表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
れん2nd  作者: 萌葱
26/30

26

「良いね、榎木さん、精霊の冷ややかさがよく出ている、柏木君もセリフも間も完璧なのは素人にしては素晴らしいけど、もう少し熱が欲しい」

「熱ですか?」

「うん、もっと、こう得たいという気持ちと言うか…」

 そんな話をしていると、コンコンとノックの音がして瀬名先輩が入って来た

「すまない榎木、ちょっとお前じゃないと分からそうな資料の依頼なんだ、今行けないか?」

 すると、最上先輩は、俺に演技指導をするから行って来て良いよと言い、今までも飲み物などを差し入れてくれに足を運んでくれている先輩が今日も練習を見ていくと言うのに、榎木は一人部屋を出て行った。


「お前…、何でそんなに抑えて演技しているんだ?」

 俺の演技に今ひとつ納得行かない様子の最上先輩が、脚本見なおすか…などと呟いて、漸く休憩と言ってくれて解放され座り込んだ俺の隣で、瀬名先輩が俺にだけ聞こえるような声で囁いた。

「抑えてますか…?」

最上先輩は部屋の隅で自分の世界に没頭しているように見えるけれど、話題が話題だけに声を潜めてそう返すと

「抑えてるだろう…お前が普通にあいつを見ている視線のほうが熱があるくらいじゃないか?」

 ズバリと言われて、やはりこの先輩はごまかせないと思う。

「抑えるしか無いじゃないですか、前に話しましたよね?  彼女は恋愛対象じゃない俺だからこそ今の距離にいる、彼女の前で愛を乞うなんて、気持ちセーブしながらでないと彼女に気持ちがバレちゃいそうで…」


 そう、彼女に恋する男の役で、最後にフリだけとはいえキスシーンがあると聞き、他の奴にやらせるのは我慢出来ないとオファーを受けたのはいいけれど、ただでさえ登場人数が少ない場で、榎木の名前は秘密だからと極少人数で繰り返される稽古は最上先輩とあとは俺達だけということも多くて…。

 二人きりであんなセリフばかり繰り返して、間近で榎木を見ているとつい本気の好きな気持ちをセリフに乗せそうになって、気持ちにブレーキをかけるのを繰り返していた。


「馬鹿だな、ユートリアスの気持ちがミレディにバレて何が困るんだ、確かにお前演技力はあるけど、あのままブレーキかけ続けてると役者交代食らうぞ? あいつ、もの足りないとなったら直前でも脚本変えて役者首にしたりするんだ…」

 まぁ、確かにいくらイメージに合ったからといって、殆ど素人二人だけのシーンを何分も起用しても何も言われないだけ有って、最上先輩の自分のイメージに対するこだわりと部における影響力はもの凄い。

 其れだけに、彼の期待に応えきれなかった場合はそういうこともあるだろうと思えて…


「だいたい、あの榎木にお前の気持ちかユートリアスの気持ちかなんて区別が付く器用さがあると思うか?」

 重ねてそんな事を言われて、ぐっと黙りこむ…。

 確かに、考えてみれば自分の気持を隠すことに必死で、そんな必要がない状況だということは頭になかった。

 それに、今更交代などされて、他の奴に彼女の相手役をさせられるなど冗談ではなくて

「せいぜい頑張ってくれ、お前が交代となると俺もちょっと困るんだ」

「何でですか?」

「最初、最上は俺にやらそうとしたんだユートリアス、そもそもやる気はないが…、あんなセリフ愛海以外に言う気は無い」

「……工藤先輩には言うんですか」

 きっぱりと惚気けてみせる瀬名先輩にため息をつきつつ言うと

「ま、だから、ミレディ紹介するとき隣も見てみろといったのは丁度良かったな」

「…そんな事言ったんですか?」

「なんだ? 文句あるのか? 嫌だろ、お前榎木が他の男とあんな役するの」

 王子独特の片頬で笑うその表情に、本当にこの人は工藤先輩以外には無敵だと思いつつ

「ま、そうですけどね…」

 小さくそう答えた。


「私を見てください、じっと、そうすればきっと私の心は分かるはず、私の瞳の中にあなたしか映っていないように、私の心の中もミレディ、貴方しか居ない…」

白樺の木と言う設定の教室の柱に手をかけながら、こちらを見るミレディの瞳を覗き込み、自分を信じてくれと言い募るシーン。

冷静な顔でこちらを見る榎木にいつも抑えている気持ち注ぎこむような気持ちでセリフに乗せてみる

 すると、ミレディはふとユートリアスを見つめ少し驚いた顔をすると、森の奥へと掛けていく

「良いよ! 柏木君、その呼吸、前とはぜんぜん違う、感覚がつかめたのかな?

今日はこれで十分だ、来週からまた頼む」

 そう言われて、走り去ったはずの榎木も教室の奥から俺達の方に歩いて来た

「帰ろっか」

「うん」


 最近は陽が落ちるのが早くなって、演技の練習で遅くなる日も多いからと一緒に帰るようになっていた。

 大丈夫だよという彼女に、どうせ終わる時間も一緒だし送って行くよと言ってから、演技指導の日と委員会のある日、つまり殆どの日は送って行っている。

 元々最寄り駅も一緒だし、そこからは方向は逆になるけれど、10分ほどの道のりを彼女の家まで送って、そこから駅まで戻って自分の家まで向かう。

 最初の頃は駅で毎日ここで大丈夫というのを、まあまあと宥めて送ることを続けていたら、ここ数日は何も言わずに一緒に歩いて、家の前でありがとうというようになった。

 少しずつ一緒に居る時間が増えて、其れが当たり前みたいになっていく。

 その様子がなんだか、ちょっとミレディみたいだって思った。


れん2nd、マイナスから始まっただけあって、れんよりも長いです。

にもかかわらず、此処までお付き合い頂きまして本当に有り難うございます。


連日upは難しいかもしれないなどと言いながら、読んで下さっている方が居ると言う事が本当に嬉しくて気がつけば此処まで来ていました。


ただ、ごめんなさい、これから三日程家に居られる時間が余り取れない為、一時停止したいと思って居ます。

月曜日の夜中…、正確には火曜日の0時頃から再度続きのupを予定しておりますので、どうぞよろしくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=677019025&size=88
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ