魔術師と少女
前回にはなかったバトル要素を入れたので楽しんでもらえたら幸いです。
放課後。俺は一人で暗くなった裏道を通り帰宅途中だった。
「ゲームセンターのどこが、あいつらは面白いんだ?」
ゲームセンターなど、ただ金を使うだけのところだろ。
「グオォォォォォォォ!!」
「!!」
忌々しいゲームセンターのことを考えていた時、頭が割れるかと思うほどの爆音が、辺り一面に響いた。
「ッッッ、おいおい、最近多くねぇか?」
ババババーン!ババババーン!
その時、彼の携帯が鳴った。
「『運命』ってことは、あいつか…何だよ?」
『いきなり何だよ、は無いだろう。』
「用が無いなら切るぞ。」
『まてまて、要件は今から伝える。今そちらの近くで門が開いたようだ。』
門とは、異世界から来る怪物達が通って来る次元の穴である。
『君が一番近い様だから現場に急行してくれ。』
「部下に任せればいいんじゃないか?」
『そうしたいのは、山々なのだが、しかし何故かは分からんが、嫌な予感がするのだ。』
「お前の予感よく当たるからやめてほしいんだけどな…」
『そんなことを言うな。では、頼めるか?』
「わかったよ。一般人の被害がでる前にかたをつける。」
『ああ、頼んだぞ。』
ブツッ…ツーツーツー
「嫌な予感、ねぇ。」
その時には彼は黒いローブを着ていた。
☆☆☆
時は少し遡る。
公園の横を一人の少女が歩いていた。今にも、鼻歌を歌いそうなほど上機嫌である。
「今日は晩御飯何を作ろうかな。」
ガサガサッ
「?」
少女は草むらに歩いて行った。
「猫かな。どれどれ出ておい」
で、とは続かなかった。少女の目の前にいたのは、半分爛れた犬の顔、体は人間、両腕は熊、両脚は牛、というグロテスクな生き物がいた。その生き物は、グチャグチャと、かつて人間だった肉塊を食べていた。
「あ…ああ……」
その生き物が少女に気づき砲哮した。
「グオォォォォォォォ!!」
その生き物は次第にゆっくりと少女に近づいて来る。少女はというと、あまりの恐怖に腰が抜けて逃げれずにいた。
「い、いや!こないで!」
「グルオォ」
その生き物が少女に襲いかかった。
「キャーッ」
少女はその時反射的に目を閉じ、死を覚悟した。自分は目の前の怪物にそこに転がっている肉塊の様にされるんだ、と。しかし、痛みも何も襲ってこなかった。そして目の前の状況に困惑した。
「ふぅ、間に合った。」
目の前には黒いローブを着た、少女と同じくらいの年頃の少年が立っていた。
☆☆☆
少年は心の中で舌打ちをした。
まさか、同じ学校の生徒だとはな。顔を見せるのはマズいな。
「あんた、そんな所に座ってないでさっさと逃げろ。」
「こ、腰が抜けて立てないの。」
「チッ…こいつ守りながら戦うのかよ。」
初対面でこいつって…!!しかも顔も見せないし!!
少女は憤慨した。
「さて、どうするか。」
「グルルルゥ」
少年によって吹っ飛ばされた怪物が出て来た時、怪物の右半身は、まるで炎で燃やされたかのごとくジュウジュウと煙を上げていた。
「ま、塵も残らず燃やせばいいか。」
ボゥ…っと少年の手が燃えた。そして少年は怪物に向かって駆けた。
「頼むから叫ばないでくれよ!!」
少女が怪物の方を向いた時には、怪物はボロボロと崩れていく所だった。
「今日見たことは誰にも話すなよ。」
少年はそれだけ言って去っていった。
少女は口を半開きにして固まっていた。
「………ハッ。腰が抜けてるって言ったんだから手伝っていきなさいよーッ」
でも、チラッとだけど顔は見えたしいっか。
少女は心の中で、ほくそ笑んだ。
「あの男、見てなさいよ。」
実に愉快な少女であった。
前回に引き続き読んでくださった方ありがとうございますm(_ _)m
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