†第16話《博打》†
†第16話《博打》†
「お…お…お父様ですか…?」
気が動転するリヴィア。
「お父様って何だ…何だか照れちゃうな…。」
「リヴィア…とりあえず落ち着け…ちゃんと挨拶を!」
「そうね…あの…私リヴィアって言います!えと…あの…あれ?何で挨拶!?ヴァンス〜!」
と茶化された事にようやく気付いたリヴィアは赤面する。
「ははは…お前達は愉快だな。なんにせよとりあえずコイツを落ち着かせないと本当に死ぬぞ。」
「そ…そうですね…。でも一体どうすれば…?」
「まぁそりゃあおじさんに任せなさい。」
アルフ父は言うなりアルフの顔にある刻印に触れると手から光りを出しはじめた。
するとアルフの身体全体にその光りが行き渡り始める。
「この症状はな…フィアスを爆発的に使った後に現れる症状で、急に生命力を使われた身体が最低限の機能以外を停止させている状況なんだ。だからまぁ同じ属性の俺が少しばかりフィアスを介して生命力を分けてやれば…。」
アルフ父が説明し出すなり
「うっ…。」
眩しそうに細目を開けるアルフ。
「アルフ!よかったぁ〜!」
とベットに駆け寄るリヴィア。
「リヴィア…?ん?あんたは………親父!?」
バサっとその場から起き上がるアルフ
「親父!何であんたこんな所に!!」
「あ?お前を助けに来たに決まってんだろ?」
「あんたが俺を?そんな訳無いだろ!本来の目的はなんだ!」
「ふはは…見破られてるか…本当はお前を騎士団に連れ戻しにきた。」
しんとなる部屋
「は?今更俺が戻るとでも?」
「まぁそういうと思ったが俺も今のお前はいらない…。」
「わけがわからないな…だがそいつは結構!戻る気なんかねぇから帰れ!」
「このまま帰ってもいいが…このままじゃお前死ぬぞ?」
「あ?」
「だから…そのままじゃお前はもうあと3日も持たずに死ぬって言ったんだ。」
「な…に…?そんな脅し…」
「脅しと思うか?なら自分の胸に手を当てて少し考えてみろ、どれだけフィアスを使った?その顔に出た刻印は何だ?」
「…っ!」
「ったくよ…怒りに任せてフィアスを爆発させやがって…体内でフィアスの興奮状態がおさまらないから刻印が消えないんだ。刻印が出ている限り死ぬまでお前の生命力をフィアスとして放出し続ける。そして生命力が底をついたら当然…。」
「しぬ………。」
「状況が理解出来たか?お前には俺の力が必要だろ?」
「………どうすれば刻印を消すことが出来る?」
「方法は二つある…一つはお前の精神力でフィアスの発動を押さえ付ける方法…二つ目はお前がボロボロにやられて生命維持が困難な状況になればフィアスも発動を緩めてそのエネルギーを生命維持に回すって方法だ…まぁ後者は生きるか死ぬか五分五分って所だな。」
「答えは決まってる!前者だ!」
「そう言うと思ったよ…まぁ残念ながら今発動が解けてない時点で前者は不可能なんだがな…。」
「そんな事分かってるさ…だから俺はあんたに勝つ!」
「ほう…そう来たか…ならこうしよう、お前が俺に勝てたら俺は二度と騎士団には誘わない…だがもし俺が勝ったら…」
「ああ…俺は騎士団に戻る…!」
「ふん…そいつは分かりやすくていいな…じゃあ準備をして来い!街の外で待っている…。」
そう言うなり部屋から出ていくアルフ父。
黙って話しを聞いていた二人のうちヴァンスが口を開く。
「アルフ…勝算はあるのか…?」
「まったく無いな…」
「は?」
「だから…今の俺じゃああいつに勝てそうに無いって言ったんだ…。」
「じゃあ何であんな勝負…!」
「そんなの後者を選んだからに決まってるだろ?」
それまで黙っていたリヴィアが口を開く
「アルフ!それじゃあ元に戻っても騎士団行きじゃない!」
「大丈夫だ…どうせ親父の事だ俺をけしかける為のただの理由に過ぎないさ…。」
「それならいいけど…。」
「よし!じゃあ行ってくるかな…。」
「アルフ!」
ベットから起きたアルフの腕を掴むリヴィア。
「大丈夫だ…俺は…大丈夫…負けない。」
心配そうな顔で見上げるリヴィアをアルフは優しく宥める。
そうしてヴァンスに向き直ったアルフは
「あと…頼むな…。」
と言い残し、部屋から出て行った。