拒絶
八話です!!楽しんでいって下さい!
優樹菜が魔物を倒した頃、上では淳也とフードの人物が剣を打ち合わせていた。ただし、劣勢なのはフードの人物である。
「なぜだ!?なぜ貫けない!」
「貫けないに決まってる。それはまだ完全に顕現してないからな。」
淳也は内心驚きを隠せないでいたが、その理由を答えた。
「ヤドリギの断空剣は本来はレイピアじゃなく、一本の槍だ。つまり、お前は完全にそいつを扱えていないんだよ。」
では、なぜミスティルテインはヤドリギの断空・剣と言うのか。
ガキィィィンッ!!
「お前はまだ、事象形成までしかいってない。だから、俺の剣でも受けきれる。」
フードの下の顔が見えそうな位、近くで鍔迫り合っていた。
「ヤドリギの断空剣の本来の性能は、そんなもんじゃねぇ!!」
そうして淳也はフードの人物を吹き飛ばした。
「くっ!!」
フードの人物は淳也から距離をとった。
「なら、出直すとしましょう。」
その声はさっきと違い、とても落ち着いた声音だった。
「逃がすと思うか?」
「いえですから、あちらにいるお嬢さんに人質になって貰います。」
あっち?
そして、淳也が見た先には、ソフトクリームを食べながら歩いている、ポニーテールの少女が映った。
「ッ!!」
あの阿呆!!っていうか、人払いの結界は!?
振り向いた時には、すでにフードの人物が空間にその少女を引き込む所であった。
☆☆☆
時は少し遡る。その少女、後藤有紗は淳也を待つのを諦め、コンビニでソフトクリームを買い、ブチブチ言いながら歩いていた。
「もうっ、何であいつ来ないのよ!!」
大変ご立腹である。
「そりゃあ、いきなりアイアンクローしたのは悪いと思ってるけど……」
肩を落とした後、ガァーっと叫び声を上げた。だが周りに誰もいない事に気づいた。
「変だなぁ、この辺こんなに活気なかったっけ。っていうか、人いなくない?」
そう呟いた時だった。
「失礼しますよ、お嬢さん。」
目の前の空間が現れ、そこからフードの人物が手を伸ばした。その時、少女は目の前に黒い落雷が墜ちたのかと思うほどの勢いで、彼女と一緒の制服を着た少年が飛び込んで、彼女の前に割り込んだのを見た。
その顔は、忘れる筈のない少年の顔だった。
☆☆☆
「この馬鹿、周りに人が居ないこと位気付けよ!!」
第一声がこれだったため、有紗も緊張するはずもなく、
「うるさいわね!!あんた達じゃないんだから気付く筈ないじゃない!!」
ギャース、ギャースやっている中、フードの人物は、
「………」
無言だった。しかし、いつまでも無言でいるわけにもいかず、
「黒王殿、その魔術は一体。」
それに気づいた淳也は、
「これは俺のオリジナルだから、真似は出来ないよ。っていうかお前あっち行ってろ。」
それを聞いて、何なのよもうっ、と言いながら、団子屋の赤い椅子まで行って座った。
「んじゃ、俺もこれ見せたし、お前の固有魔術見せてくれない?」
「嫌だと言ったら?」
「消えて貰う。まぁ見せて貰っても消すけど。」
フードの人物はヤドリギの断空剣を構えた。しかし、構えた途端、目の前に淳也が現れ、
「冥土のみやげに俺の固有魔術の一端を見せてやる。」
フードの人物の胸に手を置いた。
「なにを」
する、と言う前に、
「俺はお前の存在を『拒絶』する。」
フードの人物の存在は、欠片も残らず砕け散った。
「ふぅ~、疲れた。」
そして、淳也は不機嫌な彼女の所に赴くのだった。
結局フードの人物、名前すら出てきませんでしたね。