†第22話《再戦》†
†第22話《再戦》†
「よぅ…待ってたぜ…もしかしたら来ないかと思ったくらいだ。」
ヘレニック共和国 エアツィア州 カルスト その町外れの開けた場所で一人立つエアルド。
「悪い…ちょっと寝坊した。」
「へっ…どうだい身体の調子は?」
「そんなの最高だ…。」
「へぇ〜そいつは良かった!!俺も闘い甲斐があるってもんだ…な!!」
まだ喋り終えない内に腰に差していた刀を抜き、アルフに向かい振りかざした。
ガキンッ!!
振りかざされた刀を剣で受けると鈍い金属音と共に火花が散る。
「ほぉ…良く受けられたな!」
「死にかけた俺にフィアスが応えてくれたのさ…この力が…俺のフィアスだ!!!」
そう言い放つと腕から強い光が発生した。
その光は徐々に身体の各部へ広がって行き全身が強く光り輝く。
「おいおい…その刻印は…!?」
顔の左側に大きく十字についていた刻印は形を変えて同じ場所を包み込むような柔らかな形へと変わっていた。
「そうか…これが本当の…。」
「ふふふ…ははははは!」
「?」
「こりゃやっぱり血かねぇ…まぁいい、これで全力を出せるってもんだ。」
突然笑い出しそう言い放つと刀を持った手を上に挙げ今度は空気を斬るように地面に向かい勢い良く振りかざした!
すると…
足元からまばゆい光が吹き出し身体全体が光だし…アルフとは逆の顔の右側にアルフの刻印に酷似した刻印が現れた。
「親父…お前…!」
「ふぅ…こいつを使うのは久しぶりだな〜…ん?何だその顔は?俺にフィアスが使えないとでも思ったのか?」
「いや…あんたの本気を初めて見たから驚いただけさ…。」
「ふ…怖じけづいたか?」
「いや!その逆だ…これでやっと本気のあんたを超えられる!!」
「その身体でどうやって闘うんだ?致命傷は避けたが、身体の14ヶ所を切り裂いたんだぞ?」
「14か…そんなら俺はあんたの身体を15ヶ所切り裂いてやるよ!」
「本気か?」
「………。」
「聞くだけ無駄…か…。んじゃあ!始めるとしますか!!」
そう言うと同時にお互い前に踏み出す。
その後は凄まじい速さで斬り合いその全ての斬撃がぶつかり弾き合う!
(っ!!何だこの腕の痛みは…!)
アルフとエアルドの光のフィアスを使った斬撃は速さだけでなく重い、その為二人の腕には相当のダメージが蓄積していた。
(これはまずいな…早めに決着つけなきゃ二度と腕使えなくなるぞ…!!)
この症状に苛まれたのはもちろんアルフだけではなく、エアルドも同様に腕の痛みを感じていた。
(ちっ…こいつは些かまずいな…アルフには悪いがとっとと決めさせて貰うか!)
エアルドは一度アルフから少し遠退いて距離をとり、刀を右脇に反らし相手から刃の見えない脇構えをとる。
そして…
「聖閃!!」
掛け声と共に腰に隠した刀をフィアスを使って振り上げる。
すると、振り上げに伴って斬撃の衝撃波が光の渦となってアルフ目掛け襲いかかった!
アルフにも光刃という衝撃波を放つ技が使えるが聖閃はそれの何十倍もの衝撃波だった。
しかしアルフは焦らず剣先を聖閃から生まれた衝撃波に向けフィアスを剣に集中させる。
「光衝破!!」
剣に蓄積されたフィアスを剣先に集束させ前方に放射する!
聖閃と光衝破の二つのフィアスはぶつかり合いその場で相殺され光の爆発が起こる。
「くっ…!!」
「ちっ…!」
目も開けられない程の光に二人は互いに目をすぼめる。
(っ!!これはまずいな…腕は勿論痛いが傷口が開き始めた…とっとと決めないとギブアップだぜ…)
「どうしたアルフ?顔色が悪いぞ!」
そういいながら刀を振るってくるエアルド。
「うるせーよ!誰のせいだと思ってやがる!」
アルフは反論しながらエアルドの斬撃を受けていく。
今回のエアルドとの戦闘では前回とは決定的に違っている点があった。
それは手応えである。
前回のアルフはフィアスが暴走し制御が仕切れない所があったが、フィアスを掌握し速さを活かした攻撃が出来ている為、前回のような圧倒的な力の差は無く、寧ろ圧倒している所があるくらいだった。
今回は前回つけられた傷がアルフの痛みを著しく悪くしていたが、それを上回る覚悟とフィアスのお陰で互角以上の闘いが出来ていた。
それに気づいていたエアルドは自分の持つフィアスを解放した訳だが、エアルドも年齢が年齢の為、長期戦には向かない…その為前回との違いにエアルドは少々焦っていた。
(ちっ…!アルフのやつ思った以上に動きが良くなってる…このままじゃ押し切られてもおかしくないな…)
「ふ…この前とは打って変わって…だな!」
ガキンッ!
「フィアスは自分の覚悟や思いで増幅する無限の力だ!あんたが前より違うと言うなら俺の覚悟がそれだけ上だって事だ!!」
ガキンッ!!
会話をしながらも隙を見つけ互いに打ち合い、弾き合う。そんな中…
(ん?親父…左足と右腕を庇ってるのか…?)
闘いの中でエアルドの左足と刀を持つ右腕の動きが鈍い事に気づくアルフ。
(右腕はさっきから俺も痛いが…左足は…?)
「なぁ親父!勝負っつーのはシビアなもんだよな!」
ガキンッ!!!
「どうした突然…今度は怖じけづいたか!!」
ガキンッ!!!!
「俺は今まであんたに勝てなかった…だけど今回は…」
そう言うとアルフは少し距離をとり、エアルドの斬撃が空を裂く。
そして、すかさず光速でエアルドの右側に周り込む。
エアルドはアルフの周り込んだその背後を取ろうと光速を使おうと足に力を込めると…左足に痛みが走り一瞬怯んだ!
「くっ…!」
その一瞬にアルフは距離を詰め…。
「俺は…あんたを超える!!!光衝破・零距離放射!!」
零距離で放たれた光衝破を避ける術があるはずは無く、圧縮されたフィアスを身体に受けたエアルドは天高く打ち出され2、30m程吹っ飛んだ所で、着地も出来ずに鈍い音を立て落下した。
アルフも気が抜けて、その場に尻餅をつく。
「はぁ…はぁ…どうだ親父…俺のフィアスの味は…?」
「ふ…コイツは効くぜぇ…最高だ…!」
「俺は…!ヘレニック最強を倒したんだ…!親父を…!超えた…ん…だ…。」
「そうだな…!お前は今…!ヘレニック最強だ…!ふ…少し…疲れちまった…な…。」
二人は決闘の激しさを物語る疲れ、傷ついた身体に襲いくる睡魔に身を委ね、重たい瞼をゆっくりと閉じた。