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黒の零号〜最強の装殻者〜  作者: 凡仙狼のpeco
第4話:覚醒! 零号装殻者!
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第3節:あり得ざる事態

「よう、ミツキ」

「お(かん)!?」


 会議から数日。

 帰宅したミツキを待ち構えていたのは、コウとケイカとヤヨイ、そしてもう一人だった。

 畳に座って軽く手を振るヤヨイに、ミツキが顔を引きつらせた。


「何でこんなとトコおんねや!? 仕事はどないしてん!?」

「ご挨拶だねぇ。あんたに心配されんでも、ちゃんと休みは貰ったよ」

「さよか……いやちゃうって! 花立さんまで居るし、状況がまるで理解出来やんねんけど!」

「別に、娘と息子に会いに来るのにわざわざ理由は必要ないでしょうが」

「は? 娘って誰や?」

「ケイカよ。決まってるでしょ?」

「は?」

「ヤヨイさん……私、ここに来るまでミツキくんに会ったことないよ」

「あ、そっか。あんた、ミツキ生まれてから遠慮してうちに来なかったもんね。別に良かったのに」

「だって、ミツキくんに何て説明したら分かんなかったし」

「は……話がまるで分からん……」

「ねぇ、ミツキ」

「何や、コウ」


 混乱陥るミツキに、コウは助け舟を出した。


 聞いたところによると、ケイカは昔、大阪隕石の襲来体事件の時に花立に助けられ、ヤヨイに保護されたらしい。

 その後、肆号(ハイブリット)として襲来体母体(マザー)襲撃作戦に参加したのだそうだ。


「で、その時の肆号装殻者だったのが、ヤヨイさんなんだってさ」

「おかんが!?」

「そう。肆号の正式装殻者でね。その最後の事件でしくじって、足がこうなったんだ」


 と、ぽんぽんと義足である自分の右足を叩いた。

 ケイカがそれを見て苦しそうな顔をしている。


 おそらく、何かがあったのだろう。

 ヤヨイさんはまるで気にしていないのに、ケイカは自分を責めているように見えた。


「その後、ミツキが生まれたのを機にケイカさんは独り立ちしたんだって」

「もう、衝撃的過ぎて俺は開いた口が塞がらんで……ちゅー事は、あれか? おかんて《黒の装殻(シェルベイル)》やったん?」

「元、だけどね。あん時は大変だったわ」

「あれを、大変の一言で済ませるな」


 花立がため息まじりに言う。

 コウはあまり関わりがないが、彼が司法局の捜査員である事は元から知っている。

 そしてケイカの古馴染みである事はついさっき、知ったところだ。


「ケイカは泣き喚くしカズキは煩いし、こっちは襲来体母体をようやく潰した所だったのに、お前が目覚めるまで二人を宥める羽目になったんだぞ」

「ごめんなさい……」

「あはは、災難だったよねぇ、あんたも」


 しょぼくれるケイカに、笑い飛ばすヤヨイ。


「目覚めていきなり、ぐちゃぐちゃの顔をしたカズキにプロポーズされた時にはどーしよーかと思ったけどね」

「フってやりゃ良かったんだ。散々騒いだあげくに、誰からも礼の一言もなかった。俺は未だに忘れてないからな」

「て、花立さん! それ、おとんが振られてたら俺、生まれてないですやん!」

「気にするな」

「気にしますて!」


 そろそろいいかな、と思い、コウは二人のやり取りに口を挟んだ。


「ケイカさん。ミツキに伝えることがあるんじゃないんですか?」

「あ、うん」


 こほん、と咳払いしてから、ケイカは改めてミツキに切り出した。


「あの、ミツキくんの処分について、なんだけど」


 おずおずと言うケイカに、ミツキの表情が引き締まる。


「決まったんすか」

「うん……」


 ケイカが、ミツキに処分保留の件と保留の条件を伝えると、ミツキは神妙な顔をしてうなずいた。


「分かりました。迷惑掛けて、すんません」

「良いよ。……私も気持ちは分かるから」

「だからと言って勝手が許されると思うなよ」


 ケイカと花立が口々に言うと、ヤヨイが混ぜ返した。


「あんたが言っても説得力がないよ、トウガ」

「ッ、お前がいるとやりにくいな……」


 顔を歪める花立は冷徹そうな第一印象に比べて、随分と感情豊かに見える。

 仲の良さそうなやり取りに、この場では完全に部外者のコウは、少し寂しくなった。


「で、トウガ。あんたまでここに来た理由はなんだい? そろそろ教えてくれても良いだろう?」


 ヤヨイの言葉に、花立はうなずいた。


「ああ。コウとミツキも聞け。お前らにも少しは関わりのある話だからな」


 言われて場にいる全員が聞く態勢になると、花立はおもむろに切り出した。


「マサトが、誘拐された」


 コウは、思わず固まった。

 その後我に返って周りを見るとミツキも同じような感じで、ケイカとヤヨイは厳しく表情を引き締めている。


「マサトって、黒の一号が保護した実験施設の子よね?」

「そうだ。犯人からの一方的な通告があり、俺が交渉役に指名された。場所は、四国高知エリア。俺の移動を確認でき次第、再度連絡を入れる、と」

「トウガ。あんた、マサトってコはそこそこ使える装殻者だって言ってなかった?」

「戦闘能力だけなら、そこそこどころの騒ぎじゃない。俺は最初、誘拐の話を聞いて耳を疑ったくらいだ」


 正戸アイリ。


 フラスコルシティで起こった事件の折、黒の一号以外に最初にコウが出会った《黒の装殻》の関係者であり。

 コウが黒の一号に再会するきっかけを作ってくれた少女だ。


「間違いのない情報なんですか?」

「信じられへん……」


 コウとミツキもそれぞれに反応する。

 特にミツキはマサトの戦闘を直接見たことがあるらしく、コウ以上に信じていない様子だ。

 しかし、花立は首を縦に振った。


「装殻者に襲われて失神させられ、車で消える様子が監視カメラで確認できた。車は盗難車両で、二人組の正体も分かっていない」


 花立は、難しい顔をしている。


「アイリには優秀な用心棒も居たんだが、奴も音沙汰がない。何らかの方法で装殻を展開出来ないようにされている可能性もある」

「犯人からの連絡待ちしかないって事ですか」


 コウの言葉に、花立はうなずいた。

 

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