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樹里ちゃん、五反田氏一家を迎えにゆく

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 樹里は五反田氏から連絡を受け、急遽帰国する事になった五反田氏一家を成田空港まで出迎えに行く事になりました。


「そうなんですか」


 不甲斐ない夫の杉下左京は、引きつり全開で応じました。


 樹里はいつもより早めにミニバンで出発しました。


「行ってらっしゃい、ママ」


 夏休みが終わっても、宿題が終わらなかった長女の瑠里は樹里にガッツリお説教をされたので、涙ぐんで言いました。


「行ってらっしゃい、ママ」


 そんな姉の失態をしっかり教訓として受け止めた次女の冴里は、宿題をきっちり終了させていました。


「いってらっしゃい、ママ」


 宿題はそれほど多くなかったので、終了している三女の乃里は笑顔全開で言いました。


「いってらっしゃい、ママ」


 四女の萌里は宿題とは縁がないので、余裕の笑顔全開です。


「樹里様と瑠里様と……」


 そこまで言って、樹里がすでにいないのに気づいた昭和眼鏡男と愉快な仲間達は立ち尽くしてしまいました。


(いい加減、樹里とラインでも交換しろよ)


 呆れて見ている左京ですが、樹里とラインをしていません。


「してるよ!」


 捏造情報を拡散しようとした地の文に切れる左京です。


 でも、娘達のライングループには入れてもらえていないのは内緒です。


「知りたくなかった……」


 あまりのショックに膝から崩れ落ちる左京です。


「ワンワン!」


 ゴールデンレトリバーのルーサが、


「しっかりしろよ」


 そう言っているかのように吠えました。


 


 樹里は西神田から首都都心環状線を走り、箱崎ジャンクションから首都6号向島線へと入り、両国ジャンクションから、首都7号小松川線に入りました。


 渋滞にも巻き込まれず、樹里の運転するミニバンは順調に進みました。


 ミニバンは江戸川を越え、京葉ジャンクションから京葉道路に入りました。まだ順調です。


 宮野木ジャンクションから東関東自動車道へ入り、更に進みます。


 成田ジャンクションから、新空港自動車道に入りました。約一時間程で、ミニバンは成田空港に着きました。


 樹里は五反田グループ直営駐車場に車を駐めると、五反田氏達が到着するターミナルへと向かいました。


 樹里が到着ロビーに着くと、ちょうど五反田氏一家が現れました。


「樹里さーん!」


 麻耶がにこやかに手を振り、樹里に駆け寄りました。五反田氏と妻の澄子も樹里に手を振りました。


「お久しぶりです、お嬢様」


 樹里は笑顔全開で言いました。


「久しぶりね、樹里さん。元気そうで何よりだわ」


 麻耶は言いました。


「樹里さん、悪いね、無理を言って。急に帰国する事になってね。運転手が皆出払っていて、誰もいなかったんだよ」


 五反田氏はバツが悪そうに言いました。


「とか言って、樹里さんが一番早く来てくれるから、樹里さんに頼もうって言ってたじゃない」


 麻耶がバラしてしまいました。


「ハハハ、そうだっけ?」


 お茶目にとぼける五反田氏です。澄子は苦笑いをしています。


「そうなんですか」


 樹里はそれにも関わらず、笑顔全開で応じました。


「では、車を回して来ます」


 樹里は先にロビーを出ると、ミニバンを出口の前に乗りつけました。


「ありがとう、樹里さん」


 麻耶がお礼を言いました。五反田氏一家はミニバンに乗り込みました。


「邸まで直行してください」


 澄子が言いました。


「何か、楽しい」


 助手席に敢えて乗った麻耶がウキウキしています。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。




 ミニバンは渋滞に引っかかる事なく、成城の五反田邸に到着しました。


「げ、旦那様!」


 掃除をサボって、庭の東屋でくつろいでいた目黒弥生が慌てて出迎えました。


「悪いね、目黒さん。祐樹君は元気かね?」


 五反田氏が車から降りながら尋ねました。


「はい、元気です!」


 弥生は緊張のあまり、声が裏返っていました。麻耶は笑いを噛み殺しています。


「そうなんですか」


 樹里はそれにも関わらず、笑顔全開です。


「車を駐車場に駐めたら、仕事にかかります」


 樹里はミニバンを裏庭にある駐車場に移動しました。


「お茶を淹れます」


 弥生は慌てて、キッチンへ走りました。


「樹里さん、旦那様達が帰るの知っているのなら、教えてくださいよ」


 弥生がキッチンで樹里に言いました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


 弥生は溜息を吐き、お茶を淹れると五反田氏がいる書斎へ行きました。


「ああ、ありがとう。妻は疲れて寝室で休んでいるので、お茶はいいそうだ。麻耶は自分の部屋にいるよ」


「畏まりました」


 弥生麻耶の部屋へ行きました。


「ありがとう、弥生さん。少し休んでいって」


 外面はいい麻耶は冷蔵庫からケーキを出しました。


「外面はいいって、どういう事よ!」


 最近リアクションがいいので、弥生より麻耶をいじる地の文に切れる麻耶です。


「ありがとうございます」


 弥生は麻耶をひとしきり話をしてから、キッチンへ戻りました。


「あれ? 樹里さん?」


 樹里の姿がみえないので、弥生はあちこち探しました。そして、五反田氏の書斎から出て来るところを見かけました。


(まずい! 旦那様に私の事、チクられた?)


 絶対にそんな事をしない樹里の事を疑うダメな女です。


「うるさいわよ!」


 正直に感想を述べた地の文に理不尽に切れる弥生です。


「あ、弥生さん、ちょうどよかったです」


 樹里は笑顔全開で言ったので、弥生はギクッとしました。


 遂に首でしょうか?


「やめて!」


 涙ぐんで地の文に抗議する弥生です。


「な、何でしょうか?」


 怯えながら尋ねる弥生です。


「弥生さんのお給料なのですが……」


 樹里がそこまで言うと、弥生は動悸で立っていられなくなり、その場にしゃがみ込みました。


「どうしたのですか、弥生さん?」


 樹里は心配そうに訊きました。


「お給料、カットでしょうか?」


 弥生が目を潤ませて言いました。


「違いますよ。お給料を上げるそうなので、旦那様と相談してください」


 樹里が笑顔全開で告げると、


「ええええ!?」


 あまりにも意外な展開だったので、大声を出してしまう弥生です。


「旦那様がお待ちですから、早く入ってください」


 樹里が言いました。


「あ、はい」


 弥生は書斎のドアをノックして中へ入って行きました。


 当然の事ながら、樹里も昇給します。また左京と格差が大きくなってしまうので、左京には内緒にした方がいいと思う地の文ですが、


「あ、左京さん、お給料を上げていただく事になりました」


 全く悪気なく樹里は左京に伝えてしまいました。左京が落ち込んだのは言うまでもありません。


 


 めでたし、めでたし。

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