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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第5話:連続励起!? 暴走する零号!
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第12節:三者三様

「制圧を始める」


 基本形態のまま、突撃殻弾銃を手に滑るように駆け出した参式は、こちらに向かってくるベアードの足元に牽制を撃ち込むと、肉薄した一体の胸元に拳を叩きつけた。

 吹き飛ぶベアードには目もくれず、そのまま別の一体に回し蹴りを放ち、伸ばした手で別の一体の頭を掴む。

 それぞれを力任せに引き付けてお互いにぶつけ合うと、外殻を撒き散らちて崩れ落ちる彼らの肩に飛び乗り、跳躍した。


 そこに、味方を巻き込むことすら考えていない後方支援のベアードの十字砲火が炸裂する。


「ッ……何を考えている?」


 宙でトルクスラスターを吹かして反転した参式は放物線を描きながら、殻弾機関銃を撃つ小隊の中央に飛び込み様、拳を握る。


「出力解放 Lv2ーーー《紅の乱撃(クリムゾン・バースト)》」


 超高速の四連撃が、一瞬にして小隊を地面に叩き伏せ、機能停止させた。

 だが、そこで参式にとって予想外の事態が起こる。


 十字砲火を受けた二体が突如砂となって崩れ落ちるのを目にして、参式はフルフェイスの下で目を見開いた。


襲来体(イミテイト)だと……!? まさか、こいつら全員……!?」


 参式が別の小隊の弾幕を避けながら、最初に吹き飛ばした一体に目を向けると、胸元の外殻を半壊させた状態のベアードが、何事もないかのように立ち上がっている。

 手加減した《紅の連撃》を受けた小隊も同様だった。


「偽物か……それとも、既に米国基地が……? 一体、相手に何が起こっている……!」


 参式はつぶやき、疑問を脇に避けて意識を切り替えた。


 ーーー相手が襲来体ならば、遠慮する必要はない。


 彼は自身の行動を、制圧から殲滅へと切り替えた。


※※※


「ユナを拐ったのは仕方ないかと思ってましたけどぉ……重ねてこんな卑劣なやり方をするとは、思ってませんでしたよぉ〜!」


 ブレイヴ片手にパイルに突き掛かったミカミの攻撃をいなして、パイルがマグネボールを射出しながら言い返す。


「こっちだってあいつらが何考えてんのかわかんねーんだよ! 大体俺は……!」

「問答無用ですよぉ〜! 好都合ですから、このまま貴方を倒してフリードコントローラーをいただきますぅ〜!」

「いや聞けよ!」


 そんな二人がブレイヴを打ち交わすのに、パイルの背後に回り込んだコウは、ぼそりと呟いた。


出力変更(オーダー)……雷撃形態(ショックスタイル)

変更(メイキング)


 コウの黒い外殻に、雷光が走った。

 出力供給線の色が黄色に変化した上で、両手の前腕と下脚に樽のような形状の追加武装が展開する。

 さらに頭部形状が変化して、三本角に似た雷撃操作機(ブレードコントローラー)が展開した。


 ジンとの訓練で手に入れた、新たな零号装殻の力だ。


限界機動開始(ブレイクアップ)

要請実行(オールレディ)


 超加速したコウが、背後からパイルを襲うが。


反応機動(アップライド)


 即応したパイルの装殻が、彼自身も超知覚領域へと突入させる。


/邪魔すんな!

/聞けない相談だね。


 高速音声で言葉を交わす間にも、コウは拳打を止めなかった。

 グレイヴで弾かれる度に、バチバチと電撃が散って青白い光を放つ。


/なんつー物騒な……!

/お前らを倒すために得た力だからな。


 限界機動の終了に合わせて飛び退ったコウは、そのまま両腕の樽状の電電放射機を展開し、両腕をパイルへと向けた。


出力解放(アビリティオーダー)!」

要請実行(オールレディ)


 雷撃変換されたコアエネルギーが、眩く両腕を覆い。


「《黒の放電(スタンアサルト)》」


 瞬時に相手を焼き焦がす雷撃を、パイルへと撃ち放つ。

 しかし。


磁場展開(マグネフィールド)!」


 同時にパイルが両肩のグレイヴを地面に突き立てながら宣告し、曲げられた雷撃がグレイヴを避雷針として地面に炸裂した。


「電撃は効かねーよ!」

「対応が間に合えば、だろ? それに、お前の相手をしてるのは俺一人じゃない」


 コウの言葉と同時に。


限界機動開始(ブレイク・アップ)!」

承認(レディ)


 時間差でのミカミの加速。

 次の瞬間には、ミカミの一撃がパイルの背を袈裟懸けに切り裂いていた。


「ぐ、あああ……ッ! 反発(リバウンド)ッ!」


 それでもわずかに反応して傷を浅く済ませたパイルが、磁力を操ってミカミ自分を吹き飛ばす。

 彼は、吹き飛ばされたまま転進し、コウたちから離れ始めた。


「逃すか!」


 コウは即座に追撃に入り、ミカミも姿勢を立て直して同様にパイルを追った。


※※※


 装殻したマサトは、ジンが昔見た時とはまるで違う雰囲気を放っていた。

 白色ではなく白銀色の外殻に、6対の翼。

 両腕には、長大なブレード。


 顔を覆うフルフェイスはなく、剥き出しの美しい素顔。

 天使の如き姿のマサトに、ジンは語りかける。


「それが、白銀の執行者(ベイルド・パラベラム)ってヤツかい?」


 ジンの問いかけに、表情も変えずにマサトは言った。


「似たようなものだけど、少し違う。真の零式コアを得て、捌式変異型(テータ・オーバードライブ)がアイリの体に負担を掛ける事はなくなった。……白の0式(ニヒル)。それが、今の装殻、そして俺自身の名だ」

「なるほど。じゃあ、その実力を確かめるぜ、マサト!」


 ジンが雷撃を纏って地面を蹴ると、マサトは真正面からそれを迎え撃った。

 腰から突き上げるように放ったジンの右拳を躱し、マサトが右のブレードを左肩から振り下ろすように振るう。


 そのブレードを備えた腕を左の腕でいなしたジンは、右の膝を胸元へ向けて蹴り込む。

 さらにスラスターを吹かして前進したマサトは、体を捻りながら左の刃で刺突した。


 右肘を振り下ろしてギリギリで切っ先の軌道を外したジンの腰を掠めて、刃が逸れる。


「……へぇ、やるね」

「自分より弱い奴にゃ、アイリは惚れねぇらしいからな」


 組み合ったまま軽口を叩くジンに、マサトがぴくりと眉を震わせる。


「ジン」

「何だよ?」


 膠着状態から、お互いに足を蹴り合って離れて問いかけてくるマサトに、ジンは軽く応じた。

 内心では、冷や汗を掻いている。


 少し手を合わせただけで分かる。

 マサトの強さは、明らかにジンを上回っていた。


「一つ、提案がある」

「へぇ、どんな?」


 原初の装殻者、という存在をナメていたのかも知れない。

 そう思いながらも、ジンは声音には出さないように注意していた。


 だが。


「アイリは、お前に好意を寄せている。こちらに付く気はないか?」

「……は?」


 伝えられた言葉と、その提案に。

 ジンが一瞬惚けたのを、マサトは見逃さなかった。


 音もなく突撃を始めたマサトに、ジンの反応が一瞬遅れる。


「きっ……たねぇ!」

「何がだ? 俺は、事実を伝えただけだ」


 最初の横薙ぎの一撃を、なんとか腕を交差させて防ぐが。


「ーーー〈鋸顎翔(プロフビット)〉」


 小さく呟いたマサトが、逆のブレードを振るうと同時に、背部のフェザースラスターが一対、マサトの体を離れてジンの背後に回り込んだ。


「ア……出力解放(アビリティオーダー)ッ! 《黄の雷撃(サンダーボルテクス)〉ッ!」

「無駄だよ」


 ジンの体から放出された雷撃が全方位に破壊の威力を撒き散らすが、マサトの体の表層で遮断される。

 そのまま、背後のフェザースラスターとマサトの刃に、深々と外殻を切り裂かれた。


「っぐ、ぅうううう……ッ!」

「エネルギーの還元吸収……0式コアを得た事で手に入れた力だ。放出系のエネルギー攻撃は、俺には効かない」


 痛みに呻くジンに対してマサトは宙に浮いて距離を取ると、さらに容赦無く追撃を仕掛けて来た。


「この攻撃、全て避けきれるか? ーーー《鋸顎裂翔(プロスタッグビット)


 全てのフェザースラスターがマサトの体を離れ、光刃となって迫って来る。

 全方位から襲い来る必殺の威力を秘めた攻撃に。


 ジンは、なす術なく呑まれた。

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