†第17話《領力》†
†第17話《領力》†
「今日からお前をエーノールクェイブ州持ちの騎士長に任命する。」
父の私室に呼び出され突然そんな宣告をされるアルフ。
「俺が…ですか?」
「そうだ…今日から肆騎士だ…喜べ…。」
国を守るいわば騎士団の幹部的な位置づけの肆騎士に任命されることは、他の騎士達にとってはとても光栄で誰もが目標にする様な事だがまったく喜びの湧いてこないアルフ…。それは今まで以上に他国を攻め罪を重ねて行く事だったからかもしれない。
「肆騎士になるのにしたがって教えておきたい事が一つある。俺達が使っている領力…現代風に言うならフィアスの事だ。」
「フィアス…。」
握った自分の拳を見つめるアルフ。
「昔の人達は…個々が別々の色を持ち、何処からか湧いてくる、そんな不思議な力の事を領力と言った訳だが…その色は“黄、黒、赤、青、緑、紫、茶”で表され、それぞれ“日から土までの曜日”や“光、闇、火、水、風、雷、土の属性”で大まかには表される、んでその発生源は人の生命力だ。つまり、使える状態には限りがあるし、しかも無尽蔵じゃない。だからフィアスを使う時はその生命力の変換量に注意するんだ、そうしなければフィアスは自分の身を危険に晒すだろう。まぁ世界では同属性同士か相対する属性同士を二重装填して同時に使うフェアライズと呼ばれる状態があるらしいが、一つでも命を脅かすのに二つ同時なんて考えられんな…。まぁ大体ここまで分かったか?」
「ごちゃごちゃしてて分からない…です。」
「………まぁとりあえずフィアスは生命力を使って発動するから使い過ぎるなって事だけ覚えておけ!」
「使い過ぎるって言われても判断基準が分からないんですが…。」
「刻印だ…。」
「はい…?」
「一定量使うと身体の何処かに刻印と呼ばれる紋章が現れる。」
「はぁ…。」
よく分からないがとりあえず頷くアルフ。
「覚えておかないと困るのはお前だ…分からないなら書籍等で調べておけ…肆騎士に選ばれた以上今までより戦いは厳しくなる…期待してるぞ…アルフ。」
アルフが騎士として活躍していた頃…そんな昔の記憶…。
(そういやそんな事も言われてたっけな…)
と父との約束の場所に向かう途中、顔に出た刻印を触りながら一人思う。
エアルド・ル・ブレスク。名のある騎士の家系…ブレスク家の現在の当主でアルフの父。
(俺は…勝てるだろうか…)
今まで一度も、一撃すら入れた事のない父に、騎士を辞め、名を変えた後、三年間傭兵をやり、それなりの場数はこなしたもののエアルドもその間何もしなかった訳ではない、そもそも父と息子では、経験という大きな差がある、それが戦闘経験なら尚更だ。
(まぁ考えても仕方ないか…勝っても負けても命は助かるんだ…大丈夫)
そう自分に言い聞かせながら、決闘に足を進めるアルフだった。
「来たか…。」
街の外の出来るだけ人気のない開けた場所。
エアルドはそこで正座をしアルフが来るのを待っていた。
そこに光りを纏った若者が一人…。
「…待たせたな。」
「いや…構わんよ…。」
二人同時にアルフは剣に…エアルドは刀に手をやり…
「勝負!!」
二人は前に踏み出した!!