第1話
設定変更により何点か修正させていただきました
長野県諏訪市日本国内の内陸部諏訪湖の畔にある諏訪基地附属第5養成所では本日2月14日今まで行っていた体づくりの訓練を乗り越えた訓練兵達がMAへのシミュレーションを開始する日であり、訓練兵達からしたら戦場に出るための階段を一つ上ったことになり午前11時現在総勢20名からなる今期の訓練兵は訓練兵の証である緑の軍服を身に纏い期待と不安に入り混じった表情をしていた。
「さて、今ここにいる貴様ら20名は無事に体づくりを終えてMAの機動に対して一応の耐性を取得したという名目だ。しかし、あくまでデーター上の記録なだけであってこれから慢心して訓練を怠ればダメになるのだから日頃からきちんと訓練するように」
整列する訓練兵の前に立ち言葉を発しているのは教官服である青色の軍服を身に纏った山本信利教官である。
「相変わらず、山本教官は釘をさすことを忘れないね。」
その背後から声が聞こえ、山本信利教官は振り向きざま目礼する。された本人はその様子を苦笑しながら手を振ることで制する。
「こんにちは。今回MAシミュレーションにまで辿り着くことができた皆さん。この後の訓練に使用するMAやシュミレーションに関する設定をすることになりました。名前は池田勝平です。よろしくお願いします」
池田勝平教官の言葉が終ると同時に、山本教官が敬礼の合図を出し訓練兵が一斉に敬礼する。その様子を確認し一歩下がり、池田教官は山本教官に場所を譲る。
「それでは、本日ヒトサンマルマルを持ってMA訓練を開始するのでシミュレーター室に集合。それまでは自由時間とするが、飯を早めに食っておけ。食いすぎたり直前に食うとつらいぞ。それでは解散!」
その宣言とともに空気が弛緩し訓練兵達は中尉の言葉通り、先にご飯を食べる為に食堂に向かって歩き出した。その背中を見ながら場に残った二人の会話が始まる。
「さて、意外と様になっているんじゃないの?山本教官?」
「まぁ。確かにここまでの分野だったら向いているんだがな。この後のMAについては、正直俺は向いていないんじゃないかと思うぞ。池田教官?」
教官という言葉を強調しながらお互い苦笑しつつ会話を続ける。しかし、訓練兵が全員居なくなったのを確認した山本が真剣な視線を池田に向ける。
「今回の訓練生は粒ぞろいだ。うまく育てれば猛者になるであろう奴らも居る」
「うん。そうみたいだね。この後のG耐性試験の結果次第だろうけど・・・さて、どうなるのかな?」
今後の訓練兵の育成カリキュラムを考えながら頭を悩ましているであろう池田を見て山本は苦笑する。
「よほどの素質が無い限り専門に特化させる必要はないだろ?あくまで基礎を教えて実戦を経験させて生き残ってから。そっからが兵士としては本番だ」
「あぁ・・・そうだね。今は僕達にできる事を精一杯しよう」
そう受け答えしながら二人はシミュレーター室へと足を向けた
その頃・・・何時もより、少し早く食堂に辿り着く機会を得た訓練兵達は普段より空いている食堂に思い思いの場所に腰をおろしながらその日のメニューを見ながら食べる物を選んでいた。
「んーまぁあんまりコッテリとしていてもつらいし癖があるものも辛いかもしれないな。すいませーんメンチカツ定食一つ。」
それは、一人の訓練兵である彼も同じであった。他の男連中は祝いにカツ丼などを食べているのが多い中、一人くどくもなくあっさりとしているわけでもないメニューを選び空いている席を探している。
男性のグループはもうすでに半分くらいが食べ終わっていて今から座るのはなかなかタイミングが合わない状態だ。かといって女性のグループに入る度胸も無い。首を巡らしながら席を探していると丁度女性グループの一つが一斉に席を空けたようでそれを幸いと対面が空いている席に体を滑り込ませた。
「悪いが、ここいいか?」
周りの女性陣に声をかけると了承の返事が返ってきたためそのまま手を合わせて食べ始めた。決して本人は急いで食べた心算は無いのだが一心不乱に食べていた為、女性陣からしたら十分早かったらしく10分後に再び手を合わせた時には周りの女性陣は目を丸くしていた。
「相変わらず、食べるの早いですね。どうぞお茶です」
本人は目を丸くされる理由に思い当たらないため席を立とうとしていたら対面に座った女性から暖かいお茶を差し出されたので、相手の顔を改めて見た。
「あぁありがとう。確か君は神代・・・・茜さんだったか。間違っていたら悪いが」
その言葉を聞いて自分用のお茶を飲みながら茜は微笑む。
「良く覚えていたわね。特に交流があったわけでもないのに」
「いや、同じ訓練していれば君を知らないやつはそうそういないとおもうけどな。それにそれを言うなら俺の言葉だ。大した交流がないのにわざわざ差し入れまでくれるんだからな。」
微笑みながら言われた言葉に対して返した言葉は、茜にとって中々都合が悪かったらしく少し機嫌が悪くなったような表情に切り替わった。
「えぇ悪かったわね、成績最下位グループの常連で。そういうなら貴方を知らない人こそいないでしょう。ここまでの身体能力訓練で常にトップクラスの佐藤孝広君?」
言葉のとげがそこかしこに出ている言葉をこめかみを震わしながら言われれば先ほどのこちらの発言に非が有ったことを認めざるを負えない。
「いや、悪かった他意は無かったんだ。神代さんはその・・・男性陣からは結構人気が高いからな。何事も一生懸命な所とかが良いとかでな。まぁお茶ありがとうなそれじゃ」
両手を上げながら言った言葉に相手は怒気も霧散したのか溜息をついて質問する。
「え?それじゃってどこか行くの?まだ集合時間まで1時間以上あるわよ?」
「腹ごなしの軽い運動して早くシミュレーター室に行こうと思ってな。運が良ければ教官達からMAについての話を聞けるかも知れないからさ。」
質問に対する答えに納得したのか頷く神代を見て孝広は食べた食器を片づけて食堂から出て行った。
そして、茜も自分のカップを片づけて自分の食事に戻った。