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樹里ちゃん、なぎさの撮影を見学にゆく

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 樹里は無事にドラマの撮影を終えました。


 第二話は、親友の松下なぎさの主演作です。大荒れになると思う地の文です。


 樹里は、第三話の主役も演じるので、次女の冴里、三女の乃里、四女の萌里を連れて、撮影スタジオに見学に行きます。


「残念だなあ」


 長女の瑠里は、バスケットボールの練習試合があるので、観に行く事ができません。


「練習試合なんか、休んじゃえば?」


 冴里が言うと、


「そうしたいんだけど、レギュラーを外れる事になるかも知れないから、無理」


 瑠里は泣く泣く練習試合に参加するため、中高一貫校へ向かいました。


 そしてもう一人、見学に行けないおじさんがいました。


「夫の杉下左京だよ!」


 正しい表現をしたはずの地の文に理不尽に切れる左京です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。


 左京は、不倫相手の坂本龍子弁護士の依頼で、不倫の調査に行くのです。


 不倫している者が不倫の調査とは、運命の皮肉だと思う地の文です。


「不倫はしてねえよ!」


 全力で地の文に切れる左京です。


「行って来ます」


 左京は項垂れたまま、仕事に行きました。たまには稼がないと、本当にヒモになってしまうからです。


「くうう……」


 痛いところを突かれたので、ぐうの音も出ない左京です。


「では、出かけましょう」


 樹里は笑顔全開で告げると、冴里、乃里、萌里を伴って、地下鉄都営三田線の水道橋駅へと向かいました。


 撮影スタジオは、その方が早く着けるのです。地下鉄に初めて乗る萌里は興奮していました。


「もり、しずかにしてね」


 乃里がお姉さんぶって言いました。


「うん」


 萌里も樹里が真顔なのに気づき、顔を引きつらせました。冴里も乃里も緊張感MAXです。


 


 やがて、四人は何事もなくスタジオに着きました。


「樹里さん、おはようございます」


 もう一人のメイドの目黒弥生の夢を奪った張本人が挨拶しました。


「そんなつもりはないわよ!」

 

 鋭い指摘をした地の文に切れる神戸かんべ葉月はづきです。名字はある人の旧姓と同じですが、全くの無関係です。


「どういう意味よ!?」


 どこかで聞きつけて、地の文に凄む平井(旧姓:神戸)蘭です。


「おはようございます、葉月さん」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「おはようございます」


 冴里と乃里と萌里が挨拶しました。


「おはよう」


 葉月は微笑んで応じました。


(何度会っても、そっくり過ぎて怖い)


 葉月は思いました。


「おはようございます、葉月さん、樹里さん」


 そこへ競馬番組のMCを降板した人が来ました。


「その斎藤じゃねえよ!」


 しつこ過ぎる地の文の名前ボケに激ギレする斎藤プロデューサーです。


「おはようございます。今日は見学させていただきます」


 樹里が笑顔全開で告げました。


「よろしくお願いします」


 葉月が言いました。


「それなんですけどね、まだ肝心の主役が来ていないのですよ」


 斎藤Pは肩をすくめました。


「え?」


 葉月は驚きましたが、


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「取り敢えず、皆さんは撮影フロアにいらしてください。私はなぎささんを待ちますので」


 斎藤Pはハンドタオルで額の汗を拭いました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「では、行きましょう」


 葉月は冴里と乃里を促して、廊下を進みました。樹里は萌里と手を繋いで歩き出しました。


「樹里さん、葉月さん、ようこそ。こちらでご覧ください」


 中にいた佐熊ディレクターが言いました。


「ありがとうございます」


 樹里達はフロアの端にある休憩スペースの椅子に案内されました。


「なぎささん、連絡が取れないんですよ。困りました」


 佐熊Dは頭を抱えています。元より、なぎさをキャスティングするのがいけないと思う地の文です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。葉月は顔を引きつらせました。


「何かあったのかも知れないですね」


 葉月が佐熊Dに言いました。


「弱ったなあ……」


 佐熊Dは腕組みをしました。


「ヤッホー、樹里!」


 するとそこへ、悪びれもせず、なぎさが現れました。


「あれ、なぎささん、斎藤さんはどうしましたか?」


 一緒に来ていない斎藤Pの事を佐熊Dが尋ねました。


「え? あの人は芸能界を引退したでしょ?」


 なぎさが誰かと勘違いしました。


「その斎藤さんじゃないです。それに引退はしていないと思います」


 突っ込みながら、フォローもする佐熊Dです。


「近道で来たから、裏の入り口を通ったんだよ」


 なぎさはケラケラ笑いながら言いました。


「そうなんですか」


 引きつり全開で樹里の口癖で応じる佐熊Dです。


 なぎさはあの人に似ているので、そのうち干されると思った地の文ですが、バックに五反田氏がいるので、それはないとも思いました。


「斎藤さんを呼んで来てくれ」


 佐熊DはADの一人に言いました。


「わかりました!」


 長身のADの男の子が走りました。


(なぎささん、樹里さんとは違った意味で、大物ね)


 葉月は苦笑いをしてなぎさを見ました。


「ところで、プロデューサーはどうしたの? 遅刻?」


 何もわかっていないなぎさが佐熊Dに訊きました。


「遅刻はしていません」


 佐熊Dは顔を引きつらせて応じました。


「なぎさお姉ちゃん、速いよ……」


 そこへ原作者の内田陽紅こともみじが来ました。息を切らせています。


「内田先生、お疲れ様です」


 佐熊Dが畏まりました。もみじは呼吸を整えながら、


「あれ程母には内緒でって言ったのに、なぎさお姉ちゃんが私を迎えに間違えて母の家に行ってしまったんです。母からのエマージェンシーですぐに駆けつけると、母は失神していました」


 項垂れました。何が起こったのか、想像に難くないと思う地の文です。


「それは大変でしたね」


 佐熊Dはもみじの苦労をおもんぱかりました。


「叔母様、身体の具合が悪いのかな? よく倒れるよね?」

 

 自分のせいだとは全く思っていないなぎさは不思議がっています。


「そうなんですか」


 それでも樹里は笑顔全開で応じました。


 もみじと佐熊Dは引きつり全開です。


 めでたし、めでたし。

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