表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むしろ周り全員勇者で俺だけ魔王な件。  作者: ナル
第一章 勇者学園
21/25

第二十話 @ 好きにすれば

……………………………………………………………………………………………………………………… 

「どうして私を助けた?」


 ふらついた足で起き上がり、私はそう尋ねた。

 男は一瞬質問の意味を考えたような顔をして、答えた。


「何故って……そこに倒れてたからだ」

「そこに倒れてたから?」

「ああ。そこに倒れてたから、今出来る事を出来る範囲でやった訳だ。別にお年寄りの荷物を持つのと何も変わらない」

「と、年寄り……」


 年寄りという言葉に違和感を覚え、思わずそう言った。


「ああ。だから別に気にする事もない。助かった命、好きに生きたらいいんじゃないかと思うよ」

「では命を絶っても?」


 彼の顔を見る。

 その男は顔色を全く変えなかったが、頭の中で多くの事を考えているのが分かった。

 恐らくは、その言葉がどのくらい本気か。どの言葉を選べば死なずに済むか。

 男はセリフを考えた末、吐き出した。


「いや、死んだら許さん」

「何故ですか?」

「大体君は、人の力を借りて生きているのに、勝手に死ぬのはルール違反だと思わんか?

 俺だけじゃない。いろんな人間が、君のために一生懸命やっていてくれたはずだ。

 それで勝手に死ぬだと?勘違いも甚だしいわ」


 男は急に語り出した。全く。面白い。

 この男、「勝手にしろ」と言って、もし万が一私が本当に死んだら、の確率を取った。

 意外と単純なのかもしれない。 


「とにかく、君は好きに生きるといい。これは絶対だ。もし生きる希望が見つからないのなら、俺のために生きろ。以上」


 言いたい事を言って、男はさっさとその場を去ろうとする。


「――――今のは『契約』ではなく、『譲渡』ですね」


 男は立ち止まり、振り返った。


「何だ、知ってたのか」

「ええ。人並みには」


 私は冷静に男を見つめた。


「魔力の譲渡によって対象の命を繋ぐなんて聞いた事がありません。

 そのような事が出来るのは『闇の属性』を持つ者だけだと、古い本で読んだ事があります。

 ですが、その属性を持つ者ならば『契約』によって相手に能力をコピーすることが出来るとも聞きます。

 あなたがそうしなかったのは何故ですか?『譲渡』ではなく『契約』を使えば、あなたは力を失わずに済んだのでは?」


 男は黙って聞いていた。 


「いやだってお前、『契約』したら、俺の言うことを聞かなきゃなんねーぞ?」

「は?……い、いえ、あなた側のメリットが……」

「目の前の人を助けるのに、そんな制約を付ける気にはならねーよ」


 男はまた振り返った。もはや問答する気も無く、さっさと帰るつもりだ。


「魔法の一つくらい、別にいいだろ。結局強ければいいんだしよ。

 別に俺は『魔王』になる気なんて、無いからな」

「じゃあ、一体何なのですか?」

「俺か?俺はまあ……」


 男は少し照れながら言った。


「え……と。勇者、とか?」


……………………………………………………………………………………………………………………… 


「マオ様。あなたは魔王じゃありませんよ」


 マオをグランドワームの背に乗せ、私たちは砂漠を移動する。

 他の勇者共の死体は後で学園で『リバイブ』を掛けなければいけないから、もう一体のワームの体内に、メアの死体と一緒に詰め、私たちの後を追わせた。

 その際、意識を失ったマオに『ヒール』の魔法を掛け続ける。本来なら、これですべての状態異常は回復するはずだ。

 全ての魔法を受け付けないマオの体も、魔力が弱まっているせいかヒールが少し効いて、毒の進行が遅くなっている。だが状態異常が回復する兆しは一向に見えない。もちろん、リペアも効かない。


「お願い。早くして、グランドワーム……」


 砂漠を猛スピードで進むグランドワームを急かす。

 全速力の効果か、学園がうっすら見える場所までやってきた。

 あと何分……。

 それまでマオを持たせなければならない。


「お願い……」


 私は、誰ともつかないものに願った。


………………………………………………………………………………………………………………………


「うおわっ!」

「きゃあああっ!」


 パリン、と派手に窓を破り、私たちは魔王部部室のある三階に辿り着いた。

 突然の破裂音と、グランドワームの到着に気付いた生徒の悲鳴が、至る所から上がる。だが、それに構っている暇は無かった。


「れあ、さん……?」


 丁度魔王部にいたミリアが見つかる。私はマオの体をグランドワームから下ろし、叫んだ。


「お願いミリア!保健室から先生を呼んできて!ついでに解毒剤があれば持ってきて!すぐに!!」

「は、はいっ!」


 ミリアは、ヒュウっと風を切り、部室を出た。


「マオ様……」


 本棚を漁る。以前からかき集めていた様々な種類の回復薬が中から現れた。

 ビンを割り、片っ端からマオに使っていく。

 回復反応の、鮮やかな青色が部室を彩る。


『ビジュアル』


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 マオ HP3 MP381 毒状態


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


「何で……!?」


 続けて、魔法。さっきも使ったが、回復系の魔法を片っ端から使っていく。

 リペア。ヒール。ケア。デトル。

 魔法の反応色が次々と光る。だが一向に、マオのHPは回復しなかった。


「何で……?どうして……!?」


 私は半狂乱になりながら、次々と魔法を唱える。

 だが、一向に状況が変わらなかった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 マオ HP2 MP381 毒状態


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


「なん……で……?」


 私は泣き腫らし、マオの体に顔を埋めた。


 どうして、私の願いはいつも叶わない?

 どうして大切な人ばかりが傷ついていく?

 私の何が悪かった……?


 一瞬後、考える。

 ミリアはどうなった?保健室に助けを呼びに行った。だが一向に帰って来ない。

 というかそもそも、ミリアが助けを呼んだところで、誰かがマオを助けてくれるのだろうか?

 悪評判が後を絶たないマオだ。噂は噂を、それも悪い方へと呼び、連鎖していく。噂を真偽を精査しない者どもなら、マオの名前が出ただけで救助を拒否するだろう。教員がそうでないとは限らない。

 誰が信用できる……?

 

 私は顔を上げた。それと同じタイミングで、ミリアが入ってきた。


「ミリア!」

「はあ、はあ……せんせい、みつかりませんでした……」

「ミリア聞いて!マオ様が……今、大変なの!毒が回って……回復が……」

「かいふく、ですか?」

「そう!何でもいいから、試して!じゃないと……」


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 マオ HP1 MP381 毒状態


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 


 ドクン。

 心臓が跳ねた。

 あと1ポイント。あと1ポイントですべてが終わる。私の目の前で。

 リペアは?ヒールは?ケアは?デトルは?リバイブは?

 やった。すべて。

 それでも、回復しないと。もしHPが0になったら、またリバイブ?果たして効くだろうか?これだけの魔法が全て無効化されたのに?

 私は…………。


 不意に、私の背後に気配がした。

 ミリアが相変わらず純朴な目で、そこに浮いていた。


「……ミリア?」

「かいふく、ですね?」


 ミリアは、大きく息を吸い込み、そして吐いた。


「ふーーーーーーーっ」


 白く、輝く息が、マオの体を包み込んだ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――


 マオ HP42 MP381 毒状態


―――――――――――――――――――――――――――――――――― 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ