†第10話《『記憶』作戦》†
†第10話《『記憶』作戦》†
アルフの号令のあと
振り分け通りに行動しだした6人。
まず移動開始班の四人は、アジトにある地下駐車場に行き、国境の街ノイスへ行くエルダー、ミッドの2人は軽トラックに、駐屯地へ行くアルフ、グレンは隠密行動となるため無音走行が可能なバイクにそれぞれ乗り込みアジトを出発した。
その後ハイド防衛班のリヴィア、リードはスレイブのメンバーを集めて、街の巡回を指示したあと。
リヴィアは望遠台で街周囲の監視、リードは巡回に混ざり、本格的にミッションは開始された。
アルフ達が
アジトを出発して30分。
駐屯地へと急ぐアルフとグレンだったが、アルフが突然グレンに停止の合図を送った。
アルフからの突然の停止の合図に戸惑いながらも停車するグレン。
「どうしたんですか?」
と停止の理由を聞くグレン
「実は、俺にはもう一つだけ補給部隊の居場所に心当たりがあるんだが…。」
と話しを切り出すアルフ
「そうだったんですか!?ではなぜ作戦会議の時に言わなかったんですか!」
とアルフを攻め立てる。
「すまない…あの時は思いつかなかった。だがその場所にも可能性はある、だからここで一人づつに別れよう、お前はこのまま駐屯地へ向かってくれ。俺は…」
「ちょっと待って下さい!軍の駐屯地ですよ?僕一人でなんて無理です!それにそこまで可能性があるなら僕も一緒に行きます!」
「グレン!お前ならやれる。それにもしこっちが空振りだったらすぐに駐屯地に向かう!だから一人で行ってくれないか?」
と真剣な眼差しでグレンを見つめるアルフ。
そんなアルフに感化されたグレンは
「やってみます…!」
と答え、2人はここで別れることになった。
一人無音バイクを走らせるアルフ、その時ポケットから一枚の紙切れが落ちる。
その内容は、
書状
私はネイスール独立国軍大佐
カワード・ブレイスンです。
僭越ながら先日
貴方がたの部下達を保護させていただきました。
折居ってお話がありますので
軍の駐屯地南のパート森林まで
ご足労願えますか。
出来れば一人で。
早めに来られた方が得策かと思われます。
それでは。
というものだった。
アルフは最初から補給部隊がどこにさらわれたかを知っていたのだ。
これは1日前アルフの部屋に投げ込まれたもので、この書状により補給部隊の居場所が分かった為、怪しまれないように作戦会議を開き、その身一つで補給部隊を助けに向かった。
パート森林に着いたアルフは、バイクを止め
迷わず森林の中に入って行った。
森林の中は鬱蒼とした外部とは打って変わって整備されていて人の気配がした。
整備された道を辿っていくと、森の開けた場所に出た。
そこは銃を構えた数百の兵士が周りをとり囲んでいて、その中心では軍服を着ていて黒の長髪に眼鏡をした男がレジャー用の椅子に座っていて、更にその後ろの犯罪者などを護送する為に使う大型のトラックの中に補給部隊のメンツが入れられていた。
アルフがその眼鏡の男に近づいて行くと、広場に入ってきた場所に兵士がつきアルフは広場ごと円状に取り囲まれた。
そして話しを切り出す眼鏡の男。
「ごきげんよう!アルフレット君!君の噂は兼ね兼ね聞いていますよ。私の名前はカワード・ブレイスン、書状を送らせて頂いたものです。」
と懇切丁寧に自己紹介するカワード
「ああ…そうか。お前の望みは叶えたんだ、早く仲間を解放しろ。」
苛立ちをみせるアルフ
「おやおや、そんなに怒らないで下さい。私はただ交渉をしようというだけです。」
「何が交渉だ!こういうのは恐喝って言うんだよ!一人で来いっていうあんたの願いを聞いてやったんだ!まず人質を解放して退席させろ!」
「そうですね。おい!人質を解放して“檻”の外に逃がせ!」
急に声色を変えたカワードは部下にそう指示するとアルフに向き直る。
車から降りてアルフの方へ向かう補給部隊の5人。
するとすれ違い様にその中の一人が
「随分とゆっくりだったな…リーダー、危うく死ぬところだったよ。」
と皮肉を投げかける。
癖のついた短髪に金の髪、その男はヴァンスだった。