†プロローグ†
†プロローグ†
「…………」
ある冬の寒い夜、爆炎が照らすその要塞に佇む青年。
髪は短く薄い茶で
頭に黒いスカーフを巻いている
黒いジャージ上下に鉄板を加工した胸当てを纏い、その腕には肘まである篭手、ももには鉄を縫い合わせたものをあてがっていた。
その前に怯える一人の兵士
銃弾の跳ね返りから顔を守るフルヘルメットをかぶり、肩掛けのガードプレートをしていた
「た…助けてくれ…。」
悲痛の叫びをあげる兵士に
彼は容赦なく手に持った刃を突き立てる。
体を濡らすかえり血が彼の体温を奪っていく。
辺りには人の死体と銃や戦車の残骸がごろごろと転がり、むせ返るほどの死臭と火薬の臭いで充満していた。
ここはネイスール独立国の要塞ユグドラス
ネイスールの要となる要塞で、独立国最大の広さを誇っている。
燃える戦車から吹き出す爆煙が空を明るく照らしている。
ユグドラス要塞上部の監視台で一人の兵士が白い布を掲げる、それは文字通り白旗で彼等は降伏の意思を見せたのだ。
だが彼に喜びはなくただ悔恨の念にさいなまれていた。
「もっと早く降伏していればこんなことにはならなかったのに。」
吸う息がひどく冷たい。
戦争の悲惨さが身に染みる中ひたすらに振られる白旗をただ見つめていた………。