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れん2nd  作者: 萌葱
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瀬名先輩に言われて、演技の上での気持ちのセーブを止めたら、最上先輩からのダメ出しは殆どなくなった。

 伝えることはできないと諦めていた言葉を、例え演技の上だけでも本人の前で晒すのは少しドキドキするけれど、妙な開放感もあって……。

 演技の上でも俺の言葉に揺れてみせる彼女を思わず抱きしめてしまいたいと思うのは、ユートリアスなのか俺なのか…、けれど、多分両方同じなんだと思う。

 振り向いてはくれない存在に心を奪われて、必死に傍にいようとするユートリアスは、今の俺とまるで一緒。

 だから、俺はユートリアスになってミレディである榎木に俺の本当の想いを伝える、

好きだ、俺を見て、思いを返してくれないのならせめて側にいることを許して欲しい。


「愛して…、います、気持ちに答えろとは言いません、ですが、私の気持ちを否定するのはやめて下さい」

 ミレディのすぐ側で彼女を見つめながら繰り返し愛を告げるユートリアス

「だが…私は…、そなたとは住む世界が違う…」

 最初は聞く耳も持たず撥ね付けるだけだったミレディは徐々にユートリアスの想いに反応を見せるようになっていて…、否定する言葉には力が無く、背けた瞳は切なげで

「それが何だというのです? 私は、こうして貴方の側に居られればそれだけで……、昨夜はどうしても此処に来ることが出来なくて、貴方に会いたくて…死んでしまうかと思いました」

「死ぬなどと……! 軽々しく言うものでは無い、人は脆く儚い……」

 背けた瞳をまた俺に戻して、苦しげにそう言って俺を見るミレディ。

 演技経験など皆無だと言っていた榎木は、しかし日が進むにつれて、憑依でもしたかのようにミレディになっていった。

 俺の言葉に反応して動揺を見せて、其れがまさに人に恋に落ちようとする精霊そのままの風情だと最上先輩に絶賛されて居て。


 ストーリーは別れで終わるから、彼らみたいになりたいとは思わないけれど、気持ちを素直に好きな相手に注げるユートリアスは俺には少しだけ羨ましい。

 俺の好きな彼女は、母親に対して心の傷を持ち、恋愛に怯えて居るから…、彼女に恋をしないと思われているからこそ、俺には心を許してくれていると知って、君を好きだなんて言えなくなってしまったから……。


 凛として芯が強く見えるけれど、たまに見せる弱さや脆さが俺には心配で、しっかりしているように見える分その硬質さが、衝撃でポキリと折れてしまったらと思うと……怖くて。

 伝えることもできないけれど、だからって、傍を離れることなんてもっと出来なくて。


 ここ数日は一緒にいる時間が増えて、抑えていた気持ちはユートリアスに乗せて開放はしているのに、気持ちは膨らむ一方で、……この舞台が終わったら、また押し込めるしか無いと思うと自分でも少し怖くなる。


 ずっと側にいたら、いつか気持ちを伝えることは出来るのかな?

 時が彼女の心を癒したら、俺の心を受け止められるようになるのかな?

 そして俺は、いつまで待てるだろう?

 ……本当は今でも自分の理性が揺らぐ時があるのに。


 演技の上だって一生懸命自分に言い聞かせているのに、演出も終盤になって来ているから、ミレディの態度も少しずつ俺が好きだって見せてくれるようになっていて、戸惑いがちに微笑む笑顔に、俺の言葉に恥ずかしそうに目を伏せる様子にドキドキして……。


 何だか生まれて初めてのような自分の余裕のなさがとことん情けない。

 女の子の肌にも髪にも今まで散々触れてきたし、甘い言葉を囁きも囁かれもしてきたのに……。

 ミレディは精霊である自分と、人であるユートリアスの境界として決して俺には触れようとはしないし、毎夜現れるユートリアスを受け入れるようになっても自分に触れることは許していない。

 ……だから、俺たちの関わりは視線と言葉、其れだけなのに。


 不慣れながらも柔らかく、僅かに熱を帯びたように見える瞳で俺を見つめて

「おかしな、人間だな、だが、嫌いでは……ない」

 なんて、演技上の台詞を言われるだけで胸は高鳴って

「来るなと言っても来るのだな……、なら待ってる……」

 本当に薄く、僅かに笑顔と判るような表情で俺を見るのに、触れたくてたまらず伸ばす指先は、触れる直前に振り切るように握りしめて堪えているけれど……。

 それが演技では無いことを、自分が一番自覚していた。


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