新章
『勇者学園』を卒業し、新大陸『コルドニア』を目指すマオ一向。
「ケビン!」
パーティの仲間、アルムの声にケビンは振り向く。
砂の中から現れたのは、サンドウルフ。牙を剥き、爪を立て、『勇者』であるケビンを急襲する。
「ーっ!」
一瞬だった。振り向きざま、ケビンは風の魔法、ウィンドスライスを放つ。空気が圧縮され、サンドウルフの眼前で小爆発が起きる。
「ギ……ギャアッ!」
サンドウルフは爆風で目が眩み、その瞬間、わずかにたじろぐ。
「今です!」
魔法使い、リリアは杖を振りかざし、バインドでサンドウルフを拘束する。
「行くぞアルム!」
「ああ!」
「気をつけてください!サンドウルフは集団で襲ってくるはずです!」
リリアの声と同時に、サンドウルフが次々と現れる。
「はっ!さすがに一筋縄ではいかねえか!」
アルムは次の魔法を整える。
マフの砂漠ー。
今日も新大陸『コルドニア』へと向かう旅人の前に立ちはだかる。
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「マオ様!」
パーティの仲間、レアの声にマオは振り向く。
砂の中から現れたのは、サンドウルフ。牙を剥き、爪を立て、『魔王』であるマオを急襲する。
「ーっ!」
一瞬だった。振り向きざま、マオは風の魔法、ウィンドスライスを放つ。空気が圧縮され、サンドウルフの眼前で小爆発が起き……サンドウルフの首が吹き飛んだ。
「う……うわあああっ!」
マオは絶叫した。
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「……さすがにこれはないですよ」
首のない肉塊となったサンドウルフの無残な姿を見て、レアは呟いた。
「ちっ、違っ……いきなり飛び出したから!」
俺は弁解する。
「どうなっちゃったんですかー?」
ミリアが無邪気に尋ねる。
宙にフワフワ浮いた少女、ミリアは、見た目こそ6、7歳くらいの女の子に見えるが、実は生後5か月の『フレアドラゴン』の子供だ。フレアドラゴンという生き物は人にも姿を変えることが出来、特に幼少期は人間の姿でいることがほとんどだという。というか、俺はミリアのドラゴン姿を見たことがない。
そんな生まれて間もないミリアは今、目の前にいる魔物がどうなってしまったのか分からない状態なのだろう。致し方ない。
「首から上の破壊によるショックと、それによる脳からの命令の遮断による、いわゆる心肺停止状態ですね。いや……既に死亡した状態です」
「解説が詳細すぎる!」
俺はレアをたしなめた。
淡々と自分の見解を述べたのは、『ネクロマンサー』のレア。長身黒髪ロング、知能明晰、冷静沈着な彼女は、何千何万という膨大な読書量に裏打ちされた深い知識を語るが、時々空気を読まないことが……ってワザとかこれ。
「ああ、こんなことをして、ミリアの道徳観に悪影響を及ぼさないか心配だよ」
『魔王』である俺は頭を抱える。
「いや……ホントにここまでする気は無かったんだ……マジで」
「咄嗟の反射とはいえ、恐ろしい威力ですね」
「ああ。マジで自分の力が恐ろしいよ」
「『自分の力が恐ろしい』ですか。さすがです、マオ様今のも『魔王語録』に入れておきますね」
「『魔王語録』って何!?魔王っぽい語録ってこと!?」
旅は続いていく。
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『勇者学園』を卒業した俺達は、大陸『コルドニア』に向けて歩みを進めているところだ。
コルドニアは、つい五十年前に『伝説の勇者』一行が到達するまで、サイネシア側の人間はほとんど誰も足を踏み入れた事が無い未開の大陸である。
新大陸には様々な伝承がある。
強力な魔物の巣窟であったり、ごく少数ながら特殊な能力を持つ人間達が暮らす集落であったり、希少な魔物であったり、現代では考えられない文明の遺だったり。人類にとって色々と「未知」なものが多い。
勇者学園を卒業した勇者たちの半数近くがそうしたコルドニアを目的地にするのは、そういった未知の分野の開拓、研究が目的であることが多い。
そして俺達も例外ではない。
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「しかし熱いな」
「あついです……」
俺とミリアは呟いた。
「日中帯は我慢してください。『グランドワーム』は日差しに弱いですから……」
岩場に腰を掛けながらレアは、言った。
「にしても、『サンドウルフ』は一向に襲ってきませんね。サンドウルフは群れをなして生活する生き物と聞いていたのですが……」
一瞬沈黙し、考えた後。
「まあ、仲間があのような凄惨な目にあっていたら、そうなりますよね」
「あ、うん。なんかごめんな。俺のせいだよな」
何故か俺が反省するはめになった。
「それはさておき、今の現在地はどのくらいだろう」
「今だいたい、半分くらいの地点に来ています。砂漠を超えるまで、あと三日も掛からないでしょう」
「三日……」
その数値に俺達は絶句した。
マフの砂漠は日中帯は50℃、夜間帯は-20℃と気温の変化が非常に激しい。
俺、レア、ミリアはそれぞれ熱さ寒さに耐性があるからまだいいが、普通の人間だったらこの気温差だけで参ってしまうだろう。その上、移動手段も無ければ横断できるわけがない。
「マジかよ……」
俺はなんかこう、疲れた。
そして誰からともなく、横断は夜まで待とう、という流れになったのだった。




