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樹里ちゃん、夏休みの計画を立てる

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 今日は日曜日です。長女の瑠里、次女の冴里、三女の乃里は夏休みに入っています。


 四女の萌里は、保育所に行っているので、夏休みはなく、お盆休みがあるだけです。


「いいなあ、おねえちゃんたちは。もりもおやすみしたい」


 萌里は口を尖らせました。


「萌里、わがままを言わないでください」


 樹里が真顔全開で告げたので、


「はい!」


 萌里だけではなく、そばにいた乃里まで直立不動で応じました。


(樹里の真顔、怖い)


 離れて見ていた不甲斐ない夫の杉下左京も怯えていました。


 早く離婚すればいいのにと思う地の文です。


「やめろ! 離婚は絶対にしないぞ!」


 血の涙を流して地の文に切れる左京です。


 樹里は、瑠里、冴里、乃里に夏休み中の過ごし方の予定を作らせました。


 瑠里はバスケの練習で、ほぼ毎日学校へ行く事になっています。


 ボーイフレンドのあっちゃんとは更に会う機会が減り、自然消滅寸前です。


「そんな事ないよ!」


 破局させたい地の文に切れる瑠里です。


 冴里は、ボーイフレンドの松下海流まつしたわたると一緒に勉強をする日をたくさん予定していますが、恐らく半分以上は嘘だと思う地の文です。


「違うよ! わっくんはまじめだから、絶対に勉強するよ!」


 図星を突かれたので、狼狽うろたえながら地の文に切れる冴里です。


「一応、なぎささんに確認します」


 樹里は笑顔全開で告げました。


「そうなんですか」


 顔を引きつらせて応じる冴里です。


 乃里は毎日漢字の書き取りをする事にしています。


 三人の中では一番真面目なので、信用する地の文です。


「何よ、その差は!?」


 依枯贔屓えこひいきが酷い地の文に見事にハモって切れる瑠里と冴里です。


「では、お盆休みは、パパの家のお墓と美玖里お祖母ちゃんの家のお墓に行きます」


 樹里が言いました。


「はい」


 瑠里、冴里、乃里、萌里が揃って応じました。


「ううう……」


 左京はお盆休みは仕事が入っており、どうしても変更できないので、一人で別日にお墓参りです。


 お盆に不倫旅行とは、バチ当たりです。


「違う!」


 捏造を繰り返す地の文に切れる左京です。


「他にも、予定が合えば、プールへ行ったり、ハイキングに行ったりしましょう」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「ママ、私は部活を優先したいので、行けないと思う」


 瑠里が言いました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「瑠里の思うようにしなさい。ママは止めたりしませんから」


 樹里は更に笑顔全開で告げました。


「ありがとう、ママ」


 瑠里は笑顔全開で応じました。


(ああ、瑠里、パパも応援しているよ)


 涙ぐんで思う左京です。気持ち悪いです。


「うるさい!」


 チャチャが生きがいの地の文に激ギレする左京です。


「樹里、俺も急な仕事が入ってしまって、迷惑かけるかも知れないけど……」


 左京は恐る恐る言いました。


「大丈夫ですよ、左京さん。安心してお仕事頑張ってください」


 樹里は笑顔全開で応じました。


(それはそれで寂しい……)


 父親が不在でも何の支障もないと言われたも同然なので、愕然とする左京です。


 これでいつでも樹里はシングルになれると思う地の文です。


「かはあ……」


 心ない地の文のせいで、血反吐を吐いてのたうち回る左京です。


「なるべくなら、ルーサを連れて行けるところがいいね」


 瑠里が言いました。ルーサもおじいちゃん犬になって来たので、心配なのです。


「ワンワン!」


 それを聞きつけて吠えるルーサです。


「年寄り扱いするな!」


 そう言っているかのようです。


「そうですね」


 樹里は笑顔全開で応じました。おじいちゃんなら、もう一人いますね。


「俺はまだ四十代だよ!」


 すぐに自分の事だとわかり、地の文に切れる左京です。


 織田信長の享年と同じですね。


「やめろ!」


 何故か、非常に嫌な予感がして怯えてしまう左京です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。


「明日から、しばらく休めないから、外食しようよ、パパ」


 瑠里が気を遣って言いました。でも、外食の話をパパにするのは酷だと思う地の文です。


「ううう……」


 今月は、また六千円しか稼げていない左京は大きく項垂れました。


「そうしましょう、左京さん」


 樹里が助け舟を無意識に出してくれました。


「そうだな」


 顔を引きつらせて応じる左京です。


 


 こうして、一家は近くのファミリーレストランへ向かいました。


「ヤッホー、樹里! 奇遇だね、こんなところで」


 ファミレスへ行くと、なぎさ一家が来ていました。


「ご無沙汰しています」


 なぎさの夫の栄一郎が左京と樹里に挨拶をしました。


「わっくん!」


 冴里は予定していなかった海流と会えて興奮気味です。


「さ、冴里ちゃん、しばらく」


 海流は顔を引きつらせて応じました。何だか、五反田家の若夫婦に似ていると思う地の文です。


「何よ!?」


 地獄耳で聞きつけて、地の文に凄む五反田麻耶です。


 胎教に悪いので、あまり怒らない方がいいと思う地の文です。


 樹里達はなぎさ達とテーブルを一緒にして座りました。


 冴里は海流と並んで座りました。円卓なので、左京は樹里となぎさに挟まれるように座りました。


「その言い方、誤解を生むだろう!?」


 いけずな地の文に切れる左京です。


「左京さんと並んで座ると、ドキドキしちゃうよ」

 

 悪気なく言うなぎさです。


「そうなんですか」


 顔を引きつらせて異口同音に言う左京と栄一郎です。


「そうなんですか」


 樹里も他意なく笑顔全開で応じました。



 めでたし、めでたし。

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