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樹里ちゃん、左京を狙われる

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


「姉さん、こればかりは譲れないわ。私は好きでもない杉下左京とキスをしたのよ! あの男をたぶらかす権利は、私にあるわ!」


 五反田タワーマンションの一室で、高輪◯リンスホテルが双子の姉のゲートウェイに言いました。


「違う!」


 さすが、双子です。見事なハモリで地の文に切れました。


「私は、侯子きみこ!」


「私は姫子!」


 更に切れる侯子と姫子です。


「貴女はそんな事を言っていながら、実は左京に惚れてしまったのでしょう? 丸わかりよ、侯子」


 自分も左京に惚れてしまったのは内緒にして妹を責めるゲスな姫子です。


「うるさいわね!」


 核心を突いた地の文に顔を真っ赤にして切れる姫子です。


(侯子め、左京とキスをした事を私に自慢したいのね。妹のくせに生意気だわ)


 姫子は嫉妬心剥き出して侯子を睨みつけました。


 いつもと違う始まりにワクワクしてしまう地の文です。


「争っている場合ではないわ。左京の妻の樹里より、もっと邪魔な存在があるのよ」


 侯子は姉を睨み返しました。


「邪魔な存在? 誰よ、それは?」


 姫子は眉をひそめました。


「弁護士の坂本龍子。どうやら、以前、左京と愛人関係だったらしいわ」


 侯子が言いました。


「違う、断じて違う!」


 どこかでしばらくぶりに某進君の真似で切れる不甲斐ない夫日本代表の左京です。


「日本代表じゃねえよ!」


 アジア代表と言って欲しい左京が地の文に切れました。


「それも違う!」


 肩で息をしながら、地の文に続けて切れる左京です。


 では、地球代表ですか?


「誰が孫左京だ!」


 すでに誰も知らないお話を引き合いに出して地の文に切れる左京です。


「ううう……」


 渾身のボケを全否定された左京は項垂れました。


「あの女、瞬時に私の演技を見抜いたわ。侮れないわよ」


 大根役者の侯子が姫◯亜◯気取りで言いました。


「誰が◯ラスの◯面だ!」


 侯子が著作権を侵害しそうな事を言ったので、伏せ字にする地の文です。


「貴女の演技に気づくなんて、相当なものね」


 同じく大根役者の姫子が言いました。


「うるさいわね!」


 語彙力がない姫子が一言切れました。


「じゃあ、こういうのはどう?」


 姫子がまるで大村美紗のような顔で言いました。


「また誰かが私の悪口を言っているような気がするけど、幻聴なのよ!」


 どこかで叫ぶ美紗です。


「どういうの?」


 侯子が尋ねました。


「二人で同時に左京を誑かすのよ。あの男、ロリコンらしいから、すぐに落とせるわ。私達の美貌でね」


 姫子はニヤリとしました。侯子もニヤリとして、


「いい考えね」


 大根同士で具にもつかない迷案を思いつくおバカ姉妹です。小声で言ったので、二人には聞こえていません。


「早速、作戦会議よ」


 姫子は侯子と声を低くして話し合いました。地の文には聞こえないので、チャチャが入れられませんでした。


 決して、淀殿の事ではありません。




「ありがとうございました」


 樹里は何事もなく五反田邸に到着していました。台詞なしで去って行く昭和眼鏡男と愉快な仲間達です。


「樹里さーん!」


 そこへおっちょこちょいの目黒弥生が走って来ました。


「誰がおっちょこちょいだ!」


 的確な表現をした地の文に理不尽に切れる弥生です。


「おはようございます、弥生さん」


 樹里は笑顔全開で挨拶をしました。


「おはようございます。麻耶お嬢様からお言伝ことづてを預かっています」


 弥生は樹里に一度開けられた形跡がある封書を渡しました。


「開けてないわよ!」


 動揺して地の文に切れる弥生です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で受け取りました。


「何が書かれているんですか?」


 知っているのに白々しい質問をする弥生です。


「だから、見ていないわよ!」


 涙ぐんで地の文に抗議する弥生です。


「はっ!」


 我に返ると、樹里は玄関に向かっていました。


「樹里さん、置いて行かないでください!」


 泣きながら樹里を追いかける弥生です。


 


 樹里は更衣室で麻耶からの手紙を読みました。


『樹里さん、私の親友を名乗る高輪何とかさんは情報によると、危険人物です。くれぐれも気をつけてください』


 麻耶が危険人物と言うのですから、相当危ないと思う地の文です。


「言い方にとげがあるわよ!」


 グループ本社の会議室で地の文に切れる麻耶です。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で読み終えると、封書をバッグに入れました。


「何が書かれていたんですか?」


 しつこい弥生が訊きました。


「内緒です」


 樹里は笑顔全開でけんもほろろな回答をしました。


「そうなんですか」


 弥生は引きつり全開で樹里の口癖で応じました。




「いらっしゃいませ……」


 左京は笑顔で事務所のドアを開きましたが、そこに侯子と姫子がいたので顔が引きつりました。


「また君達か……」


 左京がドアを閉じようとすると、


「意地悪しないでよ、探偵さん」


 侯子が左京を押し退け、姫子が左京に抱きつきました。


「探偵さん、若い女が好きなんでしょ? だから、あんなに歳の離れた奥さんと結婚したのよね?」


 侯子がドアを後ろ手に閉じ、ロックをしました。


「な、何のつもりだ?」


 左京は好みのタイプの美女二人に迫られて、鼻の下を伸ばしていました。


「好みのタイプじゃねえし、鼻の下も伸ばしていねえよ!」


 見事な深層心理の解析をした地の文に切れる左京です。


「それとも、弁護士のおばさんが好みなの、左京さん?」


 姫子と侯子にステレオ攻撃をされた左京は気を失いそうです。


 若い子もいいが、龍子さんも捨て難い。


 悩む左京です。


「悩んでねえよ!」


 更に解析を進めた地の文に猛烈に切れる左京です。


「左京さん、やっぱり若い子でしょ?」


 姫子と侯子の吐息が左京の耳にかかりました。


「ふああ……」


 脱力して、ソファに座ってしまう左京です。


「左京ちゃん、いる?」


 インターフォンから樹里の母親の由里の声が聞こえました。


「鍵がかかってるね? 留守かな?」


 由里が言いました。


「いえ、いるはずよ。明かりが点いているわ」


 これは樹里の姉の璃里の声です。そして、ドアのロックが解除され、二人が入って来ました。


「げ、御徒町樹里!」


 由里と璃里が樹里に見えたおバカ姉妹は仰天して左京から離れました。樹里が柔道の有段者だと知っているからです。


「でも、何故二人?」


 姫子と侯子は同時に言いました。


「あんた達、私の左京ちゃんに何してるのさ?」


 由里が凄みました。隣で呆れている璃里です。


「ひいい!」


 熊に出会った時と同じくらい恐怖を覚えた姫子と侯子は慌てて事務所を飛び出て行きました。


「助かりました、お義母さん」


 左京がソファから立ち上がってお礼を言いました。


「由里でいいわよ、左京ちゃん」


 由里はウィンクしました。璃里は溜息を吐いてから、


「樹里と坂本先生から事情を聞いていたから、嫌な予感がして来てみたら、案の定でした。左京さん、脇が甘過ぎますよ」


 左京を睨みました。


「すみません、お義姉さん」


 左京は頭を下げました。


「私、またここで働きますね」


 璃里が真顔で言いました。


「あら、そうなの?」


 由里は呑気な顔で言いました。


「そうなんですか」


 左京は引きつり全開で応じました。


 まだ受難は続くと思う地の文です。

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