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樹里ちゃん、情報番組に出演する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。




 今日は樹里は仕事を休み、ジャパンテレビに来ています。


 ですから、変態集団も不甲斐なくて情けない夫も登場しません。


 どこかで抗議の声を上げているようですが、全無視する地の文です。


「ようこそいらっしゃいました、樹里さん」


 樹里対策のマニュアルを暗記した一手九蔵いってきゅうぞうゼネラルプロデューサーが言いました。


「本日はよろしくお願いします」


 樹里は笑顔全開で深々とお辞儀をしました。


「ヤッホー、樹里!」


 そこへ問題の人である松下なぎさが現れました。まさにモンスターです。


 ある意味、〇〇ちゃんよりやばいと思う地の文です。


(生放送の番組にこの人を出すリスクは、テレビ史上最大のものだ)


 一手GPは辞表をスーツの内ポケットに入れていました。


(場合によっては、俺が辞めてすまないかも知れない。その時は、漏斗と浦見に責任を取ってもらおう)


 一手GPは勝手に漏斗一太アナと浦見益代アナを道連れにするつもりです。


「よろしくお願いします」


 そこへ情報番組「キッカリ!」のディレクターである神崎直美Dが挨拶をしました。


(そうだ、俺じゃなくて、神崎に辞めてもらえばいいか)


 悪巧み全開の一手GPです。予選敗退でいいと思う地の文です。


「やめろ!」


 不適切な発言をした地の文に一手GPが切れました。


「では、スタジオの方へご案内します」


 女性のADが樹里となぎさを先導しました。


「一手さん、本当に大丈夫なんですかね?」


 神崎Dが囁きました。


「大丈夫だよ」


 一手GPは微笑んで応じました。


 自分に火の粉がかからない方法を思いついたからです。


「言うな!」


 神崎D引責辞任作戦を決行するつもりの一手GPが、真実を追及しようとした地の文に切れました。


「え、何か?」


 神崎Dが不意に一手GPに問いかけたので、


「ウヒャッ!」


 飛び上がって奇声を上げてしまう一手GPです。


 神崎Dは首を傾げてスタッフ達のところへ行きました。


 樹里となぎさはコメンテイター席に着きました。


「ねえ、どうしてなぎささんがいるの?」


 何も聞かされていないメインMCの俳優の山県やまがた陽介ようすけが神崎Dに尋ねました。


 彼もまた、なぎさの恐ろしさをよく知る人物なのです。


「仕方ないんですよ、メインスポンサーの五反田会長の推しですから」


 神崎Dは苦笑いをしました。


「そうなんだ……」


 山県も五反田氏相手では何も言えませんでした。


(俺のMCも今日で終わるかも知れない)


 山県はなぎさと討死する覚悟を決めました。


「本番五分前です!」


 女性のADが叫びました。山県はMCの席へ戻りました。サブMCの漏斗アナと浦見アナもスタンバイしました。


「本番一分前!」


 女性ADが言いました。


「五秒前!」


 神崎Dが右手を掲げます。


「ごめん、おしっこ!」


 なぎさがいきなり立ち上がり、席を外してしまいました。唖然とする樹里以外の出演者ですが、


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開です。


「本番、始まりました!」


 女性ADが、呆気に取られている山県にカンペを出しました。


「あ、ああ、皆さん、おはようございます。今日も始まりました、『キッカリ!』です。よろしくお願いします」


 山県が頭を下げると、漏斗アナと浦見アナも頭を下げました。


「本日は、ゲストコメンテイターに御徒町樹里さんと松下なぎささんをお迎えしております」


 浦見アナが微笑んで告げましたが、


「ごめーん、おしっこだけじゃなくて、う○こもしたから、時間かかっちゃった!」


 なぎさが大声で言って入って来たので、浦見アナと山県は唖然としました。


 でも、サイコパスの漏斗アナは微笑んでいます。


「私はサイコパスじゃありません。サイコパスはあの知……」


 危ない発言をした漏斗アナの言葉を消しゴムマジックで消去した地の文です。


「そうなんですか」


 樹里はそれにも関わらず、笑顔全開で応じました。


 それをムスッとした顔で見ているレギュラーコメンテイターの芸人の布村ぬのむらヨシです。


(こいつのせいで、唯一のレギュラーがなくなったら、どうしてくれるんだ、神崎ちゃん!)


 布村の怒りの矛先は神崎Dに向かいました。


(でも、デートしてくれたら、不問にするけどね)


 嫌らしい笑みを浮かべて、神崎Dを見る変態芸人です。


(きも)


 神崎Dは苦笑いをして応じました。


「先程、番組中、不適切な発言がありました事をお詫び致します」


 素早く謝罪をする浦見アナです。隣で微笑む漏斗アナが怖いと思う地の文です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「ダメだよ、布村さん、変な事言ったら」


 なぎさはケラケラ笑って布村を見ました。


「ははは」


 布村は怒りをグッと堪えて微笑みました。


(でも、可愛いな。デートしてくれたら、許す)


 更に変態を発動する布村です。


(布村さん、メインスポンサーにお願いして、降板させよう)


 神崎Dはなぎさへのセクハラをでっち上げて、布村を辞めさせる計画です。


「では、今日の一番記事です」


 山県はそんな裏の動きには全く気づかず、番組を進行しました。


 


 こうして、その後は特段変わった事もなく、番組は終了しました。


「一手さん、番組始まって以来の事ですよ! メールが殺到していて、大変です」


 女性APが告げました。


「え? 苦情?」


 一手GPは冷や汗を掻きました。


「違います! 御徒町樹里さんと松下なぎささんをレギュラーにして、布村さんを辞めさせてくださいというメールがたくさん来ています!」


「はあ?」


 一手GPは目を見開きました。


「どういう事だ?」


 一手GPは女性APに尋ねました。


「布村さんが嫌らしい目で樹里さんとなぎささんを見ていたのが気持ち悪いというメールなんです」


 一手GPはそれを聞いて項垂れました。


(何してるんだよ、布村? お前、素人かよ)


 一手GPは腕組みをして、


「わかった。布村さんには降板してもらう。私から話をするよ」


 それを聞いていた神崎Dは思わずガッツポーズをしました。


「樹里、楽しかったね! また出ようね!」


 何も知らないなぎさが嬉しそうに樹里に話していました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


 めでたし、めでたし。

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