私の体質目当てでしょう
暑さでとち狂った。反省はしていない。
「コーリー。さっさと次のを用意しろ!!」
大勢の令嬢に囲まれて、命じるのはわたくしの婚約者。鼻を伸ばして、デレデレして近くにいた令嬢が差し出したスプーンの中身を咀嚼している。
その光景を見て限界が来た。
「婚約を破棄します」
今まで信じていた。わたくしの特殊な体質も受け入れてくれて、愛してくれたと。だけど、もう自分を誤魔化すのにも限界だった。
「おいっ。コーリー!! 何生意気なことを言っているんだっ!! お前の相手を勤まるのは俺しかいないだろう!!」
必死に呼び止める婚約者だった男に一瞥もしないで去って行く。
「待てと言っただろう!!」
乱暴に肩を掴んできた男にイラついたので、
「待ちません」
男の触れた手が一瞬で凍っていく。
「っ!!」
冷たいよりも先に痛みという形に感じられるほどの冷え切っている氷。
「早く解凍した方がいいですよ。いくら真夏でも凍傷になりますからね」
最後に向ける微笑みだったが、婚約者だった男はそんな場合ではなかったようで床に転げまわっている。
ああ、清々した。
そんな気持ちになった。
わたくしは体内で魔力が循環していて、その属性は凍気だった。
幸いなことに自身の属性の影響で自分自身が凍り付くと言うことはないが……自身の属性によって自身の身体を弱めてしまう人は実際多いからそういう意味では運が良かったのだろう。
だけど、わたくしは大丈夫でもわたくしの周りはそうではなかったようで、触れて凍り付く人も多々いた。
そんなわたくしに家族以外は遠巻きにしていたのだが、
「僕は君を一人にしないよ」
と男は距離を縮めてきたのだけど……。
「こんなことをさせるためだったなんて思わなかったわ……」
彼が求めたからいくらでも氷を作った。そう。彼はわたくしの体質を愛してくれていると思ったのに、
「それで夏の間に氷菓屋さんをして儲けるつもりだったなんて……」
ましてやそれで女性にもててウハウハ状態になりたいなんて……。
見る目なかったわ。
そんなことを思いながらずっと婚約を反対していた家族の元に帰るのだった。
短いです