第5話
プロローグ
世の中には誤りがありふれている。よく考えれば理に反することや、価値観の違いによって対立する時さえある。
テスト問題でも、間違っているものを選びなさいという捻くれた問題が、ここ最近では多く見られるようになった。
では、どのようなことが誤りと言えるのか。俺こと柏木広樹の友人を選択肢にして、問題を作ってみよう。
次のうち、間違っているものを選びなさい。
1、石原誠は子供である。
2、桜井俊介は馬鹿である。
3、小西僚太はサルである。
4、狩野秀明は年下である。
この場合はどれであるだろうか。
様々な解答が出かねないが、これは3が間違いだ。小西は見てくれこそサルだが、実際はサルじゃなくて人間だ。同じ哺乳類でもサルと人間は違う。
まぁ、こんな感じで正誤問題を考えるうちにこんな会話が耳に入った。
「アンパン○ンってさ、顔が濡れたら元気がなくなるじゃん?」
「うん」
「じゃあさ、元気が0ってことだよね?」
「うん」
「それじゃ顔を入れ替えた時の元気100倍って無駄じゃね?」
「確かに」
この会話は確かに一理ある。顔が濡れたら元気がなくなる、だから元気は0。0×100=0だから、最終的に元気は元に戻ってなくね?という意見だろう。
しかし、俺は顔が濡れたら元気が0になるとは思わない。元気が0だったら、“顔が濡れて力が出ない”なんて言葉に出せないはずだからな。要するに、俺の中では元気が0=死と見ているわけだ。
それから、ウルトラ○ンは地球の時間で3分しか戦えないらしいが、どこにいても地球の3分はたつんだから、故郷に帰ってもカラータイマーが鳴りっぱなしじゃね?と思うようになった。人の姿になったとしても、全てのウルトラ○ンが人と融合しているわけじゃないから、結局ウルトラ○ンって成り立たなくね?
しかし、これは子供の夢を護るための暗黙の了解なのだろうと思い、心にしまうことにした。何にせよ、考えすぎはマイナス思考に入りがちになるようだ。
第五話 間違いは気付くまで間違い続ける
~S1~
俺は、自分の人生を振り返っていた。
何故あの時こうしなかったんだろう、どうして俺はこんなんなんだろう。
過去を振り返ったところで何も変わらないというのに、人はよく過去を振り返る。それ自体は悪いことじゃない。過去の失敗は未来への架け橋、と誰かが言ってたような言わなかったような……。まぁ、誰かが言っていようと言わなかろうと、過去という人生の経験を生かし、今を生きるのは大切なことだ。
しかし、覚えのない過去を突きつけられたらどうすればいいのだろう?全くの作り話と断定し、跳ね除けられるだろうか。それとも、よく考えて答えを出そうとするのだろうか。
……それが出来ずに警察に連れて行かれた俺はどうなんだろうか。
「はぁ~。あ~あぁ」
溜め息が何も思っていなくても口からこぼれる。
ここは刑務所。罪を犯した人が収容され、労働させられる場所。しかも脱獄阻止もフルアーマーで付いているときた。
……もう終わりだ。世も末だ。俺が何をしたっていうんだ。
普通に高校から帰ってくる途中でゲーセンに寄り道していたら警官に捕まって、何だと思ったらそのまま連行だぜ?どうかしてる。
刑務所見学かと思ったら、服全部脱がされてバスロープのズボン付きみたいな奴履かされて、今は庭の掃除だ。しかもバッチリ四方八方に監視カメラがある。落ち着かなくてしょうがない。
俺が半ば嫌味な思考に入ったところで刑務所の役人が俺に声を掛けてきた。
「211098番!客が来ているようだ!掃除を終えたら来るように!」
「分かりました……」
「どうした!?覇気がないぞ!?」
アンタがありすぎるんだよ、赤木さ…………!?
「何で赤木さんがここにいるんだ!?」
「いや~!教師だけでなくスピード大会の司会兼進行役と刑務所の役人もやっているのだ!ワッハッハッハッハー!」
笑えねぇよ。何だよそのチョイス。
「で、俺に客って誰ですか?」
「石原だ!!」
彼の声が刑務所内に山彦を起こす。どんだけ声がデカイんだ。
にしても石原が何の用だ?
その疑惑は俺の現実を見直させるものだった。
面会室で俺と石原は会った。
「柏木、どうして捕まってるの?」
「こっちが聞きたい」
「何かやったんじゃないの?」
「そんな覚えはない」
石原の何を話していいか分からない顔に俺は困惑した。てっきりコイツが俺の無実を証明するものだと思っていたからだ。
ここまで来たらもう駄目か……。
――ここで諦めていいのかよ!?そんなんだからお前は後悔するんだろう!?
お前は、俺のプラスの部分か。
――そうだ!今回くらい勇気出せよ!
でも、勇気出して何をするんだ?脱獄くらいしか思い浮かばないぞ?
――お前には考える力がある。
テメェ、結局人任せじゃねぇか。
――そうさ、人は何かの犠牲の上で生きているんだ。
次はマイナス部分が出てきやがった。
――きっとお前は無意識のうちに犯罪を仕出かしたんだ。
――そんなことはない!
――それをどうやって証明する?
――犯罪をしたって証拠がないだろ!
――疑いがあるから捕まったんだろ?
――すぐに晴れるさ!
何でプラスとマイナスが口論してるんだよ。キリがないだろ。
――じゃあどうするんだ?
――この運命を受け入れるのかい?
運命って言葉、俺は大嫌いなんだ。最初から決められているから、今何しても変わらないなんて嫌だからな。
――それは現実逃避と言うんじゃないのか?
――そうさ、君は何からも逃げているんだ。
そうとも言えるな。でも俺はそんなつもりはないぜ?代わりに偶然を信じているからな。
――偶然?
――たまたまをかい?
あぁ。全てのことは、偶然が重なって出来ているんだ。そういう考えでもいいだろう?
――俺はその意見に賛成だ!
さすがプラスだな。マイナスはどうだ?
――さっきから思っていたんだけどさ。
あ?
――どうした?
――石原君が困ってる。
やべぇ忘れてた。誰だ、脳内会議開いていたイニシャルがK.Kの奴!!
――自分で言うの恥ずかしくない?
言葉に出てないからいいんだ。お前らはもう休んでいろ。
「石原、俺の過去を調べたんだな?」
現実逃避から戻ってきた俺は石原に聞いた。
「うん。確かに疑いがかかるところがあってさ。でも6年前のことだから弁護の仕様もなくて」
6年前か。俺が小5の時の出来事か。
「警察になんて聞かれたの?」
「放火したのは君だろう?って」
そう、俺が小学5年時の冬、俺の小学校は意図的と捉えるしかない燃え方をした。
給食室の爆発が原因で、その爆発が運悪く校舎内の灯油倉庫に届いてしまい、学校全体が燃えたという事件だ。死亡者約80名、重軽傷者約200名に及ぶ被害だ。これはとても印象深かったので結果は有名だが、そこまでのプロセスを警察が調べなかったため、こんなにも簡単に捕まってしまったのだ。
しかし、石原の顔を見るとその不安だけじゃない気がする。
「石原、お前知っちまったんだな。俺の過去を」
「……うん」
「まぁいいさ。いずれ言うことになったろうしな」
~柏木の過去~
小学校に入る前の出来事だった。俺は実の父親と、実の母親と、そして実の兄と一緒に駅近くの道路を歩いていた。
その日は丁度幼稚園の卒園式であり、家族全員が参加してくれた。笑顔で父親と手をつなぎながら歩く俺。
――悲劇はここからだった。
交差点に着き、青信号を確認してから渡る。そのことを覚えているんだと父親に自慢しながら横断歩道を渡っている最中だった。突然父親が顔付きを変え、俺を右手で前に突き飛ばし、母親と兄を左手で後ろに突き飛ばした。
俺は両手を前にして地面にぶつかり、後ろを振り返って父親に怒ろうとした。
しかし、後ろを振り返っても父親はいなかった。代わりに残像を残すほどの速さで通り過ぎる赤いスポーツカーだけがほんの数瞬見えただけだった。
嫌な予感がして上を見た。見慣れた形の影がひとつ、宙を舞っていた。そして頭部を下にして落ちてくる。
動けなかった。見ることしか出来なかった。
ただ、その地獄のような時間が異常に長く感じられた。
鈍い音。何かが折れる音。俺の足元まで広がる赤い血。
「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺の叫びに状況を知った若者が救急車を呼び、父親は搬送された。さらに、左手ひとつで飛ばしきれなかったであろう母親と兄も搬送され、俺は1人だけ無事で残ってしまった。
病院に着いた瞬間、父親は手術室に運ばれ、手術中の赤いランプが点灯した。
兄は意識不明の重態、母親は右半身を中心に骨折、故に即刻入院となった。
1人じゃ何も出来ない俺は、院長の下、病院に泊まることを許された。
手術中の赤い点灯が消えたのは8時間後だった。
暗い顔をして俺に説明をする医者。泣き喚く俺。そして、力なくその場に突っ伏してしまう俺。
俺の実の父親は死んだんだ。
さらに不幸なことに兄の容態が急変し、心停止したのは2日後だった。
たったひとつの出来事で、こんなにも簡単に俺は大切なものを失ってしまった。
――自分が非力だから。
――自分に何の力もないから。
――自分が周りを見ないから。
――自分が甘えてばかりいるから。
考えが歪んでいく。性格が曲がっていく。
助かった母親は、俺と口も利かず、視線を合わせることなく自殺してしまった。何の相談もなく、何の言葉もなく。
俺は、家族を失った。この世に独りになってしまった。やるせない、何の気力もない、苦しい。そんな感情が小さな俺の体を渦巻いた。だが、不思議と涙は出ていなかった。
行く当てのない俺は、施設に入った。それと同時に銀行の通帳を渡された。中を見てみると、想像もつかない巨額が入っていた。
「君の家族が残してくれたものだよ。君はみんなのために生きるんだ」
施設長は俺にそう言ってくれた。俺は何か言葉を探そうとしたが、何も出てこなかった。
ただ、その代わりに涙が出てきた。そんな俺を見て、施設長は続けて言った。
「不必要な存在は生まれてこない。だから君は生まれてきたんだ。生まれてきたものには義務があるんだよ?」
「義務……?」
「そう、義務。それは生ききること。君はそれをしなければならないんだ」
“不必要な存在は生まれない”と“生きている者は生ききるのが義務”という言葉が俺の心の何かをつついた。
嬉しい。安心する。まだ、俺にはやることがあるんだ。
その心の芽生えとは裏腹に、小学校へと入学した俺は、先生以外に誰からも話しかけられることはなかった。
入学式の折、多数聞こえた俺への言葉。それが次々に俺の心に突き刺さった。
「あの子だわ、家族全員亡くなったのって」
「あらやだ、呪われるんじゃないの?」
「あの子に近付いちゃ駄目よ?」
「家族と一緒に逝けなかったなんて残念な子ね」
「早くご家族のお迎えが来るといいのにねぇ」
悔しかった。腹が立った。今すぐにでもあいつらの家庭をぶち壊してやろうかとも思った。
でも、俺は堪えた。
――ここで俺が誰かの家庭を壊してどうなる?
――俺と同じ目に遭わせたところでどうなる?
――俺の状況が変わるというのか。みんなが戻ってくるというのか。
――そして何より、俺に誰かの“生ききる”という義務を奪う権利があるのか?
「ないよな、そんなの」
辛いことがあるなら、それ以上の楽しみを見つければいいんだ。誰かから罵られるのなら、心の中で相手を馬鹿にすればいいんだ。そんなに難しいことじゃない。
俺はその生き方をした。だが、それでも世間の目はむかつくくらい変わらず、ゲームではいつもソロプレイ、勉強は独学の日々が続いた。
俺は、同級生の誰からも話しかけられることなく小学5年となった。
その頃には最早他人を景色として見ていた。
成績はいつもトップ、運動もそこそこ出来る、ゲーム大会ではソロプレイ部門ぶっちぎりの優勝。他人なんか気にしていなかったせいかもしれない。
そんな小5のある日のことだった。
俺は先生へ提出物を出しに職員室に向かった。
先生が不在だったため、提出物だけを置き、職員室を出た。そのついでにトイレに入った瞬間、巨大な爆発が学校を襲ったのだった。
その大きな爆発の原因が俺のイタズラだと断定され、俺は少年院に入れられた。
もうその時には、俺は人を完全に信じられなくなっていた。
ただ、俺の固く閉じきった心をこじ開けた人がいた。そいつは少年院にいる俺に会いに来た。そして、俺の無実を叫び始めたのだった。
さすがに予想外だった俺は、話しだけ聞くことにした。
そいつは監視カメラのビデオを持ってきていて、その映像は給食室のものだった。それを一緒に見ると、俺の同クラスの“この世は俺のものだ”と思っている男子3人が給食室のガス栓を破壊している映像だった。
「これは……」
「君は無実なんだよ!」
そんなの最初から知っていたが、まさかこんなに俺のために動いてくれる奴がいるなんて思わなかった。
「なんか……あの……ありがとな」
「いいって。友達だろう?」
俺は小5になって初めて新しい友達が出来た。
すぐにその映像を少年院の大人に見せ、証人として俺の友達を連れて警察に届けてくると言い残し、その大人は外出した。
だが、1日たっても帰ってこなかった。
不審に思い、他の大人に聞いてみた。
「あぁ~連絡が取れないんだよ」
「そんな……」
そして、気分転換にテレビを見ようと電源をつけた。
瞬間、俺の目が点になった。
『昨日、小学5年生の男子児童と少年院の役人1人がひき逃げをされました。2人とも病院に搬送されましたが、まもなく死亡。現在新たな情報を待っていま……新たな情報が入りました。ひき逃げをしたのは赤いスポーツカーだという目撃証言が入りました。警察は5年前のひき逃げ事件と同一犯として捜査をするようです』
俺の友達としてのつながりは、わずか1日すら持たずにちぎれてしまった。
それ以上に俺の目を引いたのは5年前のひき逃げ事件と同一犯と言うところだ。赤いスポーツカーの時点でおそらくこれは俺が関与した事件だ。
何で俺の大事なものを奪っていくんだ!俺が憎いなら俺を殺せばいいだろう!!
そして、俺の容疑は晴れることなく、2ヵ月後俺はある家庭に引き取られた。
「君が広樹の言っていた子だね」
「広樹の最後のお願いなら聞くしかないね」
「「お帰りなさい」」
知らない男女が俺のことを家族として迎えてくれたのだった。
この人達の子供は、病院でこう言ったそうだ。
「アイツを……今まで苦しんで……きた、今まで……我慢してきた、誰より……も何よりも頑張って頑……張って頑張り抜いたアイツを……見守ってあげて……。藤久君を……助けてあげて……」
感謝しても仕切れない。俺は泣いた。こんなに俺を思う人がいるなんて考えもしなかった。俺のことを見ていることさえ気付かなかったのに、俺はこんなにもいいことをされて……。俺は何もしていないじゃないか……。何か俺にもさせてくれよ……。
そう思ったとき、俺の頭に言葉が浮かんだ。
『生ききるんだ。俺が君の義務だろう?』
施設長の言葉。
『友達が困っていたら、理由なんかなくても助けるのが当たり前だよ』
俺の小学校で初めて出来た友達の言葉。
「ありがとう」
俺の素直な気持ち。
こうして俺は柏木家に引き取られた。
――俺の友達の名前は柏木広樹。
――俺の本名は藤久真二。
友達と共にあるために、その日から俺は柏木広樹となったのだった。
~柏木の過去終了~
「調べない方が良かったか?」
俺が石原に問うと、彼は苦笑いしながら言った。
「そんな感じもするよ。でも、なんだか複雑なんだ」
「そうだろうな」
実際、自分の過去は捻くれていると思うしな。
石原は苦笑いを止めて、真剣な顔付きになって言った。
「どうして柏木って名乗ってるの?何で藤久真二の名前を捨てたの?」
「それは俺の義務だと思ったからだ。俺は広樹の分も生きなきゃならない。アイツは自分の命を捨てるようなことをしてでも俺を助けた。なのに、俺は何もアイツにしていない。これは俺なりの恩返しのつもりなんだ」
「そんなことしても、藤久真二、君の本当の姿を偽っているようなものだよ?」
「違う。俺は俺であり続ける。ただ、俺は柏木広樹であり、藤久真二でもあるんだ。どちらも俺だ。アイツができなかったことを俺はこれからしていくだけだ」
そう言うと、石原は黙ってしまった。
他人には、理解し難い状況だろう。自分の本名を変え、友達本人のように生きるなんて誰も考えはしないからな。だが、俺はそうしなければならない気がしたんだ。
「藤久真二と柏木広樹か……。あ、そう言えば柏木広樹が持って来てくれた藤久真二の無実の証明のはずのビデオはどうしたの?」
俺のことをどう呼んでいいのか分からないみたいだな。
「その時は絶望でそれどころじゃなかったから考えなかったな。でも、今考えるとおかしいな。殺害されたとは言え、持ち物は全て調べられるはずだからな」
「持ち去られたとしか考えられないね」
「坊っちゃんの癖に今日は頭の回転が速いな」
そうだ。石原の考える通り、持ち去られたとしか考えられない。
俺の考えでは、持ち去られたということを想定すると、犯人はその証拠がばれるのを恐れたんじゃないのだろうか。そして、犯人の推定範囲は、俺の小学校の同級生で、赤い車が家にある人だ。
「石原、犯人の範囲は調べたのか?」
「ううん。僕にもそれは難しくて。柏木……藤久に頼もうと思って」
「俺は柏木広樹だ。これからもそれで頼む」
「……うん、わかったよ」
俺が犯人の推定範囲を石原に伝えると、石原は犯罪が出来るPCを取り出して調べ始めた。
しかし、無駄かもしれないな。赤い車というさらに範囲を狭めるものは、よく考えれば逆に冤罪を生むかもしれない。
「藤……柏木の小学校の同級生で現在赤い車が家にあるところは13軒だよ」
「調べてもらってから言うのは悪いが、あの事件から6年も経っているんだぞ?赤い車を買った家庭があってもおかしくないぞ」
「オイ」
俺達がそこまで話すと、赤木さんが声をかけてきた。
「面会時間の終了だ」
「分かりました。じゃあ、柏木。僕、今日の夜にみんなを連れて迎えに来るから待っててね。まだ君は生ききってないでしょ?」
「あぁ、誰かが俺を必要とする限り、俺は生ききってないからな」
……アレ?
「今お前迎えに来るって……」
「じゃあ赤木さんも協力お願いね」
何を言っているんだ?ここの役人が一高校生の協力なんてするわけ……
「分かってます!」
なくなかったな……。というより、石原は一高校生じゃなかった。馬鹿とめちゃくちゃが頭に付く、超金持ちで大きな権力持ったクソガキだった。
「じゃあ僕これから学校行ってくるから」
今13時半なんだけど、どういうこと?
「赤木さんもまた後でね」
「はい!準備は出来ております!坊ちゃま!!」
いつからアンタは石原の召使になったんだ!!
俺の想像を絶する石原の根回しの良さ。それを痛感する俺であった。
もちろん良い意味でだぜ?
~S2~
どうやってここをかぎつけたか、宇津木が来たが、赤木さんに抑えられて声しか聞こえなかった。
「私の柏木君に会わせて!!」
「私には彼がいないと駄目なの!彼もそうなの!!」
「君のハートは僕のものだ!!」
「柏木く~ん!かくれんぼはもう終わりにしてよ~」
「いい加減私だけを見てよ~」
などと、ストーカー紛いの恐ろしいことを言ってきたので、俺は耳栓をして、なんとかその場をやり過ごしたのだが、今度はどうやって潜入してきたか、浜路が出現し、呪いの言葉を言い始めやがった。
「ウーヒラーションキキグルリーベルノーワメケンチョン……」
その言葉を聞き、俺以外は全員失神していた。
そして彼女は堂々と帰っていくのだった。
意味わかんねぇ。何しに来たんだ?
そして、石原の言っていた約束の時間になった。
俺は自分の個室っぽい牢屋で、鉄格子の外の景色を見ていた。今日も月が綺麗だな。星がたくさんあるし、こういうのを夜の晴れって言うのかな?
そんな現実逃避をしていると、急に流れ星が見えた。
「おお!!」
初めての流れ星にテンションがあがり、その場でピョンピョン飛び跳ねながら俺は言った。
「早くここから抜けたい早くここから抜けたい早くここから……」
実際には1回言っただけで流れ星は見えなくなってしまった。これだけの短い時間で、願い事を3回も言わないと叶わないなんて、マジ無理だろ。
そう思ってうつむいた時だった。
『柏木?聞こえる?』
「な!石原!?どこだ?」
『柏木がいる牢屋に無線を仕掛けみたんだ』
「そんなことどうでもいい。いつ来るんだ?」
『もうすぐだよ。外を見たままでいてごらん』
カメラつきの無線かよ……。スカイプの一方的バージョンかコノヤロー。
「あぁ、見てる」
外を見ていると、流れ星が連続で4つ現れた。
「うおぉ!奇跡だ!!奇跡を俺は見たぞー!!」
流れ星は俺の感動を受け止めて満足したかのように空へと消えていった。
そして、角度を変えて俺の牢屋へと近付いてきた。
「え?……え?ちょっと待ってちょっと待って。……ヤバくね?」
近付く流星。焦りに焦る俺。
『柏木。まだ見てなきゃ駄目だよ?フフフ……』
「絶対お前状況楽しんでるだろ!」
石原の野郎、俺を殺すつもりか?
だが、そんなこと言っていられない。生き残るんだ!
俺は牢屋の出来る限り内側に避難し、外の様子を見守った。俺がいる牢屋から見える景色は、刑務所の労働場だ。つまり、流星……というかおそらく石原達だろうが、奴らが着地すると思われる俺の牢屋は、ほとんどここの敷地の中心部だと言っていい。故に脱出が異常に困難極まりない。
あぁ、そうか。そのための赤木さんか。なるほどね、それで石原は赤木さんに協力をしてもらおうとして……
俺の思考はとてつもない揺れと音によって吹き飛ばされた。
「ま……マジかよ……?」
俺の牢屋に4つ穴が開いている。これはやりすぎだろう。
「柏木~、無事~?」
石原の間抜けな声が聞こえた。
「お前が言うかー」
桜井のバカ声が聞こえた。
「しかし、無事に潜入できたようだな」
潜入とは言えないだろう、と思いながら狩野の頼もしい声を聞いた。
「せやかて、何でこないなことになっとんねん」
小西のうざったい関西弁が聞こえた。
坂田だけいなくね?
俺がキョロキョロしていて気付いたのであろう石原は、そのことについて話してくれた。
坂田は俺が最初に見た流れ星だったらしい。飛行機の中で、空中での進行角度の変え方を石原が教えている時に、
「馬鹿馬鹿しい。犯罪者の肩を持つのか?」
と言ったらしく、桜井を中心に飛行機から落とされたらしい。当然の処置だな。
そういや、俺が最初に見た流れ星は、地上に対して垂直だったな。見落としていた。
「この後はどうするのだ?」
狩野が石原に質問する。
「う~ん、実は決めてないんだけどね……。後は柏木が何とかしてくれるよ」
「勝手に人任せにするなクソガキ」
「まずはよー、ここから抜け出すことが最初じゃねーかー?」
人任せにし始めた石原を俺が叱り、桜井の最もと思われる言葉が続いた。
状況を確認しよう。
今、俺達は刑務所のほぼ中心部にいる。
ここから抜け出すのには、監視カメラの死角を通るしかない。
さらに、見張りもいるため、それにも気を配らなければならない。
かなり困難だな。
「あ~、もしもし赤木さん?うん、そっか。じゃ、それでお願い」
石原がケータイで何かを話終えた。
「どうしたんだ?」
「とりあえず、今から2分後にここの敷地内のブレーカーを落とすって」
監視カメラ対策か。さすが赤木さんだ。
「他に問題は見張りの人だなー」
「せやな、ブレーカー落ちたら見張りもきっと増えるで」
桜井と小西の頭がいつにもなく回転が速い。
「よし、ではまとめに入るとしよう。今からおよそ1分半でブレーカーが落ち、見張りが増員される」
「狩野、それみんな分かってる」
「俺は初めて知ったぞー」
「黙れバカ桜井」
「うるせー寝癖柏木」
「まぁ、話を戻そうや」
狩野のまとめに、俺、桜井、小西が割って入る。
だが、俺達は話し合うことなくブレーカーが落ちるのを待った。見つかったら逃げればいい。その考えを皆が持っているからだ。
“ブツン”
ブレーカーが落ちた。
「みんな行くよ!」
石原の掛け声と共に俺達は走り出す。
「ここの土地外にうちのヘリがあるから、それに急ごう!」
どうやら石原のうちのヘリで逃げ切るつもりらしい。
日本の警察を甘く見るんじゃねぇ、と言ってやろうかと思ったが、こいつが警察関係者だということを思い出し、言葉を呑んだ。
世も末だな。
「そこで何をしている!」
「くそ!見つかったか!」
警備員の言葉に狩野が舌打ちをする。
「皆の者!あちらから警備員が追跡してくるぞ!」
「わかった!じゃあこの警備員を突破しよう!」
狩野の叫びに石原が反応。
アレ?今突破って言わなかった?
「桜井!」
「おー!」
石原の声に反応した桜井が、飛び蹴りを警備員に向かってする。
その蹴りに巻き込まれ、吹き飛ばされる警備員3名ほど。
それを何回か繰り返して、警備員を撒いた俺達は、もう少しで土地の外に出れるところに来た。
しかしながら問題がある。
「でっけーなー」
桜井がアホな顔して言う。
そう、桜井の言う通り、この刑務所は土地周辺を5~6mの高い壁で覆われているのだ。
きっと脱獄防止だろう。というかそれしかあり得ない。
「石原、どうするんだ?」
たまらず俺は石原に聞く。
「狩野!桜井!」
だが、俺の言葉など聞いていないかのように石原は狩野と桜井の名を叫ぶ。
このクソガキが。後でぶっ飛ばしてやる。
「おー!」
「承知した!」
何を承知したのか分からないが、狩野と桜井は揃って高い壁に走っていった。
いや、いくらなんでも無理だろう。高く飛び上がって2人だけ刑務所の外に出たところで中に残った奴らはそのままだ。ヘリを操作して、迎えに来るのだとしても、狩野は機械に疎いし、桜井は壊しそうだし。
と思った矢先、
「「うおぉぉぉぉ!!」」
狩野と桜井の雄叫びが刑務所内を木霊した。そして、奴らはなんと、高くそびえる壁に猛烈な勢いで蹴りを連発していたのだった。
どう考えても壊れないだろ。
しかし、10秒後には、壁に大きなひびが入っていた。
そして―――。
「「うっしゃぁぁぁ!!」」
歓喜の声を上げて、喜ぶ桜井と狩野。公共物破壊するとはさすがに思わなかったぜ……。
後でどんなことが待っているのかすごく気にかかるが、今はそんなこと言っていられない。
「急ごう!」
外に出ると、すぐにヘリが見えた。
「みんな!アレに乗って!」
石原が走りながら叫ぶ。
まず桜井が飛び乗った。次に狩野。次に俺と小西。最後に石原。
うん、やはり5人が一番しっくり来る構成人数だ。ひとりいなくなって良かった。
「「「そこまでだ!!」」」
安心するのは少し早かったみたいだな。警備員が追いついてきやがった。
しかも、拳銃を構えている。
「早く飛ばんかいな!」
「何度もやってるよ!」
「燃料切れではないか!」
……なんだと!?
「さぁ、大人しくこちらに戻ってきてもらおう」
聞き慣れた影の薄い声が聞こえた。
「な、何で坂田がいんだー?」
お前でなくても疑問に思うよ。なんで警官になってるんだよ。
「せっかく今まで様子を見てきてやったのに、まさか今から6年前の犯人探しをするなんてよぉ」
そう言って坂田は顎の辺りを手で持って、顔の偽装と思われる作り物を取った。
「なぁ?藤久真二?」
その名に聞き覚えのない桜井達は何言ってのアイツ馬鹿じゃないの?って顔しているが、俺と石原はそんなことよりも先に気付いたことがあった。
「あ、あの人って……」
そうだ。今俺の本名を言った奴は、6年前の給食室のカメラ映像に映っていたひとりなのだ。
石原おそらく、何かしらの手段をもって奴の顔を見たのだろう。
それともうひとつ、俺には気にかかることがあった。
「藤久よぉ、お前がやったんだから改竄しても何もいいことなんてないんだぞ?だから戻って来いよぉ」
「うまく変装しても、中身はただの酔っ払いか?」
「さぁなぁ」
「坂田をどこにやった?」
「はぁ!?俺が坂田だって今分かってたんだろうがぁ!?」
「違う。お前は偽者だ」
相手だけでなく味方側まで驚いているようだ。
「何言ってるんだー柏木ー?」
「せやで柏木。今、アイツが坂田だってお前見てたやないか」
「まぁ、落ち着け皆の者。根拠はなんなのだ?」
「お前ら飛行機から坂田を突き落としたんだろ?何でここにいるって思わないのか?」
「「「「あ」」」」
“あ”じゃねーよ!
まぁ、要するに怪我ひとつ見当たらないのが不自然なんだ。
「ほぉ、頭の回転は良いみたいだなぁ」
いくら頭の回転が良いとしても、今の状況で脱出は相当困難だ。時間稼ぎをするにしても限界があるし、桜井と狩野は消耗しているからアテには出来ない。
そうなると、必然的に希望が集まるのは、存在が俺にとって災いと言ってもいい石原おぼっちゃまだ。
言うまでもなく、小西はアテにならないしな。
「まさか6年前の事件を警察が調べるなんて思わなかったけどなぁ」
坂田に変装していた警官が言う。
「それには同感だ。だが、俺が捕まるのはおかしい」
「いやぁ、君の事を君の同学年に聞いたら、みんなして学校爆発の犯人と言うもんだからさぁ」
「そうだとしても俺が捕まるのは間違ってる。俺はその事件の濡れ衣を着せられて少年院に入ったんだ。そのときに全ては終わったはずだ」
俺がそう言うと、目の前の警官は目つきを変えて言った。
「あんま調子こいてんじゃねーぞ?あぁ?テメェはここにいればいいんだよ!」
「そうもいかない」
「何?」
俺達が喋っている間に警官が2人増えた。コレで3人か。
そして、その2人にも俺は見覚えがあった。
例の監視カメラに映っていた残りの2人だ。
「3人揃ったか。お前ら何が目的なんだ?」
俺が聞くと先程まで俺と話していた奴が答えた。
「それはお前が一番分かっているんじゃないかぁ?」
「あの事件でお前ら3人のイタズラだとばれるのを阻止するために、俺を消すつもりか?」
「ご名答。その通りだよ、藤久君、いや、柏木君」
俺は石原達を見る。
「「「ズズズーーーー!!ズズッ!!」」」
「何でそば食ってんだテメェら!」
「いや~だって、ズズズズ、話し長いんだもん」
「その鼻水啜ってるような音出してそば食うの止めろ」
「大丈夫だよ」
「はぁ?」
石原の自信はどこから来るのだろうか。
「そこのチンピラ3人!証拠は揃ったよ!君達は3つ子で20離れたお兄さんがいるね!そのお兄さんが赤いスポーツカーを買って、柏木の家族を轢くまでの映像を人工衛星にハッキングして入手した!もちろん、もとの柏木広樹を轢くところも!」
「チッ!」
最初から人工衛星にハッキングしろよ!
「どうする?」
奴らは相談し始めた。
俺達も何か策を講じよう。
「「「ズズズズーーー!!」」」
いい加減にしろ!何だお前らそば大好き愛好家で応援隊か!?道端でそば食ってクールビズか!?
全然そんなことないんだよ!得意顔で食ってんじゃねぇよ、痛々しい!
何だこのグダグダ!?
「石原ー、おかわりー」
「わいも欲しいで」
「俺も頼む」
何だか俺だけ平和から遠ざけられているような気がする。
そうかと思いきや、石原が立ち上がって言った。
「僕、柏木が捕まったって聞いて、この刑務所のことを調べたんだ」
「それで?」
俺が聞くと、
「ここには何でか良く分からないけど、冤罪、つまり無実の人が収容されているんだ」
「……それを放っておいていいのかよ。お前弁護士志望なんだろ?」
「だからこうして助けに来たじゃないか」
殆どここを破壊していただけじゃねぇか。
そう心の中で思ったとき、ひとつの仮説が閃いた。
「オイ!」
俺は強気な声で警官3人に声を掛けた。
「……なんだ決心がついたのか?」
「それは助かるなぁ」
「へぇ、感心な奴だな」
俺が無実の罪で捕まるお人好しと思うな。
「今からお前らは捕まる」
「「「!!」」」
「お前らの他に、お前らの兄がここにいるはずだ」
動揺しながらも相手は言い返す。
「さぁね」
「しらばっくれるか……。なぁ上島」
「「「!!」」」
俺がお前らの名前を忘れるとでも思ったか。あの日からずっと忘れていなかった。
どうでもいいことほど良く忘れないと言うものだが、俺は忘れたいことほど忘れられない太刀なんだ。
「ここはお前らの父親がお前らを庇うために建て、政府からも黙殺されている場所なんだろ?」
俺の妄想から出た意見だが、石原が隣で「何で知ってるの?」って顔しているから正解だろう。
「あの日から6年が経って、他の人が証言したんだろうな。警察が少なからず動き始めてお前らは焦った。それで俺を餌に逃げるつもりだったんだろうが、残念だったな」
「そんな脅しを掛けてどうする?」
3つ子だから見分けがつかないな。左から順に上島A、上島2、上島γとしよう。
「最後まで話しを聞け、上島γ」
「誰が上島γだ」
文句言うな。他に言い方が見つからなかったんだ。
「こちらにいらっしゃるこのクソガキは日本が誇る弁護士の1人息子だ。俺達に危害を加えれば、お前達は日本を敵に回すぞ?」
もちろん適当に言っている。石原が眼鏡をいじくっているのを確認したためだ。
これで眼鏡を拭いていましたってオチなら、俺は今後一切石原との付き合いを絶つ。
「くっ!」
相手方の警官2人はさっきから何を話しているんだろうと言う顔つきをしている。
出来れば退散してもらいたいが仕方ない。
「どうするんだ、上島A、2、γ」
俺の問いに最早突っ込んでいる暇もないようだ。
「黙れ!そんなの分からないだろうが!お前達が全員死ねば時間はできる。その間に国外逃亡するから平気だぜ!」
人は冷静さを欠くと、まだ桜井のほうがマシって言う判断をするようになるみたいだな。
「そうはいかないよ!」
石原が叫ぶ。
のど痛くならないのかなぁ?
「いくよ、コレが石原家秘蔵の最新兵器!」
……兵器?
俺の中で不安が一気に膨れ上がった。
「スーパー眼鏡!!」
兵器ならざる名前だが、あいつは恐ろしいのを俺は知っている。
石原が上島達を見ると、眼鏡のレンズが上島達目掛けて飛んでいった。
いとも容易く避ける上島達。地面に突き刺さる眼鏡のレンズ。
大きな爆発を起こす眼鏡のレンズ。
「どういう仕組みだ!?」
石原の方を見るとさらに俺は驚いた。
眼鏡のレンズが次々と再生され、次々に飛んでいく。そして次々と爆発していく。
「危なっ!!」
俺にまで被爆したらどうするつもりだ?
数分後、彼らは投降したのであった。
出来すぎた話だが、俺にこういうことはいくつかあってもおかしくないのかもしれない。人には踏み込んではいけない領域がある。過去、過ち、無意識の罪。人によってそれはそれぞれだろう。ある人は家族のこと、ある人は友達のこと、ある人は人生のこと。
人それぞれ大いに悩んで、それぞれの答えを出さなければならない時が必ず来る。その答えを出す時、自分のことを考えた方がいいのかもしれないと、俺は自分の人生を通して知った。
エピローグ
休日。
晴れて刑務所を出た俺は、6年前の真相を知った。
あの時、上島達3人は給食室にある給食の唐揚げをつまみ食いしようと潜入したはいいが、給食室のおばさんに見つかってしまい、逃げる途中でガス栓に躓き、破損してしまったらしい。
それからしばらくして、おばさんがタバコを吸おうと外に出、ライターの火をつけたところ、給食室が爆発したんだそうだ。
いずれにせよ、俺に無実の罪をきせるとはどういうことだ。そのせいで俺は大切な時間を失ってしまった。昼寝の時間を。
「そんなこと言ったって、刑務所で寝てたんでしょ」
石原が俺に突っ込んでくる。
何故コイツが俺の回想に突っ込んでくるのかは、桜井の心の声具現化機のせいだ。
対象の人の心の声を出すと言う、大変プライバシーの侵害を行うものである。
“うるせーんだよクソガキ”
「思ってるなら言葉にしてよ」
「何だお前、新手のMか?」
「そんなわけないでしょ」
「そういえば坂田はどうした?」
俺も忘れていたが、坂田は飛行機から桜井を中心に落下させられたって聞いた。
どの程度の高さか分からないが、飛行機から落とされるってことは、少なくとも2m以上落ちているから、無事では済むまい。
「あぁ、坂田ね」
石原はそう言って新聞を取り出した。
「また墓場に着いたらしいよ」
新聞を見てみると、何故か全裸の坂田が掲載されていた。
「全裸で撮られるの好きだな」
「全裸になる要素ないもんね」
「ある意味怖いな。不審者勧告した方がいいんじゃないか?」
「発見した人がしたってさ」
「へぇ~」
まぁ、坂田のことは置いておいて、俺はこの一件(坂田のことじゃない)を通じて、あまり外に出ないことを誓った。
間違いは気付くまで間違い続ける ―完―