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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第7話:人格消滅!? 二人の零号の行方

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第14節:死客は囁く


「カオリ姉ちゃん!」

「お帰りなさい、カオリさん」


 そう声を掛ける者たちにきちんと応じながら、カオリが〝亡者(シェイド)〟を案内した先にあったのは。

 巨大な共同生活場……児童養護施設か老人ホームの跡地を利用したと思しき共同生活場だった。


 建物の奥にある部屋の一つに向かう際に、カオリが言っていた事によると。


 【アパッチ】という組織は、ベイルダーだけでなく、かつてのシェイド同様に組織に利用された者や、外的な被害を受けた者の集まりらしい。


 米国の手によって、望まぬ形で装殻試験者となった者。

 先程出会ったような年若い不良装殻者(ベイルダー)、そしてかつて襲来体によって住処を失った者達。


 そうした、弱者の集まりだった。


「私は現在、【アパッチ】の代表を務めている。彼らと共に」


 さほど広くもない部屋で紹介されたのは、一人の寝たきりの初老の男と青年だった。


 青年の方は特に外見的に変わったところはないが

初老の男は異様だった。


 全身、装殻状態でない部位の方が少なく、顔も半分が人ではない。

 しかもその装殻は黒で、全身に錆が浮いていた。


 どう見ても、寿命が近い。


 天命ではなく……装殻の稼働限界が。


「シェイドさん。私は宮北シンゴ。我々はあなたを歓迎する。是非、力を貸していただきたい」

『……野山キタツ。お見苦しくて申し訳……ない」


 シェイドは二人を一瞥してから、カオリに目を戻した。


「さっさと用件を喋れ」


 カオリは代表の残り二人に目を向けた後に、素直に話し始めた。


「我々には今、戦力になる人材が少ない。襲来体の出現からこっち、物資の輸送を委託していた外部の人間が幾度か襲われ、残った連中も怖じ気づいてしまってね。……移送を行う者たちの、護衛をしてほしい」

「俺のメリットは?」

「衣食住の提供。足りなければ報酬は多少なりとは出せるが、多額という訳にはいかない。後出せるのは女くらいだ」

「ほぉ」


 先程のシェイドの発言を、覚えていたのだろう。

 彼はわざと好色そうな笑みを浮かべてみせる。


「それはお前が、俺の相手をするという意味か?」

「お望みならな」


 臆す事もなく答えるカオリに、シンゴが声を上げる。


「おい、カオリ」

「他に出せるものがないんだから仕方ないだろう? このまま、子どもたちを飢えさせるのか?」


 シンゴが苦い顔で押し黙り、シェイドはカオリに向かって一歩足を踏み出すと、顎を掴み上げる。


「こいつらに弱味でも握られているのか、ただのバカなのか判断がつかんな。人を飢えさせない為に我が身を差し出す? そんな事は、愚か者のする事だ」


 シェイドが見たところ、カオリはかなり手練れの装殻者だ。

 頭の回転も早く、度胸も美貌もある。


 一人でなら、どんな風にでも生きていけるだろう。

 そうしない理由が、シェイドには本当に理解出来なかった。


『人と寄り添わねば……生きれぬ事は、愚かしい、ですかな』


 錆び付いた声で口を挟んだのは、キタツだった。


『ワシはこの通り……動くこともままならぬ身。死なずにおきたい、と思えば、人にすがる他、ありませぬ。……それでも生きたい、と。願うは愚か、ですかな?』


 キタツの物言いに、シェイドは目を細める。


「生き恥を晒すくらいなら死を選ぶ、という考え方もあるだろう?」

『そのような強さを持つ者は……一握り、ですな。ワシは貴方が愚か、というここの者が居らねば、生きる事すら、難しい。それでも、生きたいの、ですよ』


 ほっほ、と、苦しい息で笑うキタツに、不快感を覚える。


「その為に、この女が俺に抱かれても構わないか」

『胸が痛まぬ……と言えば、嘘になります、が。生き汚い、このワシと……貴方が同じ立場になった、と、して』


 キタツは、震える手で胸元の外殻を叩いた。


『貴方は、迷惑を掛けるから、と。死を選び、ますかな?』


 否。

 シェイドは瞬時にそう思い。


 思った事実に、舌打ちした。


『このオンボロの、言葉に。何か思われた、ので、あれば。……ご協力を、どうか。お願い、したい。七番目の、お方」


 シェイドは、掴んでいたカオリの顎を離して、即座にキタツを睨み付けた。


「貴様……」

「おっと、口が……滑り、ました、かな」


 また、ほっほ、とキタツは笑う。


「ワシは……失敗作、です。貴方と、違う……一度だけ、でも。如何です、かな?」


 シェイドの頭を、下らない走馬灯のように過るのは。

 かつての自分に似た少年たちと、一人の男。


 ただ一人の同胞だった、と、思っていた男の顔と、キタツがダブる。


「―――一度だけ、だ。金も女もいらん」


 それだけを口にして背を向け、部屋を後にしかけるシェイドに。


「感謝……いたします」


 投げ掛けられた声に、シェイドはまた苛立ちを覚えた。

 

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