†第8話《胎動》†
†第8話《胎動》†
「なぁ…ありゃあどう見ても万引きだよな…。」
と物陰に隠れたアルフが尋ねる。
あの日
解散したスレイブのメンバーの中から、またアルフと戦いたいと志願した者が後を絶たなく、そのほとんどがガーディアンに入団した。
その為人数が爆発的に増えたガーディアンにはシフトが作られ、より厳格にパトロール出来るようになっていた。
この日はアルフ、リヴィア、ヴァンスの3人がたまたま同じシフトに入って警備を行っていて。
パトロールでたまたま通り掛かった雑貨店で、店主が若い女性と話しているのをいいことに、店先でバックの中に次々と商品を入れているおじさんを見つけたのだ。
「まぁそうだろうな…。」
と同意するヴァンス。
「いくら店主が女の人に気がいってるからってやり過ぎね…。」
と呆れを見せるリヴィア。
「お!動くぞ!!」
とアルフは物陰から急に飛び出した。
すると当然おじさんは走って逃げる。
「おいアルフ!あいつ逃げるぞ!」
とヴァンスが言うと、
「いやいや逃がしてんだよ。少しくらい手応えないとつまんねーじゃん!」
とアルフは胸をはる!
「たかが万引きのおじさんに手応え期待すんな!それに少し速いだけの奴ならお前すぐ追いついちゃうだろ。」
と呆れるヴァンス。
そんなやりとりをしている間に万引きのおじさんはどんどん見えなくなっていく。
「さぁて、行くか!」
と言うと同時に目にも留まらぬ速さで走り去るアルフ。
(お前の足にゃ誰も勝てねーよ…)
とヴァンスは心の中で思う。
アルフは、万引きおじさんとの距離を自慢の脚力でみるみる縮めて行く。
そして、おじさんの肩に手が届いた瞬間、横を通り掛かった眼鏡の男。
その男に見覚えのあるアルフはその男を凝視する、その時間がスローのように感じる。
眼鏡の男はアルフに向かい。
「おや、お久しぶりですね、アルフレットさん。」
と囁いた。
急に肩を掴まれた、万引きおじさんは体勢を崩し、その場に倒れ込む。
アルフは咄嗟に受け身をとり体勢を立て直す。
そして眼鏡の男の方を見るが、そこにはもう誰もいなかった。
(あいつは…。)
と拳を握りしめるアルフ。
「おーい、アルフ大丈夫か!」
と店主と話していた女性を連れているヴァンス達が追いついた。
ヴァンスの呼び掛けに応じず一点を見つめ続けるアルフ。
「アルフ?」
とリヴィアが心配そうに聞く。
その声でアルフはふと我に帰った。
「ん?どうした?」
と状況のつかめないアルフ。
「どうしたはお前だ、何かあったのか?」
とヴァンスは心配そうにアルフの見ていた場所を見る。
「いや…別に…。」
とアルフは言葉を濁し
「うし!万引き犯捕まえたし警備部のところに連れて行こうぜ!つかその人は?」
と無理矢理にもとのテンションを取り戻すアルフ。
「ああ…この女は万引き犯とグルだったんだ。」
とヴァンスは、
「離しなよ!」
と腕を振るう女を前に突き出す。
「早く連れて行きましょう!パトロールの続きをしないと。」
と言うリヴィアの提案で3人はガーディアンの警備部へと向かった。
アルフは犯人達を連れているヴァンスの横をついて行く。
先程通り掛かった眼鏡の男が自分の予想と違って欲しいと切に願いながら。