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樹里ちゃん、左京とお祝いする

 御徒町樹里は、居酒屋と喫茶店と新聞販売所で働きながら、探偵もこなすメイドです。


 でも自分では、探偵をしていると思っていないため、余計に夫である杉下左京を落ち込ませてしまいます。


 


 今日はバレンタインデーです。


 そして、左京の誕生日と言うとんでもない日でもあります。


 去年は、樹里の実家で誕生日を祝ってもらった左京でしたが、今年はどうなるのでしょう?


「はーい、左京、楽しみにしてた、バレンタインのチョコだよお」


 事務所に行くなり、左京は宮部ありさにチョコを渡されました。


「何なんだよ、これは?」


 しかもそれは、剥き出しで食べかけのチョコです。


「私が食べ残したチョコだよ。私と間接キスだよ」


「アホか」


 左京はありさを無視して、自分の席に座りました。


「照れちゃって、もう。そんなに恥ずかしがらなくても、今ここには、私と貴方だけよん」


 ありさがにじり寄ります。


「鬱陶しいからそばに来るな!」


 左京は手でシッシッとしました。


「何よ、人が折角遊んであげてるのに」


 ありさは口を尖らせて自分の席に戻ります。


「俺は子供か!?」


 左京は切れました。


「左京、事件よ」


 そこへいきなり警視庁の神戸蘭警部が飛び込んで来ます。


「何だよ、お前まで!?」


 左京はムッとして立ち上がります。


「そうよ、蘭。今、私と左京はいい所なんだから、邪魔しないで」


 ありさの妄想が暴走しています。


「何言ってんのよ、ありさ?」


 蘭は本当に事件の話をしに来たようです。


「ドロントが予告状を送って来たのよ」


「何?」


 左京は仰天しました。


「ドロントは前々回出たばかりよ。早過ぎるでしょ」


 ありさがイチャモンをつけます。


 左京と蘭はそれを無視して、ソファで予告状を見ています。


 ありさは落ち込みました。


「日本中のチョコレートを盗むだって? そんな事ができる訳ないだろ?」


 左京は予告内容がバカげているので、呆れてしまいます。


「そうなのよ。だから、ドロントに盗まれる前に、はい」


 蘭はヌケヌケと左京にチョコを差し出しました。


「何してんのよ、蘭。左京は妻帯者よ」


 ありさもヌケヌケと言います。


「蘭、その予告状、お前が作ったのか!?」


 左京がムッとします。


「違うわよ、これは本物。ドロントって、恋人がいないから、嫉妬からそんな予告状を作ったのよ、見苦しいわよね」


 蘭が言いました。すると、


「ちょっと、何て事言うのよ、無駄に巨乳警部?」


と声がしました。


「その声は、貧乳か?」


 左京が辺りを見回します。


「私は貧乳じゃないわよ、ヘボ探偵さん」


「だったら、ここで私と大きさ比べしましょうよ」


 ありさが言いました。


「断る」


 ドロントは即答です。


「ほーら、やっぱり貧乳だから、できないんだ」


「うっさいわね! 私はあんたみたいにお子ちゃまじゃないのよ!」


 それを聞いて、左京と蘭が爆笑します。


「何よお、二人共、笑い過ぎ!」


 ムッとするありさです。


「取り敢えず、ヘボ探偵さん、ハッピーバレンタイン&ハッピーバースデー」


 ドロントの声がして、床の一部が開き、チョコとケーキがせり上がって来ました。


「あ、ありがとう」


 意表を突かれた左京は、素直にお礼を言いました。


「じゃあね、また今度ね」


 ドロントは去ったようです。


「何だ、あいつ、いい奴じゃないか」


 左京は不用意にチョコとケーキに近づきました。


「左京、危ないわよ。爆弾かもよ」


 蘭が引き止めます。左京はギクッとしました。


 でも、時計の音もしないようです。


「大丈夫じゃん。いただきます」


 ありさが勝手に食べてしまいます。


「うげ……」


 しかし、それはよくできた作り物でした。


「蝋でできてた……」


 ありさは涙目です。


「意地汚いからよ」


 蘭が鼻で笑います。


「貧乳め、やっぱり騙してたのか」


 左京はムッとしました。そして、思わず、笑ってしまいます。


「でもあいつ、俺の誕生日を知っているなんて、どうしてだろうな?」


「左京に気があるのよ、きっと」


 嫉妬心剥き出しで、ありさが言います。


「それは断じてない!」

 

 ドロントが床を開いて現れ、それだけ言って去りました。


 唖然とする左京達です。


 


 何だかんだ言いながらも、自分の誕生日を祝いに来てくれたありさと蘭に、左京は礼を言いました。


「ありがとう。もうすぐ、樹里が帰って来るから、みんなでパーティをしよう」


 すると、ありさと蘭は顔を見合わせてから、


「そんな事できないわよ」


と口を揃えて言い、


「じゃあね」


と一緒に事務所を出て行ってしまいました。


「はあ?」


 意味がわからない左京です。


 それと入れ替わるように樹里が入って来ました。


「只今戻りました、左京さん」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「お帰り、樹里」


 左京も笑顔で返します。


「はい、お誕生日おめでとうございます」


 樹里はプレゼントを渡し、テーブルにケーキの箱を置きます。


「ありがとう、樹里」


 左京はすでに涙ぐんでいます。


(去年は、亀島と由里さん達がいたけど、今年は二人きりか)


 つい、ニンマリする左京です。


「蝋燭に火を点けますね」


 樹里が箱を開けます。中からチョコレートケーキが出て来ます。


「そうか、合体してるんだな、二つが」


 左京が感動して言いました。


「合体? 何がですか?」


 樹里がキョトンとして尋ねます。


 左京は、


(いつもの樹里だな)


と微笑ましく思いながら、


「だからさ、誕生日のケーキと、バレンタインデーのチョコが、一緒になって、チョコレートケーキなんだろ?」


と尋ね返します。すると樹里は、


「バレンタインデーって、何ですか?」


と言いました。


(まさか、去年と同じオチか?)


 あまりの結末に、固まりそうになる左京でした。


 


 めでたし、めでたし。

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