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れん2nd  作者: 萌葱
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6

 側に寄ってくる女の子の柔らかな肌ざわりと甘い香り、潤んだような大きな瞳に艶やかな唇…それらに囲まれているのは心地よくて。

 たまにそんな俺を睨みつける固そうなのも居るけれど、経験上そんな子は、俺が少し弱みを見せるとふとその目を和らげて…気がつくと、俺のそばで肩を抱かれていたりする。

 まぁ、そんなタイプはあまり好みではないし、一人に縛られる気のない俺にはもっと軽い子の方が都合が良くて、滅多に手を出すことはないのだけれど…。

 いずれにせよ俺の生活を埋めてくれる女の子は俺の必需品で、ましてや向こうから良いよって体を寄せてくるのであらば、こちらには断る理由もないし? そうやって俺のピアスのコレクションは増える一方で…。


 けれど最近気になるのは、そんな風に俺に寄ってくるわけでもない、かと言って固い訳でもない、妙な女…。

 すらりと背が高くて、今時珍しい染めても居ないショートの黒髪に眼鏡姿の一見優等生風。

 けれど、身持ちの悪い俺に呆れつつも、自分とは関係ないと割り切って、違う世界の出来事だねなどと言いつつ苦笑しながら俺の話を聞いている様子は、よくある固いばかりの女の子とは違って余裕がある分隙がない。

 地味な出立ちながらもショートの黒髪は艶やかで、眼鏡の奥の瞳は意外と涼しげなことにも最近気がついた…。

 好きな本の影響なのか、時々江戸時代の住人かと思うような言葉もとび出すけれど、それはそれで面白いと感じている自分が居て。

 基本的にあまり表情が豊かなタイプでは無いけれど、本を返す時に借りた本の感想なんて言った時には、眼鏡の奥の瞳が面白そうに輝いているのが見えて、少しあれっ? て思う。


 甘くて軽い女の子は好きだけれど、あんまり簡単に手元に落ちてくるから、最近は少し物足りないって思う時もあって。

 自分の外見にははっきり言って自信はあるし、俺に近寄る子はうっとりと俺の顔を見つめている事が多い事からも、彼女たちが俺の内面なんかには余り興味は無いことは判っている。

 別に俺だって、じゃぁ彼女たちに何を求めているかと言えば、そんな褒められた部分じゃ無いことを考えれば、別に彼女たちを責める気は無い。

 だけど、デートの待ち合わせでの時間つぶしに先日図書室で借りた小説を読んでいたらイメージと違うなんて文句を言われて…。

 結構面白いんだよって本の話をしたら、顔に似合わないことはしないでなんて…。

 拗ねている女の子も結構可愛らしくて嫌いじゃ無いけれど、好きな本読むのも駄目ってそれはちょっとどうなの? って思ってしまった。


 だから、軽い気持ちで榎木が恋をしたらどんな風になるのかなって思った。

 けれど笑顔を見せればうさんくさいと眉をひそめるし、スキンシップはと本を渡す指先に触れてみてもくすぐったいと笑われて…、少し嫉妬でもすれば良いと、噂のもとになっているピアスを見せても、少し凝り過ぎだね、髪引っ掛けるよなどクール極まりない。

 じゃぁ、そう言うことに興味ないのかといえば、今日は妙にうっとりと俺とは違う真面目そうな先輩の方なんかを眺めてて、俺が来たのにも気がつきもしない


 なんだか頭に来たから、いつも本を借りに行く木曜日に図書室に行かなかったら、次の日の、俺の教室まで榎木が来た。

 そんなにすぐに効果があるとも思ってなかった俺は、すこし浮かれて

「なに?寂しかった? 俺行かないと」

そう声をかけたら

「なんだ、元気そうだね、風邪でも引いたなら仕方ないと思ったけど、本の貸出期限は一週間だよ? 月曜日までは待つけど、返しておいてね」

 そう言って、すたすたと教室に戻っていく後ろ姿に、何だか、甘い期待をした俺が馬鹿みたいだと思った。

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