1
うちの高校には図書室が二つ有る。
第一は開校当時からの古い図書室で、地味ながらも深く広く網羅された資料や、私の子供時代に発行されたような一昔前の小説が数多く所蔵されている。
第二は明るい新しい建物で、最近の話題の小説や参考書、雑誌などが並んでいて、生徒の人気は断然第二のほうが高い。
けれど、私はこの建物もラインナップも古くさく、一部には理事長の趣味でしか無いなどと言われているこの場所が気に入っており、入学してすぐに図書委員を立候補してからは専ら第一での作業を希望していた。
「きゃっ…」
第一図書室の当番日に、少し遅れてしまい慌てて扉を開くと、目の前で背の高い茶髪の男子生徒と影に隠れて良く見えなかったけれど、栗色のふわりとした髪の毛の生徒が抱き合って居るのに出くわした。
私が入ってくると女性徒は驚いて、そう小さな悲鳴を上げると図書室から逃げてしまい、逃げられた男子生徒は困ったように私を見る
「あーあ…、君のせいで逃げられちゃったよ」
「邪魔して悪かったけれど、図書室は本を読むところで逢引きするところじゃないんだ、ここを聖域のように思っている人も居るから、女子を連れ込むならここはやめて欲しい」
そう答えたら
「この人の殆ど来ない場所が?」
なんて、鼻で笑うから
「そう、ここが彼女と逢い引きをするのに適したロマンチックな場所に見えるのもいれば、大事な本が並んだ聖域に見えるという人もいる、別におかしく無いと思うけど?」
少しの皮肉を込めてそう言うと
「へんな女…」
つまらなそうに呟いて図書室を出ていった。
それから数日後…。
強い雨の日の放課後、私は急いで階段を下りながら図書室に向かって居て、二階の踊り場を折り返した途端
「や、やだっ…」
後ろ姿に見える背格好は先日の図書室と同じ、けれど、その彼に抱きしめられていた不幸なことに私と目が合って驚いて逃げた女子は、髪型からして多分違う子で…
今まで抱き合ってた相手に逃げられた男子生徒は、私の方を振り向いて眉をしかめると
「またお前かよ…」
ため息を付いた。
「悪いね、邪魔するつもりじゃなかったんだけど」
「つもりじゃなくても、邪魔なんだよ」
そんなことを言われても、どうすることも出来ないから
「あのね、プライベートルームの扉開けたとかならともかく、校内でこんな事してたら仕方ないと思わない?」
面倒くさくなってそう言ったら
「可愛くねぇ…」
そう言って階段を降りていった
「それ…柏木君じゃないのかなぁ?」
「っていうか、あのレプリカ王子知らないって、どれだけよ」
早苗と有紀ちゃんとお弁当を食べながら、私が度々遭遇してしまった逢引シーンの話をした
「レプリカ王子?」
「うん、うちの学校の二年に瀬名先輩ってもう王子が居るからね、素行もあって柏木君はレプリカ王子って呼ばれてる、何せ彼、外見だけは完璧! だからね…茶髪に長身、目元に泣きぼくろ、耳のピアスが確認できれば間違い無いと思う」
やけに細かく情報をくれるのは新聞部の早苗
「成程、確かに二度はそれぞれ違う子だったなぁ…」
「興味ないのは判るけど、手は早いし、見境ないって言うから、そんな人気のないところで遭遇したら逃げてね」
有紀ちゃん迄そう言われて
「散々邪魔すんなって言われているし、私には来ないよ」
そう言って私は笑った
此処まで読んで下さって有り難うございます。
少し短いのと、まだ導入なので、次かその次くらいの話は早めに上げたいと思って居ます。
その後は、整理が必要そうなのでペースは少し落とす予定で居ます。
頑張ってupしていきますのでよろしくお願い致します。