表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/839

樹里ちゃん、誕生日を祝ってもらう

 御徒町樹里は居酒屋でサンタバージョンで働くメイドです。


 今はメイド服を着ていないので、メイドではないのかも知れません。


 樹里の名ばかりの夫である杉下左京は、樹里に誕生日のお祝いをする事を話すつもりでしたが、樹里の話に驚愕して、言い出せなくなりました。


 樹里の誕生日は、十一月二十七日です。


 左京はこっそりプレゼントを買って来ました。


 そして探偵事務所に行きました。


「何ニヤニヤしてるのよ、左京?」


 先日の一件で、ダメ所員から卒業した宮部ありさが言います。


「樹里の誕生日なんだ」


 言ってしまってからハッとする左京です。


「あら、いつ?」


「あ、明日」


 左京は項垂れています。


「何よ、その反応? 私には内緒にするつもりだったな!?」


 ありさはムッとして左京を睨みます。


「お前、ロクな事しないからだよ! 高校の時の事、忘れたのか!?」


 左京はありさを睨み返します。


「あはは、忘れたわん」


 ありさは笑って誤魔化そうとします。


「ケーキの中にまんじゅう入れやがって」


 左京が言うと、ありさは、


「もうそんな事しないから、私も参加させてよ。樹里ちゃんにはいろいろとお世話になってるからさ」


「絶対だな?」


 左京はまだ疑っています。


「絶対よ」


 ありさも真顔で応じました。


「それから、樹里には内緒だぞ。ビックリさせるんだからな」


「はいはい」


 ありさは肩を竦めて言いました。 


 


 ありさは左京との約束をした後、すぐに事務所を出ます。


 営業に行くフリして、樹里にばらしに行くのです。


「左京め、私を除け者にしようとした罰よ」


 ありさは樹里がいる居酒屋に着きました。


「いらっしゃいませ」


 樹里がサンタの格好で現れたので、ありさの悪戯心が増大します。


「樹里ちゃん、お願いがあるんだけど」


「何でしょうか?」


 樹里は笑顔全開です。


 


 そして誕生日当日です。


 樹里は居酒屋を早上がりして、十時頃事務所に来る事になっています。


 事務所では、母親の由里や妹達、そして姉の璃里も参加して飾り付けをしてくれました。


「じゃあねえ、左京ちゃん」


 由里達は樹里が来る前に事務所を去ります。


「ああ、一緒にお祝いしましょうよ、お母さん達も」


 左京が止めましたが、由里は、


「そんなの、野暮ってものよ、左京ちゃん」


「そうですよ。二人きりでお祝いして下さい」


 お腹の大きくなった璃里も樹里と寸分違わぬ笑顔で言います。


「あ、ありがとうございます」


 由里と璃里は、嫌がる真里、希里、絵里を引き摺るようにして帰って行きました。


「ありさの奴も、結局いなくなったし……」


 左京は何故かドキドキして来ました。


(樹里と二人きり……)


 妄想で鼻血が出そうな左京です。


 


 そして夜の十時。樹里が事務所に到着しました。


「遅くなりました、左京さん」


 樹里はロングコートを着て現れました。


「あれ? そんなの持ってたのか?」


「ありささんに借りました」


 樹里が笑顔全開で言います。


「あの、これ?」


 樹里は周りを見回します。


「HAPPY BIRTHDAY JURI!」と書かれた横断幕があります。


 たくさんのモールと電飾で彩られた事務所は、別世界のようです。


「誕生日おめでとう、樹里」


 左京は背中に隠していたラッピングされた箱を差し出します。


「左京さん」


 樹里が笑顔のまま涙ぐみます。


「さあ、座って。蝋燭に火を点けるから」


「はい」


 樹里はコートを脱いでソファに座ります。


「ブ!」


 左京は鼻血を垂らしてしまいました。


 樹里はサンタの服のままだったのです。ムチムチバージョンの方です。


 ありさの悪戯です。樹里はそのままの格好で帰るように言われたのでした。


「早く火を点けて下さい、左京さん」


 樹里が笑顔全開で言いました。


「あ、ああ……」


 左京は貧血を起こして倒れてしまいました。


「左京さん?」


 樹里は驚いて左京に駆け寄ります。


「ハッピバースデイ、樹里」


 左京は意識が朦朧とする中、それだけ言いました。


「ありがとうございます、左京さん」


 樹里が左京にソッと口づけしたのを左京は知りません。


 


 めでたし、めでたし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ