第2話
シミュレーター室と食堂は正反対の棟にあるためそれなりに距離があり且つグラウンドを突っ切るか兵舎の中を歩くかという2ルートが存在しているわけだが折角の腹ごなしという事で佐藤はグラウンドを通るルートを選択した。
「遂にここまでこれた実際に乗る機体はおそらく第一世代だろうがどんな機体にに乗せられるのだろうか?」
グラウンドで念入りにストレッチをして1周軽く走り体の調子を確かめた後に訓練速度での移動で思ったよりも早くシミュレーター室についてしまった。腕時計を見るとまだ訓練開始予定まで30分以上ある。
しかし、教官二人は食堂に顔を出してなかった為にもしかしたらという期待をこめて扉をノックする。
しばらく待ってみるが返答などの反応は無く肩を落としながら扉を開くとそこには、数多くのIMALとそれを倒していく機影があった。
シミュレーター室に佐藤が入った時には正面に広がる大画面モニターに戦場が映っていた。近接戦闘用ブレードを装備し高速移動しながら敵を切り続けるMAで殲滅していた。
TIMEUPと大きく画面に表示された後にシミュレーターから人が降りてくるが先程の戦闘に興奮した佐藤訓練兵は気付かない。
「ふむ・・・やっぱり現在のシミュレーターデータじゃ限界があるね」
「あぁ。やっぱり単騎じゃ限界があるな。状況次第ってのは分かるが基本的には・・・とどうした?佐藤訓練兵まだ訓練開始まで時間はかなりあるが」
佐藤訓練兵は山本教官に声をかけられて意識を取り戻し慌てて敬礼をする。しかし、先程の興奮はいまだ収まって無いのか少々息は荒く見方によっては情緒不安定な人に見えてしまう。
「はっ!失礼しました。あまりの素晴らしい操縦につい見とれてしまいました」
帰ってきた答えは普段の佐藤訓練兵とは思えない回答だった。その答えに苦笑しながら池田教官が突っ込みを入れる。
「こらこらそれは答えになってないから。なんで今ここに居るのか教えてくれないか?」
改めて上官から聞かれた言葉に先程の自分の言葉が回答になって無かった事を理解してしまい頬に朱が入りながら改めて回答する。
「自分は食事が早く終わったもので、教官に少しでもMAについてお話を聞かせて頂けたらと思いこちらに来た次第であります」
その言葉に池田は納得したように首を縦に振りながら入口の方を見ながらドアの後ろに隠れている彼女にも声をかけた。
「君も佐藤訓練兵と一緒と見ていいのかい?神代訓練兵」
「あはははは・・・ばれていましたか教官。私はそこの優等生程生真面目では無いです、ただ予定よりはやく時間が空いたので早く現場に来ただけです。」
そういいながら神代はシミュレーター室に入ってくる。その様子を見た池田は微笑みながら向かい入れる。
「さて、やる気があるお二人から何か質問でも?まぁそういわなくても佐藤訓練兵のほうには聞きたい事があるみたいだけど」
そう言いながら佐藤を見ると目をきらきらと輝かせながら
「教官の操作技術に感激いたしました!どうすればあのような技術を手に入れられるのですか?」
その純粋な目に困ったような顔を浮かべたのを自覚してしまう。
「そうだな。一定以上は全員ができるようになる。そこからは才能となによりどれだけ機体に長い時間乗ったかだな。まぁ訓練時間だ。あぁ・・・それに実戦経験者かどうかというのも条件にはいるぞ」
最後に付け足しをした山本の言葉に訓練生は納得する。ただの技術だけなら訓練だけでも良いだがその動きが本当に戦いで有効かどうかは実際に敵を相手にしないと判明しないのだ。そして実践で度胸があるかどうかというのもひとつの資質となる。
「さて、ちょいと早いが話は終わりだ。別にお前たちに機体の説明をしてもいいんだがどのみち次の訓練の時間に全員に言う。わざわざ二度手間をする必要もあるまい。残り10分だしそろそろ人も集まってくるからな」
山本教官の言葉に訓練生二人は敬礼し教官と一定の距離を取る。その様子を見て池田は配布資料を取りにシミュレーターの管制を行う場所の机へと向かった。
目の前には整列をして指示を待っている訓練兵達。壁にかかっている時計を見ると予定時間2分前だが全員が揃っている。
全員が期待7不安3ぐらいの割合の感情を目に宿し並んでいる。それもそうか、この適正試験の結果で今後の配置が決まるのだから。
そう考えていたら予定時刻になったようで池田が指示を出す。
「はい。それでは予定時刻になったので訓練を開始します。この基地には現在24のシミュレーターがありますので達訓練兵全員が一度に乗る分には何の問題もありません。自分の番号と同じ番号が振ってあるシミュレーターに乗り込んでください
」
池田の指示を聞き訓練兵は駆け足で自分の番号が書いてあるシミュレーターポットへと乗り込む。神代訓練兵が一番最後だったが無事にポットに乗り込んだのを確認して管制マイクをオンにして池田が追加で指示を出す。
「君達用に新規フェイスメットを用意しました。以後ソレが各自の備品になりますのできちんと管理して下さい。この訓練後はロッカーにでも入れておけばいいと思いますよ。さて、それでは全員がフェイスメットを着用しベルトを装着したら対G適正試験を開始します。こちらでヴァイタルチャックを行うためお前達はひたすら耐えてください。」
指示に従う様子が管制モニターに20人分写る。全員の装備がコンディションブルーになったのを確認して信試験を開始した。
最初は上下の振動、次に左右の振動とGに関係のない動作が続く。乗り物酔いに弱い訓練生は毎年何人か居てこの時点で地獄を見る。
しかしこの部分は慣れと訓練で克服できるため任官が遅れるが対象者向けの遅延訓練プログラムというのがあるけど今年は訓練開始時の簡易チェックでは全員余裕だったからなぁと考えていると、試験内容がでているディスプレイによると前進方向への急激な加速が始まった。
どうやら本格的に試験が始まったみたいだ。
急激な前後への加速、そう思えば左右への加速、そして急上昇急下降それらの動作の合間の急停止その動作がが繰り返される。
それらの動作が繰り返されながら前方のスクリーンではその動作に合わせた加速画像になっていてそれらがより一層の現実感を搭乗者に与えられる。
「いやぁ久しぶりで楽しいねぇ。今は…時速600キロ位かな?うんうん。さすが信利妥当なところで検査するね。」
懐かしき試験内容を思い出しながら受験生のヴァイタルを確認しているとシュミレーターの中から叫び声もちらほらと聞こえてくる。
何人かは加速によるブラッドアウト等により強制終了してるモノもある
ディスプレイからアラームが鳴ってランクアップを告げる。
「ん?ランクアップしたか。今回は高ランク者が何人かいたのか…」
今までの速度軌道に360度の回転が加わり遠心力によって体が持って行かれそうになるのをシートベルトが体に食い込み押し留める。
さすがにこの段階までくると一気に脱落者が増え残っているのは5名を切る。
「ん・・・?信利ちょっとこれを見て欲しいんだけど」
そういって管理していたディスプレイを見えるように体をズラし対象の部分をスクロールしてみせる。
「今までの試験内容のレベルからしたらこの子がここまで残るのは考えられにくいんだけど、どういうことだと思う?」
対象の人物を見て山本も理解する。ココまで(・・・・)の体力試験結果からすると最も早く脱落しても良いと考えられる人物が確かにそこには歯を食いしばりながらも青い顔をせずにGに耐えていた。
「これは、余程適性が高いのかもしれないな。なんだかんだで根性もある子だからな。先が楽しみだ」
そういいながらワラう山本からは獰猛な印象を受ける事ができ、自分の相方のその笑みを見ながら池田は苦笑していた。
大変お待たせいたしました。手軽な執筆環境を手に入れましたのでチマチマ上げていこうと思います。