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樹里ちゃん、船越なぎさに叱られる?

 御徒町樹里は居酒屋を中心に様々な場所で働くメイドです。


 今はクリスマスシーズンにつき、サンタバージョンです。


 しかもちょっぴりエロいので、更にマニアが増えています。


 その上樹里には「エロ」の自覚がないので、大胆です。


 


 いつものように樹里が新聞配達を終え、喫茶店に出勤した時です。


 携帯に着信です。


 親友の船越なぎさからでした。


「おはようございます」


 樹里は笑顔全開で言いました。


 するとなぎさは、


「酷いわ、樹里。私の誕生日を忘れて!」


といきなり怒り出します。


「そうなんですか?」


 樹里はなぎさの誕生日を知りません。


 何年も前から親友ですが、彼女から誕生日を教えてもらった事がないのです。


 それも妙な話ですが。


「申し訳ありません、なぎささん。今日でも遅くなければ、お祝いさせてもらいます」


「わかった。今からそっちに行くから」


 少しだけ機嫌が直ったなぎさはそう言いました。


 


 なぎさが喫茶店に来たのは、営業時間終了間際でした。


「ごめん、遅くなって。もう終わり?」


 なぎさは決まりが悪そうに尋ねます。


 樹里は笑顔全開で、


「居酒屋でお祝いしましょう。左京さんも呼びますから」


「そうなんだ」


 なぎさは嬉しそうです。


 


 そして、居酒屋でなぎさの誕生日パーティが始まります。


 樹里の夫の杉下左京にグウタラ所員の宮部ありさがついて来ました。


 左京の元同僚の神戸蘭、樹里の母親の由里、妹の真里、希里、絵里も来ました。


 今日は樹里はエロサンタではありません。


 母親と妹も来ると聞いた店長が気を遣ってくれたのです。


 樹里自身は全然気にしていませんでしたが。


「なぎさちゃん、久しぶり!」


 由里となぎさが抱き合って喜び合います。


「わ-い、なぎさお姉ちゃん!」


 真里達もなぎさに会って大はしゃぎです。


「璃里お姉さんは、出産が間近なので来られません」


 樹里が詫びます。なぎさは、


「そうなんだ。樹里もおばさんになるのね」


「はい」


 樹里は嬉しそうです。


 ところが、一人、左京は眉間に皺を寄せています。


「どうしたのよ、左京? 怖い顔して」


 すでにほろ酔いのありさが尋ねます。息が酒臭いです。


「いや、別に」


 左京は妙に思っている事がありましたが、どうでもいいと思って言いません。


「ところで、なぎさちゃんの本当の誕生日っていつだったの?」


 蘭が尋ねました。するとなぎさは蘭を見て、


「十一月二十七日です」


 左京とありさが顔を見合わせます。


 由里と真里達が顔を見合わせます。


「何だ、樹里ちゃんと一緒だったんだ」


 ありさが酒臭い口で言いました。


「そうなんですか」


 樹里はビックリしています。


「これでみんなに覚えてもらえたね、なぎさちゃん」


 蘭が微笑んで言うと、なぎさもにっこりして、


「はい」


と大きく頷いて、バッグから手帳を取り出し、


「こんなに大きくメモしておいたのに、誰もお祝い言ってくれなくて、寂しかったけど、今はとっても嬉しいです」


 カレンダーに大きな字で「お誕生日」と書かれています。


 でも、普通自分の誕生日をメモする人がいるのでしょうか?


 なぎさは忘れっぽいから仕方ないかも知れません。


 


 しばらくして、誕生日会は終了しました。


 何故かすっかり意気投合したありさとなぎさは二次会に突撃です。


 樹里は由里達を送り出し、通常業務に戻ります。


「左京、何か隠してるでしょ?」


 蘭が囁きます。


「そうなんですか」


 樹里もそれに気づいて左京を見ました。


「この前、あの子から依頼を受けた時、免許証を見せてもらって、生年月日を書き写したんだ」


「それが?」


 蘭は訝しそうな顔で左京を見上げます。左京は肩を竦めて、


「あの子の誕生日は、一月一日。樹里と一緒の誕生日じゃないよ」


「ええ?」


 蘭は仰天しました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開です。左京は樹里を見て、


「樹里はなぎささんに誕生日を教えた事はあるのか?」


 樹里はニコッとして、


「あるかも知れません」


 どうやら覚えていないようです。


「多分その時、彼女はそれをメモしたんだと思う」


「でも普通、自分の誕生日がわからなくなるなんて事、ある?」


 蘭は呆れ気味です。左京は蘭を見て、


「特別な日に生まれると、祝ってもらえないって事があるからな。彼女の場合、元日うまれだから、小さい頃からお祝いしてもらってないんだよ、多分」


「そっか」


 蘭はなぎさの事がちょっぴり可哀想になり、涙ぐみます。


「左京さん、ありがとうございます」


 樹里が唐突に言いました。左京は驚いて樹里を見、


「何だよ、樹里、突然? どうしたんだ?」


 樹里は目をウルウルさせて、


「なぎささんがショックを受けると思って、その事を言わなかったんですね」


 樹里の言葉に蘭もハッとします。


「そんなんじゃねえよ」


 左京は樹里のウルウル目にドキッとしながら顔を背けました。


 


 その頃、なぎさとありさはカラオケボックスで大盛り上がりです。


「今年のカウントダウンは、二人で決めよう!」


 ありさが泥酔状態えびぞうじょうたいで言います。


 今年の流行語大賞は「泥酔」と書いて「えびぞう」と読むになります(嘘です  作者)。


「ごめん、ありささん。私、年末年始は家にいないと」


「そうなんだ。残念」


 ありさはニヘラーとして言います。


 そして次の瞬間、一気に酔いが覚めます。


「一月一日が誕生日だから、お祝いするの」


 なぎさの笑顔が眩しくて、何も突っ込めないありさでした。

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