第十三話 @幕間っていうかなんていうか
「あんなはずじゃなかったのに……」
俺は、頭を抱えた。
「ドンマイですよ。マオ様」
「ドンマイですー」
ミリアはふわふわ飛びながら、俺の元へと寄ってくる。多分、ドンマイの意味は分かっていない。あと、またなんかレアが微妙に不機嫌になる。
「もうちょっと……、もうちょっと楽しく戦いたいもんだ」
「もうちょっと戦いを楽しみたい、と」
「魔王っぽく変換すんな!……何でいつも凄惨な感じになるのかなって事だよ」
「しかし、私はあれで間違ってなかったと思いますよ」
「そうか……」
「まあ、それで観客が納得するかは分かりませんけど」
「そこなんだよなー」
抱きついてくるミリアの頭を片手で撫でながら、そう言った。
ミリアは猫みたいに目を細めながら喉を鳴らして抱きついていている。かわいい奴め。うん、レアの方は見ない。
「でもこれでまあ、何の問題もなく卒業、だな!」
「ええ。そうですね」
「冬を越え、後は春を待つのみ、か」
「そうですね。旅の準備期間も入れて、ギリギリといったところでしょうかね」
「確かになー」
ここ最近、頭を悩ませていた問題が解消され、俺はホッと胸を撫で下ろす。これでスタート地点に立てない問題は解消される。そして。
「ありがとうな、レア」
「えっ?」
「俺が無事卒業出来るのは、君のおかげだよ。ありがとう」
「い、いや、私は、別に……そ、そんな……」
当然です、くらいに返ってくるかと思いきや、珍しくレアはしどろもどろになった。
「そして、旅に出掛けて、コンプリート、ってか」
「ふふ」
まだ見ぬ冒険に胸が膨らむ。何の心配事もない。心はとても晴れやかだ。
「くえすと、って、なにをやるんですか?」
「「え?」」
ミリアの純粋な質問に俺とレアな声を合わせた。
「確かに……。そういえば、目的という目的は聞いていませんね。何かお考えなんですか?」
「ふぇっ?」
「その様子だと、何もないようですね。予想していましたが……」
ちょっとイラっとしながらレアは答えた。
「ちなみに、ユンケルさんはコルドニア大陸のスラスト地方の探索、イルファさんはサイネシアで寺院の建設、クソチビアホ毛はイシュヴァリア地方の奪還、らしいですね」
「クソチビアホ毛ってユイの事か。アホ毛で分かったよ。にしても、みんな相当な場所に行くんだな」
「ええ。私はご主人様の能力であれば、どこでも行ける気がしますけどね。スラスト地方の探索などはあまりお勧めしませんが……」
「うーん」
ここに来て頭を悩ませる問題だ。何も考えてなかった。
「ミリアはどこに行きたい?」
苦し紛れに、ミリアに振ってみる。
「わたしはどこでもいいです!」
ミリアは元気よく答えた。
「まだまだしらないばしょがあって、ふしぎなまものがいて、ふしぎなくだものがあって!
このせかいをたんけんできるなら、ミリアはどこでもいいです!」
目をキラキラさせながら、ミリアはそう答えた。
思ってもみなかった、明朗快活な回答。
俺とレアはふっと微笑んだ。
「私も同じですね」
「そうかもな」
生まれて間もないミリアの回答。きっとこの世の全てが楽しみで仕方がないのだろう。
そして、本来はきっと、そうあるべきなのだ。
「じゃあ俺は……」
俺が答えを出そうとしたその時だった。
一羽。
白い小鳥が部屋に入ってきた。足には一通、丸まった手紙が括りつけられている。
生徒会などがよく伝聞に使う鳥だ。その鳥が、レアの肩に留まる。レアがそっと手紙を取ると、鳥はまたいずこへと飛び立って行った。
手紙を読んで、レアの表情がわずかに歪む。
「マオ様。まだ穏便に卒業、という訳にはいかないようです」
「?」
そして、いつもの冷静な口調で言った。
「マフの洞窟の探検依頼が来ています。クエストは行方不明者の捜索。依頼者はレイオス・アルセーヌ。行方不明者はメア・エルタール」
俺は自分の耳を疑った。




