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いらぬ考察と根本的問題

恋愛も自己中

作者: 末吉

自己中第二弾

 俺は自己中である。いや、俺「も」自己中であるの方が正しいか。

 世の中全部が自己中だからな。後者の文の方が正しいだろう。

 今回は何を言いたいのかというと、『恋愛』だろうか。

 恋愛なんて究極的に言えば『対象者に好意を抱いた自分に好意を抱いてもらうために感じる感情及びその行為』。こんな自己中の究極形態にはまるというのが我々人間である。

 まぁこれがなければ子孫なんて残るわけもなく、男女なんて性別もないわけだが。

 いや、決めつけは良くない。ひょっとすると男女なんて性別がなくとも子孫を残せる可能性があったのかもしれない。が、結果的にその『対象』が必要なので双方の同意なしじゃできる訳もないか。一人でできたらもはや人間じゃない。

 というよりなんでこんなことを考えているのかというと、現状がまさにそんな状態だからだ。

『好きです』

 とは言われていないが、わざわざ放課後に押しかけてくるのだからそんな感情を抱いているのだろうと勘繰ってしまう。

 事の起こりは放課後……ではなく、とある休日。

 近道して買い物へ行ったらその道がナンパしている奴らに邪魔されたので警察を呼ぶというウソの芝居をして退散させた後に残された少女を無視してその道を通ったのが始まり……だと思う。顔なんて他人に興味がない俺がおぼえてるわけがない。

 そもそもその行為に善意があるわけがない。近道して時間を短縮させたかったから面倒な芝居を打ったのだ。近道したいと思わなかったら普通に素通りしていたぞ。

 でその数日後、つまり今日な訳だが、放課後になったので帰ろうと荷物を手早く片付けて教室を出て階段を降りたところ、その階段の窓から校門に人だかりができているのがちらっと見えたために足を止めて観察。

 あまりよく見えなかったのでどういう状況か知らないが、きっとどこかしらの有名な奴がこの学校の誰かに会いに来たのだろう、自分の都合で。

 そう結論付けて階段を下りて昇降口で靴を履きかえて外に出てそのまま校門を突破。何事もなく帰宅できると思ったのだが、ここで計算違いが発生した。

 俺の存在が空気だったために普通に流れに逆らわずに突破できたのは良かったのだが、途中誰かの視線を俺は受けたのだ。

 別に視線を感じるのは構わないのだが、その視線が今まで受けてきたのとは違かった。

 なんていうか、見つけたという感じ。探していたという感じ。

 突破した後その違和感に首を傾げながら歩いていたら、今のような状態――隣に嬉しそうな表情を浮かべながら歩いている少女がいる状態――になっていた。

 この状態で嬉しそうな表情を浮かべてるってことは、間違いなく恋愛感情を抱いてるんだろうなと思いながら、どうしてなのかを考える。

 真っ先に考えられるとしたら吊り橋効果だろうか。あれが一番効果抜群で中毒性が高かったりする。のだが、俺はそんな危機的状態だったとは心底思わないので却下したい……なんて考えたところで今回は少女視点で考えなくてはいけないということに気付いて一応ありとしよう。

 次に考えられるとしたら……普段いいことしない奴がしたらやたらかっこいい的な感じだろうか。確かに俺は普段自分に関わること以外の事なんてほとんどやらないが、イコール誰もいない状態で自分で関わること、もしくは人がいても自分が関わることに普通にやっているのでこれも却下なんて少女と会ったのがこれで二度目のため出来――るな。

 よし、二番目の案は却下だな。

「あの、すいません」

 現実に引き戻されてしまう。何とも可愛らしい声を聴いた。顔をちらっと見たが、あっていると言えばあっているのだろうか? 知らん。

 返事をする理由が俺にはなかったので無言で歩いていると、その少女は苦もせずついてきながら「あの時はありがとうございました。私、記憶力には自信がありますから」と俺の否定を潰すような発言をしてきた。

 今更だが、この少女はうちの学校に通っている生徒じゃない。一駅ほど離れているはずのお嬢様学校だ。こうして歩き始める少し前に制服で分かった。

 なんであんな場所に引きずり込まれてナンパされていたのかわからないが別に気にする必要のない事案だったために俺は聞かず、返事もしなかった。

 沈黙が支配し、少女は何やら挙動不審になっているのを尻目に、俺は考える。

 二つ目の案は却下。ならば他にないだろうか。

 三つ目に考えられるとしたら一目惚れ、少女のどストライクなタイプだった場合。こればっかりは他者の感性なので知る由もないが、もしそうだったらそのタイプを捨ててしまえと言いたいけど結局それをする理由がないのでその案も考えてみる。

 一つ目の案は……置いといて、先に三番目の案を考えてみよう。

 この場合、タイプが考え方が三通りに分けられる。

 一つは身体的特徴。もう一つは性格的特徴。

 どちらにしても俺はひどい奴だと思うのだが、これはあくまで俺の主観であって少女の主観ではないので、分かる訳がない。最悪美化されている可能性もあるので、まるっきり現実と正反対の俺になっているのも否めない。あ、これ一つ目の案も同じこと言える。

 だから、タイプを二通りに分けたところで『俺に身体的に、性格的に似たような奴』を宛がえばこの少女がそちらに食いついていくことになると考えたいが、それが不可能な場合は三つ目のタイプになる。

 それはつまり、『俺という個人』に対し一目惚れした場合である。

 どこか似ていても結局のところ個人の枠を出ないので、根本から派生したものなどが少しバラバラになるのは周知の事実。その差異が個人を作るのもまた。

 よってこの少女は『俺という個人を作る差異』に対し一目ぼれをしたという可能性になったりするのだろう。

 さて一つ目について考え「あの!」

 邪魔されたので息を吐いて会話をする。そうしないと早く終わらない。

「なんだ」

「ひゃうぅ……はっ。あ、あのですね、お、お名前をお聞かせ願いませんでしょうか?」

「……楠木律也」

「楠木律也様ですか! 素晴らしいお名前ですね!! 私の名前は霧中野緋紗子と申します!」

 そう言って勢いよくお辞儀をする少女。スカートの後ろがひらりと舞ったがどうでもいい。

 これで会話を終了することにし、俺は考える。

 一つ目の考えでいくと『白馬の王子様的な扱い』になるんだな、俺は。以上。

 …………終わってしまった。だからなんだということにつなげようと思ったのに、納得してしまった自分がいるために終了。

 これの結論ってどうすればいいのだろうかと内心悩んでいると、少女はなぜか頬を染めながら申し訳なさそうに聞いてきた。

「そ、それでなんですけど、連絡先を、交換してくださいませんか? また、お会いしたいので!」

 いきなりすぎるので無理。そもそも俺の携帯電話に家族以外のアドレスを入れる必要がないので。

「待って下さ~~~い!」


 結論:恋愛は究極的な自己中なので、それに至る理由は本人以外知りえない。また、本人も知りえない

理解してくれた人いますかね……

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