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樹里ちゃん、またまたドロントと対決する

 御徒町樹里はメイドです。


 最近はサンタ姿での仕事が増えています。


 とうとう喫茶店もサンタバージョンを開発しました。


 居酒屋に比べると肩も出ていませんし、スカートではなくショートパンツです。


 でもそれはそれでマニアには垂涎モノのようです。


「樹里ちゃん、ボーナス、たくさん出すからね」


 マスターが言いました。初登場ですが、髭は生やしていません。


「そうなんですか」


 樹里はどうしてボーナスがたくさん出るのかわかっていません。




 そんなクリスマスづいた喫茶店に、警視庁ドロント特捜班班長の神戸蘭が来ました。


「元気、樹里?」


 蘭は笑顔で言いました。


「はい。蘭さんもお元気そうで何よりです」


「それが、あんまり元気じゃないのよね」


 蘭は項垂れてカウンターの席に着きました。


「ご注文は?」


 樹里は蘭の様子を気にする事なく、仕事をします。


「コーヒーで」


「スペシャルは如何ですか?」


 樹里がどこかの店員のように勧めます。


「じゃあ、それで」


 考える気力もない蘭は、言われるがままに答えました。


「ありがとうございます」


 樹里は笑顔全開でオーダーをマスターに伝えます。


「ドロントからまた予告状が届いたのよ」


「そうなんですか」


 蘭が元気がないのは、その予告状の内容のせいでした。


「現在来日中のさる王国の女王陛下のダイヤのネックレスを頂くって……」


「猿の王国の女王様ですか?」


 樹里が笑顔で尋ねます。


「違うわよ! とにかく、これが予告状のコピー」


 蘭はイラッとして樹里に紙を渡しました。


「どうぞ」


 マスターが蘭にコーヒーを出しました。


 蘭はそれを見てギョッとします。


「マスターより愛を込めて」


というクリスマスカードが添えられていたからです。


「他意はありません、それがスペシャルなんです」


 マスターは苦笑いして言いました。蘭はホッとします。


「とにかく、左京に渡して。頼んだわよ」


 そして伝票を見てまたギョッとします。


「ご、五千円!?」


 メニューを見ると、確かに「スペシャル 5000円」と書かれていました。


(またやられた……)


 蘭は項垂れたまま会計をすませ、店を出て行きました。


「ありがとうございました」


 樹里は深々とお辞儀をして蘭を見送りました。


 


 そして予告日の夜です。


 さる王国の女王陛下は東京一のホテルであるパリスホテルの最上階に宿泊しています。


 そのため、他の客は全員泊まれません。


 その代わり、警官隊がたくさんホテル周辺を囲んでいます。


 ロビーも警官だらけです。


 杉下左京達は女王の部屋にいました。


 但し、女王は奥の部屋にいて、左京達は控えの間のような別室です。


「下賎の者とは直接お会いにならんのだ」


 左京が文句を言うと、ボディガードのような大男が言いました。


「誰が下賎の者だ!」


 左京は切れましたが、どうにもなりません。


「ねえ、樹里ちゃんはどこ?」


 宮部ありさが尋ねます。左京は肩を竦めて、


「さあね。お前がドロントの可能性があるから、教えないよ」


「ケチ!」


 ありさはムッとしました。


 すると警察の制服を着た蘭が現れます。


 左京は久しぶりに見る蘭の制服姿に萌えました。


「誰が萌えるか!」


 地の文を読むのはやめて下さい。


「どうぞ」


 ボディガードは蘭を奥の部屋に通します。


「おい、何で蘭は入れるんだよ!?」


「うるさい、下賎の者」


 ボディガードは左京の抗議に耳を貸そうとしません。


「畜生、俺は何のためにここに来たんだ?」


 左京は歯軋りしました。


 実はここでネタバレですが、ドロントは蘭に化けているのです。


 ドロントの蘭はまんまと女王の部屋に入ってしまいました。


 その上、ボディガードは亀島馨の変装です。


 何があっても左京達を中に入れないのが彼の役目なのです。


(ホントに間抜けばかりで笑っちゃうわね)


 ドロントの蘭は女王に謁見しました。


「苦しゅうない。ちこう寄れ」


 レースのカーテンで仕切られた向こうから、甲高い女王の声がします。


「はい、陛下」


 ドロントの蘭はカーテンを払い、女王の顔を見ました。


「ええ!?」


 そこには何故か樹里が笑顔全開で座っています。しかもサンタの格好をしています。


「どうして貴女がここにいるのよ!?」


 ドロントは思わず変装を忘れて叫んでしまいます。


「ここにいろと言われたからです」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「そういう事を訊いているんじゃなくてね……」


 ドロントが言いかけた時、


「こういう事よ」


と樹里の後ろから蘭が現れました。


「えええ!? どういう事!? 貴女は睡眠薬で眠らせたはず……」


 ドロントは変装の意味をなくし、正体を現します。


「あれは樹里が変装した私なのよ。樹里には睡眠薬は効かないわ」


 蘭が得意満面で言います。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開です。蘭は畳み掛けるように言います。


「全て罠なのよ、ドロント。女王陛下なんて来ていないし、ダイヤのネックレスもないわ」


「そんな……」


 ドロントは間抜けな顔で唖然としました。


「さあ、観念しなさい、貧乳!」


「うるさいわね! まだ終わらないわ!」


 ドロントは窓ガラスを破り、ハンググライダーを開くと外へ飛びました。


「え?」


 するとそこは何故かいきなり地面です。ドロントは瀕死のカエルのように這いずった状態です。


「ここは一階よ、ドロント。エレベーターに細工したの」


 蘭が更に得意そうに言います。


「く……」


 ドロントは機動隊に取り囲まれます。


「観念するんだな、貧乳」


 左京とありさが玄関から回り込みます。


 亀島が変装したボディガードはすでに縛られています。


「まだよ。私には優秀な部下がいるのよ」


 ドロントは煙幕を張ります。


「わ!」


 左京も蘭も視界が利きません。


「いやああん、左京のエッチ」


 ありさの妄想タイムが始まります。


 煙が消えると、ドロントはいなくなっていました。


「くそ、あと一歩のところで!」


 左京が悔しがりますが、蘭はニヤッとします。


「機動隊の皆さん、服を脱いで下さい」


「はい!」


 機動隊員が皆服を脱ぎ、下着姿になります。


「そこ!」


 一人だけ脱がない隊員がいました。


「ドロント、逃がさないわよ!」


 蘭が走ります。機動隊員に変装したドロントは、


「逃げるわよ」


と言うと、ボンと破裂してしまいました。


「ええ?」


 蘭は唖然とします。左京とありさは顔を見合わせました。


「トリックよ。彼女は近くにいるはず。探して!」


 下着姿の機動隊員が付近を捜索し始めます。


 


 その頃ドロントは、近くにあったマンホールから下水道に降りて逃走していました。


「亀ちゃんが捕まったのは痛いな。何とかしないと」


 ドロントはしばらく進んでから外に出ました。


 遠くでパトカーのサイレンの音が聞こえます。


「聞こえる、ヌート、キャビー?」


 ドロントは無線機を使いました。


「はい、首領」


 どうやらドロントの部下のようです。


「しばらく潜伏するわ。迎えに来て」


「はい」


 ドロントはOLに変装し、部下を待ちました。


(神戸蘭があのメイドに会いに行ったのも罠だったのね。亀ちゃんが動いているのを気取られたのかな?)


 ドロントは一人反省会です。


「お待たせ致しました」


 その声に反応し、ドロントは車に乗り込みます。


「どちらまで?」


 ドロントはハッとして運転席を見ます。


 何故かそこには樹里がいました。


「どうして貴女が……」


 そこまで言いかけ、答えを予測してやめます。


「さよなら!」


 ドロントは車を降りて逃げました。


「またのご利用を」


 樹里は笑顔全開で見送りました。


 


 めでたし、めでたし。

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