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樹里ちゃん、久しぶりに左京の仕事を手伝う

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 今日は日曜日です。


 樹里は不甲斐ない夫の杉下左京の頼みで、猫探しの手伝いをする事になりました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で了承しました。


 樹里は忙しいのですから、こういう時こそ、普段は役に立たない不倫相手の坂本龍子弁護士に手伝ってもらえばいいと思う地の文です。


「不倫相手じゃねえよ!」


 正確に表現したはずの地の文に理不尽に切れる左京です。どうやら、普段は役に立たないのは認めるようです。


「やめろ!」


 鋭い指摘をした地の文に更に切れる左京です。


(樹里に手伝いを頼んだのには理由があるんだよ)


 左京はニコニコしてついて来る樹里をチラッと見て思いました。


 今回の依頼人は、高級マンションに住んでいる大企業の令嬢なのです。


 その令嬢はまだ女子大生で、左京のターゲットになりそうです。


「勘弁してください」


 地の文に会心の土下座をして懇願する左京です。


(電話で話したら、五反田麻耶さんの友人だと言われた。何か不手際があると、樹里にも迷惑がかかるから、一緒に来てもらったんだ)


 令嬢の名は、高輪ゲートウェイです。


「違うよ! 高輪姫子さんだよ!」


 山手線ボケをかました地の文に間髪入れずに突っ込む左京です。


 二人は電車を乗り継いで、姫子が一人暮らしをしているタワーマンションに着きました。


「すげえな。何階建てだ? こんな高級マンションに一人暮らしとは、かなりの金持ちだな」


 左京はタワーマンションを見上げて言いました。


「そうなんですか?」


 樹里は笑顔全開で首を傾げました。


「樹里、変な事を言わないでくれよ。このマンション、俺らから見ると、物凄いんだから」


 以前、軽井沢で受けた依頼の時、樹里は大きな別荘を「こじんまりしていますね」と言ったのです。


「げっ!」


 左京はマンションの名前を見て驚愕しました。


「ご、五反田タワーマンション!?」


 五反田グループの持ち物でした。


「このマンションはグループの中でも一番格安な分譲マンションだそうです」


 樹里は笑顔全開で怖い事を言いました。


「一番安いって、いくらなんだ?」


 左京は震えながら尋ねました。


「最安値の部屋で九千万円です」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「キュ、キュ……」


 左京は頭が爆発してしまいそうです。


「左京さん、入りますよ」


 樹里はさっさとエントランスを進みました。


「ちょっとお待ちください」


 そこへ警備員三人が駆け寄りました。警備員達は左京を取り囲みました。


「この人は私の夫です」


 樹里は五反田グループの社員証を見せて言いました。


「失礼しました、統括本部長!」


 警備員三人は直立して敬礼しました。


(統括本部長? 樹里、いつの間にそんな役職に?)


 樹里が怖くなる無職の男です。


「無職じゃねえよ!」


 正しい指摘をした地の文に切れる左京です。


 樹里と左京はエレベーターに乗り、最上階の三十階に着きました。


「こちらですね」


 樹里はエレベーターを降りると、廊下を進みました。


「ここか」


 左京は姫子の部屋の前に来ると、インターフォンを鳴らしました。


「どなたですか?」


 女性の声が言いました。


「私立探偵の杉下左京です。ご依頼の件で参りました」


 卑屈な左京が敬語を並べて言いました。


「うるせえよ!」


 図星を突かれたので、涙ぐんで地の文に切れる左京です。


「どうぞ、お入りください」


 ドアロックが解錠する音がしました。


(リモートで解錠されたのか?)


 ギョッとする左京です。


「失礼します」


 二人はドアを開いて中に入りました。


「ようこそいらっしゃいました。私が依頼した高輪姫子です」


 左京は令嬢の美しさに、


(不倫したい)


 心の中で思いました。


「思ってねえよ!」


 核心を突いた地の文に動揺して切れる左京です。


「はっ!」


 我に返ると、樹里と姫子は部屋の奥へ行っていました。


「ま、待ってください!」


 左京は出された来客用のスリッパを履きながら、二人を追いかけました。


「これがいなくなった猫のミーシャです」


 姫子が写真を見せてくれました。写真の猫はアメリカンショートヘアというセレブが好む猫です。


(俺にはトラネコと同じに見える)


 猫探しを生業としている左京は、未だに猫の種類を覚えられません。


「覚えてるよ!」


 地の文に切れる左京です。


「まだ小さいですね」


 樹里が言いました。


「はい。生後六ヶ月です。いつの間にか、部屋からいなくなっていました」


 姫子はじっと左京を見て言いました。


「そうですか」


 若い女性に見つめられて舞い上がる左京です。


(麻耶が言っていた、杉下左京。チョロそうね)


 悪い顔になる姫子です。麻耶と性格が似ています。


「どこがよ!?」


 どこかで聞きつけて地の文に切れる麻耶です。隣で怯えている恋人の市川はじめです。


「今までいなくなった事はありますか?」


 左京は写真を受け取って訊きました。


「初めてです。ですから、心配で」


 姫子は左京ににじり寄りました。


「そうなんですか」


 距離が近い姫子に思わず樹里の口癖で応じる左京です。


「そうなんですか」


 本家の樹里が言い、猫じゃらしを取り出して、付いている鈴を鳴らしました。


「ニャア!」


 すると、カーテンの向こうから風のような勢いで子猫が飛び出して来ました。


「きゃっ!」


 わざとらしく左京に抱きつく姫子です。


「わわっと!」


 左京は慌てて姫子を押し戻しました。


「見つかりましたね」


 樹里は笑顔全開で告げました。


「……」


 不満そうな顔になる姫子です。


「では、失礼します」


 樹里は笑顔全開で写真を姫子に返すと、左京を引っ張って姫子の部屋を出ました。


「チッ!」


 それを見送ってから、舌打ちする姫子です。


(あの奥さん、邪魔ね)


 樹里を敵視する姫子です。


 


「左京さん、気をつけてくださいね」


 樹里は帰り道で言いました。


「え? 何を?」


 全然姫子の悪意に気づいていない左京です。


「そうなんですか」


 少しだけ悲しそうに応じる樹里です。


 さてさて、どうなる事か。ワクワクする地の文です。

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