
どうも、妹紅聡です!
遅くなって申し訳ありません!構成などを考えてたらかなり時間が経ってしまいました!