金の斧と銀の斧
小野「なあ、この前なんかめっちゃいい池見つけたんだよね」
俺「めっちゃいい池ってなんだよ」
小野「とにかくいい池なんだって! なあ行こうぜ!」
俺「ああ、まあいいよ」
〜〜20分後〜〜
俺「なあ池まだ?」
小野「あとちょっとで見えてくるはず……あ! ほらあれだよ!」
俺「そこには、黄色い花畑に囲まれた綺麗な池が広がっていた。風を受けて静かに揺らぐ水面はキラキラと陽光を反射していて、明鏡止水という言葉を体現しているかのようだった」
小野「急にどうした?」
俺「いや、ちょっとナレーション」
小野「そうか。……ところで、こういう池見るとあれだよな。なんかあの、押すなよ、押すなよ、絶対に押すなよ、ってやつやりたくなるよな」
俺「いや別に」
小野「そうかお前もなるか」
俺「話聞けよ」
小野「じゃあ一回やってみようぜ」
俺「俺は、まあいいよ、と答えた。小さい頃からの腐れ縁だった小野とは何度もくだらないふざけに付き合ってあげたりしていたので、この時もほとんど抵抗はなかった」
小野「どした?」
俺「いや、ナレーション」
小野「……そうか」
俺「ってかいいの? 本当に押すよ?」
小野「いや、本当には押すなよ」
俺「ああまあ濡れたらめんどいしな」
小野「うん。だからまあ落とすフリすれはいいから。いやほんとマジで、フリでいいんだからな。本当には押すなよ?」
俺「わかってるってわかってるって。落とすフリだろ」
小野「本当にわかってるんだろうな。本当に押すなよ? いいか、押すなよ。絶対に、押すなよ?」
俺「どーん」
小野「あばばばば! お前押すなって今言っただrブクブクブクブク」
俺「え? フリって言ってたじゃん……。まあいいや。帰ろ」
ナレーター「すると、池の真ん中から大きな水柱が立ち上った。そこから、この世のものとは思えない絶世の美女が現れたのだった」
俺「いや誰?」
ナレーター「ナレーターです」
女神「ちょちょちょ、せっかく私が登場したのになに人と話してんのよ。っていうか誰!? え? さっきいなかったよね!?」
ナレーター「気にしないでください」
女神「……わかったわ。じゃあ始めるわね」
ナレーター「女神がそう言うと、先程までのふざけた空気が消えて辺り一帯神秘的な光に包まれた」
女神「気になる! すっごい気になる! ちょっと黙ってて!」
ナレーター「はい」
女神「ふぅ……。んんっ! じゃあいくわね。あなたが落としたのは、この銀の小野ですか? それとも金の小野ですか?」
俺「……」
ナレーター「……」
女神「……」
俺「あ、これ俺に言ってるの?」
女神「そうよ!」
俺「俺が落としたのは普通の小野です。なんかよくわからんふざけ急に始めたりするし、普段の声はキモいのに風邪ひいて鼻声になるといい声になる、あの足がめっちゃ臭い小野です」
女神「…………正直者ね」
俺「あーでも正直返してくれなくてもいいですよ?」
女神「正直者ね!?」
女神「そんなあなたには、金の小野と銀の小野両方あげます」
金の小野「ふっ。金ならいくらでもあるのさ」
銀の小野「ギンギンだぜぇ!!」
俺「こんな仮初めの小野は要りません! 本物の小野を返してください!」
女神「やはりそうよね。私は今、あなたたちの友情を試したのよ。じゃあ本物の小野を返します」
本物の小野「たっだいまー! いやー竜宮城いいとこだったよ!」
俺「すいません、返品ってできますか?」
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俺「っていう夢見たんだよねー」
金の小野「夢にもボクが出てくるなんて、君はなんてボクのことを好きなんだ。ならもっと友情を深めるためにこれから回らない寿司を食べに行かないかい?」
俺「いいのか? 俺今日そんなに金持ってないぞ」
金の小野「大丈夫さ! 金ならいくらでもあるからね!」
銀の小野「ギンギンだなぁ!!」