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樹里ちゃん、入学式に出席する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 今日は、長女の瑠里の中学の入学式です。


 入学式に出席できるのは、一家族二名までなので、樹里はもちろん出席ですが、左京はドレスコードに引っかかって、出禁です。


「そんな事ねえよ!」


 レンタルで間に合わせようと考えていた左京ですが、


「これから、冴里、乃里、萌里の入学式や卒業式に出席するのですから、一式買い揃えましょう」


 樹里の一声で、礼服を一揃え新調しました。もちろん、お金を出したのは樹里なのは内緒にする地の文です。


「内緒にしてくれ!」


 容赦なくバラしてしまう地の文に泣きながら訴える左京です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。


「何だい、私は出席できないのかい?」


 樹里の母親の由里は不満そうですが、


「お祖母ちゃんに言うわよ」


 樹里の姉の璃里に言われ、すごすごと引き下がりました。


「では、行って参ります」


 樹里と左京は、瑠里と共に都立本郷中等教育学校へと出かけました。


「歩いて行けるところに学校があるのは便利だな」


 左京が言いました。


「普通はそうでしょ?」


 瑠里が言うと、


「パパの中学校は自転車で一時間かかるところにあったんだよ」


 左京が田舎自慢をして来ました。


「自慢はしてねえよ!」


 事実をありのままに表現したはずの地の文に理不尽に切れる左京です。


「ふうん」


 瑠里は全然興味なさそうに応じました。


「ううう……」


 素っ気ない態度の瑠里に落ち込む左京です。


「はっ!」


 瑠里は樹里が真顔全開で自分を見ているのに気づきました。


「パパは大変だったんだね」


 慌ててフォローする瑠里です。


「あ、ああ……」


 瑠里が話しかけてくれたので、すぐに元気になる単細胞な左京です。


「うるせえ!」


 真実を語った地の文にまた切れる左京です。


 


 東京フレンドランドの脇を抜けると、都立本郷中等教育学校の校門前に出ました。


「じゃあね」


 校庭に入ると、瑠里達新入生は各自のクラス分けのために校舎に向かいました。


 樹里と左京は、新入生より先に式典が行われる講堂へ行きました。


「おお、お待ちしておりました、杉下さん」


 そこへ宮◯監督が現れました。


「違うよ! 事務長の熊本くまもとかけるだよ!」


 なかなか引退しない監督と間違えられた熊本事務長が地の文に切れました。


「お待たせして申し訳ありません」


 樹里は深々と頭を下げました。


「いや、その、そんなつもりではなくてですね……」


 前回に引き続き、樹里の取り扱いマニュアルを持っていない熊本事務長がやらかしました。


「ようこそおいでくださいました、杉下さん。さあ、どうぞこちらへ」


 そこへ横から現れた三角眼鏡の教頭先生が告げました。


「そうなんですか」


 樹里は、唖然とする事務長を置き去りにして、教頭先生と左京と共に講堂へと向かいました。


「ああ、お待ちください、杉下さん!」


 涙ぐんで樹里達を追いかける熊本事務長です。




(残念だなあ)


 その頃、瑠里は教室に入っていました。ボーイフレンドのあっちゃんとはクラスが違っていて、がっかりしています。


「あら、杉下さん、貴女と同じクラスなのね。よろしくね」


 見知らぬ女子が馴れ馴れしく話しかけて来ました。


「小学生の時、六年間もクラスが一緒だった伊藤陽菜いとうはるなよ!」


 自己紹介をしながら地の文に切れる陽菜です。


「ああ、近藤さん、久しぶりね」


 瑠里は早速名前ボケをかましました。


「その春菜じゃないわよ! 伊藤よ!」


 涙ぐんで瑠里に切れる陽菜です。


「杉下と同じクラスで嬉しいよ」


 すると更におかしな男子が言いました。


「俺は小学一年の時だけ同じクラスだった事がある渡部悠斗わたべゆうとだよ!」


 長い間謹慎していた悠斗が地の文に切れました。


「その渡部じゃねえよ!」


 名前ボケを続けた地の文にもう一度切れる悠斗ですが、


「はっ!」


 我に返ると、瑠里も陽菜も他の新入生達もすでにいなくなっていました。


「わああ、置いていかないでよお!」


 泣きそうになりながら、教室を飛び出す悠斗です。


 


「おお、来たぞ」


 パイプ椅子に座ってキョロキョロしていた左京が、在校生の演奏で入場して来る新入生に気づきました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。講堂の正面入り口から、瑠里達新入生が入って来ました。瑠里達は用意されたパイプ椅子に着席しました。


 しばらくして、係の先生が入学式の開会を告げました。


 校長先生が壇上に現れ、眠くなるような挨拶の言葉を述べましたが、割愛する地の文です。


 新入生の名前が呼ばれ、皆元気よく応えました。その後、更に眠くなる来賓の方々のお祝いの言葉がありました。


 涙を呑んでカットする地の文です。


「瑠里、立派になったなあ」


 左京は瑠里を見て泣いていました。


「はい、左京さん」


 樹里がハンカチを手渡しました。


「ありがとう、樹里」


 左京は涙を拭いました。


 入学式は滞りなく終了し、樹里と左京は先に帰宅しました。


 瑠里は一旦教室に戻り、渡された教科書に名前を書いたりしました。


「私が皆さんのクラス担任の村崎真紘むらさきまひろです。よろしくお願いします」

 

 どこがで聞いた事がありそうななさそうな名前の女性の先生が言いました。


「これから一年間、楽しくしましょうね」


 若くて可愛らしい先生なので、男子達は嬉しそうです。女子の中には気に食わなさそうな顔をしている子もいました。


(あの御徒町樹里の娘がいる。格好のイジメのターゲットだわ)


 瑠里を睨んでいる女子が一人いました。名前はまだありません。


「誰が吾輩は猫であるだ!」


 地の文のボケに切れる女子です。名前は清原きよはら納言なことです。


 波乱の展開にワクワクが止まらなくなる地の文です。

 

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