†第27話《『記憶』終結》†
こんにちはKAITO改めまして海人です。
今までごらんになってくださった方本当にありがとうございます!!
私の処女作であるこのフェアライズも次話よりいよいよ最終章突入です!
このあとのお話も楽しんでもらえたなら幸いです。
感想お待ちしておりますので、書いていただけたならうれしいです!
それでは、フェアライズ第27話お楽しみ下さい。
「動くな!!」
アルフは武装した数十人の兵士に囲まれていた。
「やめろ!!事情を話させてくれ!傭兵が契約を破ると思うか?」
必死に説得をするアルフ…だがその説得は決して命が惜しいからではなかった。
「契約?お前は最初からこの戦線に参加することを快く思ってなかったのだろう?だから仲間を引き入れて我々を裏切ろうとしていたんじゃないのか?」
「違う!俺はそんなこと…この戦線に来たくなかったのは人を殺したくなかっただけだ!」
「傭兵が人殺しを嫌がるだと…?金次第でどんな戦場にでも介入し、人の死に関わり続けたのにか?」
「……!!」
「綺麗事をいうのもいい加減にしろ!人を殺す覚悟もないやつが、戦場に出てくるな!!」
そう激怒した兵士は構えていた銃の引き金に添えていた手に力が入る。
「やめろ!今は撃つな!やめろぉぉおお!!」
銃の引き金は引かれ、銃が斉射される。
その瞬間、顔の刻印が光り輝いた。
まさに一瞬
一瞬だった…
一瞬のうちにその場は血の海になっていた。
アルフの意識は、フィアスにより増幅された生存本能により、命を脅かすものを殺戮するキリングマシーンとなり、その場にいた兵士たちは、アルフの剣によって切り裂かれていた。
血の海の中心に立つアルフの前には一人の兵士。
「た…助けてくれ…。」
悲痛な叫びをあげる兵士にアルフは容赦なく手に持った刃を突き立てた。
返り血が体を濡らす。
そこでふっと意識が戻る。
辺りを見渡したアルフは動く者を誰一人見つけられず、うなだれた。
「これも…俺が…全部俺がやったんだ。こいつはいくつの命を奪ったら気が済むんだ!俺はもう、殺したくないのに…。」
消え入りそうな声でそうつぶやき、自分の手を見つめるアルフ。
アルフは助けようとしたのだ、自分の命ではなく、兵士たちの命を。
フィアスが暴走しているため、周囲から銃で狙われ、命の危険を感じればどうなるかはアルフが一番よく分かっていた。
「こんなことのために俺は…。」
そういって剣を腰にしまった。
「アルフ…あいつどこに居やがるんだ?」
その頃、要塞内を探し回るヴァンス。
(闇雲に探しても、こんな広い要塞で人一人見つけるなんて不可能だしな…とりあえずこの戦い終わらせりゃいいんだろ…)
そう考えたヴァンスはその辺にかかっていた白いカーテンを引きちぎった。
(うし!あとは長い棒と…)
そんなことを考えながらヴァンスはある場所へと向かった。
その場に立ち尽くしてどれくらいの時間がたったか、息をしていない兵士たちの無線はめまぐるしく動く戦場の様子を逐一伝えていた。
「?」
監視台のところに人影を見つけたアルフ。
見えない塀のところで何やら作業をしているらしかった。
そして…。
バサッ!
広げられたのは、白い布を長い棒に括り付けた、それはまさに白旗だった。
(降伏したのか…?どっちの兵だあれは…?)
距離が遠くて確認はできないが確かに白旗を振っていた。
旗が見える位置にいた兵士、僧侶の動きが止まる。
ガタンッ!
「何ですかあれは!誰です!降伏しているのは!」
司令室でカワードが叫びをあげる。
振られる白旗を見つめ、アルフは安堵していた。
(これで、戦いも終わる…)
しかし、アルフの胸には一つの悔恨が残っていた。
「もっと早く降伏していれば、こんなことにはならなかったのに。」
そういって立ち尽くしたアルフだったが、急に体の力が抜け、その場に膝をつく。
(な、なんだ…?体に…力が入ら…な…)
アルフはその場に倒れこんだ。
しばらくして、薄れゆく意識の中、誰かが自分の名前を何度も呼びながら体を運ぶのを感じた。
後日談
アルフが気を失った後、謎の兵士による白旗の影響で、混乱した戦場をカワードの指揮のもと鎮圧、結果的に白旗はレアーズィのものと判断され、皇国支配を受けていたネイスールはレアーズィからの独立を果たし、ネイスール独立国として名を新たにした。
アルフが目を覚ますと、そこにはヴァンスがおり、ネイスールから逃げるように去り、ヘレニックへと帰国、悪行行政都市などと呼ばれ、ヘレニック共和国内1治安の悪い街カルストで今後を過ごしていくこととなった。
「う…。」
目を開けたアルフは太陽の眩しさに呻く。
「ここは…?」
ふと手に温もりを感じ、見るとリヴィアが心配そうにこっちを見つめていた。
「ここは病院。おはようアルフ。」
(病院…?ああ…俺は夢を見ていたのか…ユグドラスの…)
「おはよう。」
「気分はどう?」
起きたばかりで声の出にくいアルフに年の割に幼い、かわいらしいリヴィアの顔が近づく、その髪のいい香りになぜか気恥ずかしくなるアルフ。
「あ、ああ…悪くない。そういえばヴァンスは?」
必死に会話を続けるアルフ。
「ヴァンス?ヴァンスは今…」
リヴィアが言いかけた時、ちょうど売店から帰ってきたヴァンスが部屋に入ってきて、目を開けたアルフを見るや否や手に持った荷物を落とし、ベッドに駆け寄った。
「アルフ!やっと起きたか!体は?」
「ああ、とりあえず大丈夫みたいだ。」
アルフはそういって手を握ったり開いたりして、体の安否を伝える。
「そういえば親父は?」
「ああ!エアルドさんな、お前に伝言を残して帰った。」
「伝言?」
あらかたの予想はついていたが一応聞いてみる。
「今回は負けたがこれで一対一だ!まだ騎士団の件諦めたわけじゃないからな!だって。」
リヴィアが若干物真似気味に伝えるのを見て、アルフは笑顔を漏らした。
「はは…似てねーなー。」
「え!酷ーい!?」
3人は笑いあい、団欒な空気が流れる。
“ここで速報が入りました!先日何者かに暗殺されたフェア・ツヴァイ・フルング・レガリス様に代わり、新皇帝の座を継ぐことになられましたのは、フェア・ラグナロク・ツェベート・レガリス様と決定しました。そこでこの後、ラグナロク殿下より、意思表明の会見があるとのことです。繰り返します…”
テレビの告げる事実に先ほどの団欒な空気はなく、ただ黙りテレビを見入る3人。
この後、ラグナがしようとしていることなど、誰にも知る由もなかった。