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樹里ちゃん、麻耶の自称親友の企みを阻止する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 樹里の姉の璃里が、不甲斐ない夫で有名な杉下左京の探偵事務所に来るようになりました。


 璃里との不倫を夢見ていた左京は大喜びです。


「ち、違うぞ!」


 動揺しながら地の文に切れる左京です。


「そうなんですか」


 それにも関わらず、樹里は笑顔全開で応じました。


 璃里が樹里と瓜二つなので、頭の回転が悪い高輪姉妹は探偵事務所に近づけなくなっています。


「頭の回転は速いわよ!」


 どこかで地の文に切れる高輪姉妹です。


「御徒町樹里も双子なのかしら?」


 姉の姫子が顎に手を当てました。妹の侯子きみこは、


「かも知れないわね。私達が左京を陥れようとした時、二人で現れたから、一人二役ではないと思うわ」


 母親の由里と璃里を見たのに、双子だと思っているおバカさんです。


「おバカさんじゃないわよ!」


 地の文に続けざまに切れる姫子と侯子です。


「取り敢えず、御徒町樹里は強敵だから、その前にあの弁護士のおばさんを痛い目に遭わせるのよ」


 姫子がまるで大村美紗のような顔になりました。


「また誰かが私の悪口を言っているようだけど、気のせいなのよ!」


 どこかで必死に自分に言い聞かせている美紗です。


 


「ふう……」


 左京の事務所へ向かう途中で、溜息を吐くおばさん弁護士です。


「おばさんじゃないわよ!」


 心ない事を言った地の文に切れる坂本龍子弁護士です。


(璃里さんがいると、ちょっと緊張しちゃうから、いない時に行きたいんだけどなあ)


 相変わらずイジイジしている龍子です。


(やっぱり、他に好い人を探した方がいいのかなあ)


 そんな事を考えていると、樹里の家の前に着いてしまいました。


「あ、龍子さん、おはようございます」


 すると、庭の掃除をしていた璃里に見つかってしまいました。


「ああ、お、おはようございます」


 汗まみれで挨拶を返す龍子です。


「所長は中にいますよ。どうぞ」


 璃里ににこやかに誘導されて、龍子は事務所へ入りました。


「おはようございます、龍子さん。約束より三十分程早いですね」


 左京は所長の席から立ち上がりました。


「おはようございます。そ、そうですか?」

 

 龍子はスマホの時計を確認しました。


(これじゃあ、左京さんに会いたくて急いで来たみたいじゃないの……)


 龍子は赤面すると、


「あ、あの、これが今回の依頼人の資料です。日時はもう決めてありますので、よくお読みください。では」


 逃げるように事務所を出て行きました。


「え、龍子さん、お茶……」


 給湯室から璃里が出て来て、呼び止めようとしましたが、龍子はそのまま去ってしまいました。


「どうしたんでしょうか? いつもなら、長居するのに」


 左京が悪気なく本音を口にしました。


「私、龍子さんに嫌われてるみたいですね」


 璃里が寂しそうな顔をしました。


「そんな事はないと思いますよ。そもそも、お義姉さんが龍子さんを連れて来てくれたんじゃないんですか」


 左京は過去を振り返りました。あれから十年経っています。


「そうでしたね」


 璃里は苦笑いをしました。


 龍子さんとは縁を切って、これからはお義姉さんと不倫だ! 左京は心に決めました。


「決めてねえよ!」


 勝手に話を展開しようとした地の文に切れる左京です。




「貴方、年上が好みだったわよね。この人なんかどう?」


 姫子と侯子はカフェで男と会っていました。大学の同級生のようです。長髪をオールバックにして、そろそろ寒いのに半袖のTシャツとジーパンという出立ちです。目がギョロついており、ヤバさ満点です。


 姫子が見せたのは、龍子の隠し撮り写真です。裁判所から出て来たところを写したものです。


「おお、俺の好み! 三十代だよね? しかも、この眼鏡もいい! 華奢そうなのに、胸はでかいようだ」


 龍子の写真に食いつく変態男です。龍子の胸はおっぱい体操で大きくなったのは内緒です。


「男日照りが続いているから、貴方が声をかければ、喜んでついて来るわよ」


 侯子がニヤリとしました。


「弁護士だから、お金も持っているわよ」


 姫子が更に煽りました。


「そうかそうか。で、もちろん、男を知らないよね?」


 男が嫌らしい顔になりました。


「それはわからないわ。直接訊きなさいよ」


 実は男と付き合った事がない姫子は顔を赤らめました。


「そうだねえ。ありがとう、姫子ちゃん、侯子ちゃん。俺、頑張るよ」


 男はヘラヘラして応じました。


 


 夜になりました。


 龍子は、駅への路地を一人で歩いていました。


(おお、写真よりそそるスタイルだな。細くて、可愛い!)


 そこへ変態男が現れ、後を尾けて行きます。龍子は溜息を吐きながら歩いているので、男の接近に全く気づいていません。ピンチです。左京は何をしているのでしょうか? 仮にも長く不倫をしていた女性が危ないのに。


「不倫はしてねえよ!」


 どこかで地の文に切れる左京です。


「龍子さん!」


 変態男は一気に近づくと、龍子に背後から抱きつきました。


「いやああ!」


 龍子は絶叫しました。何が起こっているのかわからず、震えています。


「怖がらなくていいよ、龍子さん。俺が優しくしてあげるから。ね?」

 

 変態男は龍子の右の耳に息を吹きかけました。


「やめて、お願い……」


 龍子は恐怖のあまり、涙を流しました。


「心配しないで。痛くしないから」


 変態男は龍子の首筋に指を這わせました。龍子は全身総毛立ち、硬直しました。


「え?」


 ところが、変態男は背後から襟首を掴まれ、あっという間に背負い投げをされて、地面に叩きつけられました。


「ダメですよ、嫌がる女性にそんな事をしては」


 樹里が笑顔全開で男を見下ろしました。


「す、すびばせん……」


 変態男は涙ぐんでそれだけ言うと、気絶しました。


「大丈夫ですか、龍子さん?」


 樹里が笑顔全開で龍子を見ました。


「あ、はい……」


 龍子は腰が抜けてしまい、その場にしゃがみ込んでいました。


「さあ、行きましょう」


 樹里は龍子を立ち上がらせると、男を置いて、その場を去りました。


(どういう事よ!? どうして、御徒町樹里が現れたの!?)


 物陰からそれを見ていたおバカ姉妹は衝撃を受けていました。


 その路地は、樹里の通勤路なのを知っている地の文です。


 めでたし、めでたし。

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