第十九話 @ 砂漠の風
「迂闊でした」
大型のワーム種。『グランドワーム』がヒロの体を咥えている。
ヒロにはすでに意識が無いようだ。マスターがパチンと指を鳴らすと、ヒロの体は無造作にボトリと落ちる。
「あの程度のトラップなど……さっさと破壊してしまえばよかった。
その考えが即座に浮かばなかった事と、ご主人様の能力を過信し、一瞬でも目を離してしまった事を今、激しく後悔しています」
グランドワームのマスター……レアはその黒髪をなびかせ、砂漠に佇んでいた。
「一……二……三……四人ですか」
冷静に人数を数え、状況を把握する。
「ならば、こちらは九人ですね」
レアがパチン、と指を鳴らす。
すると、砂漠の中からグランドワームが次々と現れる。
その数六体。先ほどのを合わせて七体。俺達を合わせて九人の体制だ。
「レア……」
「遅れてしまって申し訳ありません。この後はご主人様は休んでいただいて結構です。なので正確には八人体制ですね」
……そういう事じゃなくてだな。
「あの洞窟を壊して来たのか?」
「ええ。あの洞窟には何の意味もありません。……さっさと破壊すればよかった」
七匹のグランドワームは、砂漠から天高くそびえ立つように並び、俺達を見下ろしている。
勇者たち――――ベイル、レイン、ディア、あと復活したクラウドなどは、その様子を震えるようにして見ていた。
「グ……グランドワーム……だと?」
ベイルが呟いた。
「ワーム種の最上級種じゃないか……。そいつを手懐けた……?ネクロマンスの力か……?」
ぶつぶつ呟くベイル。
それには全く目もくれず、レアは淡々と呟いた。
「まずは回復役を潰しておく必要がありますね」
パチン、とレアが指を鳴らす。と、瞬間、ディアの元に二匹のグランドワームが飛びかかる。
「ぎゃあああああっ……!」
ビジュアルを使わなくとも結果は一目瞭然だった。
飛び散る血飛沫、肉片。
ディアがどうなっているのか、確認する気もおきない。
レアが黒髪をなびかせ、他の勇者たちに向き直る。
「言ったはずですね。
――――――私は、マオ様を侮辱した者を許さない。マオ様を攻撃した者に対しては相応の報いを受けさせ、その上で死を見せます」
レアが手を翳す。すると砂漠の土がせり上がり、線のようにベイルやレインの元へと続いていく。
その光景に、ベイル達は小さく悲鳴を上げる。
「――――殺す。あえて一言で言うならば」
瞬間、土の中からグランドワームが飛び出し、ベイル達に飛びかかった。断末魔の叫び声は「ぎゃっ」と短く、あとはワームの鋏が肉を削り取る音だけが砂漠に響き渡った。
その様子を見届けるでもなく、レアは俺の元に駆け寄った。
無言でビジュアルの魔法をかける。
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マオ HP7 MP381 毒状態
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「――――ご主人様!」
レアが悲痛の叫びをあげた。
「何故毒状態に……。闇の魔力が弱まったから?」
「どうやら純粋な魔法じゃなくて、弓に魔力を纏わせてたみてーだな……」
「そんな……」
レアが言ったのを最後に、俺の意識が遠のく。
「ご主人様!」
「……すまん」
体の力が抜ける。
俺の背中にレアが手を回し、支えたのが分かった。
だが俺の体は踏ん張りきれず、砂漠へと伏していった。
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マオ HP5 MP381 毒状態
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