残酷な現実
忠は、もう全てが、どうでもよかった。
ラストチャンスさえ、忠には微笑んでくれなかった。
忠の家は、両親、祖父と忠の四人家族だった。
両親は、忠が幼い頃から仲が悪かった。
双方とも、不倫や浮気のようなことをしている・・・中学生くらいになった忠には、それが分かっていた。
友達が、父や母の自慢話をするときが、あった。
忠は、その度に、自分の両親を嫌悪した。どちらも人間的に、救いようがない、そして、俺は、絶対に、あんなふうにならない・・いつか、自分の力で自立してやる・・!そう思って努力してきた。そんな忠を、祖父だけが温かく見守り続けた。
忠は、世の中を見て、自立していくには、「ステータス」が必要だと思った。
つまるところ、その一歩は「イイ大学」に入ることだと思った。
自分は、そんなに頭の良い人間では、ないことは分かっていた。分かっていたからこそ、ガムシャラに頑張った。
そして、何とか、自分が入学できる、最もレベルの高い大学を受験できた。
大学の試験日は、緊張で震えが止まらなかった。しかし、忠は、ベストを尽くした。
そして、その大学の合格発表が、今日だった。
「不合格」
その現実が、忠に突きつけられた。
(終わりだ、終わった・・これ以上の力は俺には出せない・・)
自分の事だから、忠は、分かっていた。もう何も、やる気が起こらなかった。自力で、自分の未来を開く、嫌悪する両親から離れることは、もう不可能に感じたのだ。
それは、できないことを忠は、悟ったのだ。
忠は、泣いた。不合格の通知を握りしめ一人、自分の部屋で泣いていた。
その時、忠の部屋をノックする者がいた。
祖父だ。
祖父だった。
泣いている忠に、祖父は優しく言った。
「忠、本当に頑張ったな。残念な結果じゃが、忠の頑張りを、じいちゃん、ずっと見てたぞ!忠、胸を張れ!何を泣いとる!じいちゃんと何か美味しいものでも食べに行こう!!」
そう言う祖父に忠は、抱きついて、更に大きな声で泣く。
「でも、じいちゃん、俺には、ここから抜け出せないよ・・どうやっても・・」
そう言って、祖父に嗚咽を漏らす。
祖父は、優しく忠を、抱き締めて言った。
「忠、こんなことを話しても、何の慰めにもならないと思うが鷲の話を聞いてくれるか?」
「なに、おじいちゃん?」
まだ涙が止まらない忠に祖父は、話始めた。