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樹里ちゃん、ラーメンを堪能する

 御徒町樹里は日本有数の大富豪である五反田六郎氏の邸の専属メイドです。


 SDGsをコンセプトにしているはずなのに、食べ物を粗末にしたり、生産者をバカにしたようなコントを作ったりしている放送を続けているブジテレビの大食い選手権も遂に決勝戦です。


「やめて!」


 根も葉もなくはない事を述べた地の文に涙目で切れる酒野投馬美です。


(私は知らないのよ! そういう下品な制作をしているのは、きっとあいつよ!)


 脳の老化が進み、名前が思い出せない酒野です。


「違う!」


 鋭い分析をしたはずの地の文に理不尽に切れる酒野です。


 そんな不毛な事をしているうちに、ロケバスは次の対戦会場である「ラーメン古池ふるいけ」に着きました。


 そこは東京でも一二を争う老舗で、店主はすでに百歳を超えています。


「超えてねえよ!」


 まだ二十代の店主が捏造を繰り返す地の文に切れました。


「俺は三代目だよ!」


 まだ若いのはそういう事だと切れて解説する店主です。


「一時間の休憩の後、始めます」


 ディレクターが言いました。


「よかったよ、トイレに行ける」


 なぎさはトイレへと走りました。今回は誘われなかったので、ホッとするADの子です。


「お腹空いたから、チャーハン食べていい?」


 すぐに戻って来たなぎさが酒野に尋ねました。


「いや、これからバトルが始まりますので、食べない方がいいんじゃないですか?」


 酒野が苦笑いして応じた時には、


「大盛りで!」


 すでに注文を終えていたなぎさです。唖然とする酒野とディレクターです。


(あの女、どういう胃袋してるのよ? これからラーメンを何杯も食べるのに)


 中曽根まどかは呆れていました。


(松下なぎさはこれで脱落確定ね)


 ほくそ笑むアンジョリーナ沢入そうりですが、テニスはしていません。


「そうなんですか」


 樹里はそれにも関わらず、笑顔全開で応じました。


「あれ、大盛り頼んだのに、こんな少しなの?」


 なぎさはバケツ一杯分くらいあるチャーハン大盛りを見て言いました。


「当店はこれが大盛りです」


 東京で一番の大盛りチャーハンだと自負している店主はイラッとして言いました。


「そうなの? この前、樹里と食べたチャーハンの小盛りと同じくらいだね」


 なぎさは全く悪気なく樹里に言いました。


「そうですね。もう少し、多かったと思います」


 樹里が火に油を注ぐような事をまるで悪気なく言いました。


「どこで食べたんですか!?」


 イラつきMAXの店主が訊きました。


「夢でだよ」


 衝撃の回答をするなぎさです。


「夢!? 夢ならいくらでも食べられますよ!」


 鼻で笑う店主ですが、


「G県M市にある中華料理店です」


 樹里が補足説明しました。


「何ーっ!?」


 現実に存在する店だと知り、仰天する店主ですが、


(東京じゃないのなら、差し支えない)


 G県を見下すような事を思いました。


「そんなつもりはねえよ!」


 焦って地の文に切れる店主です。


「ああ、美味しかった」


 そんな事をしているうちに、なぎさはチャーハン大盛りを完食しました。


「えええ!?」


 二分とかからず食べ切ったので、店主だけではなく、中曽根も沢入も驚愕しました。


「そうなんですか」


 樹里は笑顔全開で応じました。


「大丈夫なんですか、なぎささんは?」


 畠町真理子アナがディレクターに囁きました。


「わからん」


 なぎさの胃袋のポテンシャルが謎になったので、ディレクターは首を横に振りました。


(松下なぎさは、もう終わり)


 中曽根と沢入は樹里を見ました。


(この女も底知れない。油断はできない)


 同じ事を思う時点で咬ませ犬感が漂う二人です。


「やめて!」


 負け確にされた中曽根と沢入が涙ぐんで地の文に切れました。


 


 そして、休憩時間が終了し、本番開始です。


「さて、選手権は混戦模様です。とうとう決勝の会場であるラーメン古池さんに来ました」


 畠町アナが言いました。


「こちらでは、ラーメンの数で勝敗が決まります。そのため、シンプルなものが有利です。それを勘案して、戦ってください」


 畠町アナは言うと、


「それでは、始めてください!」


 バトルの開始を宣言しました。


「醤油ラーメンを五杯ください!」


 ロケットスタートを狙った中曽根が言いました。


「塩ラーメンを十杯ください!」


 沢入はあっさりしている塩ラーメンで数をこなそうとしました。


「タンメン十杯!」


 チャーハンを爆食したばかりのなぎさがとんでもないものを注文しました。


(タンメンは野菜炒めが載っているから、不利なのよ。バカなの、あいつ?)


 またほくそ笑む沢入ですが、ラケットは持っていません。


「味噌ラーメンを十杯ください」


 樹里が笑顔全開で注文しました。


(味噌ラーメンも、もやしがたくさん載っているから不利なのよ。バカね)


 中曽根は樹里の戦略を笑いました。


 ラーメンがそれぞれの前に並びました。


 中曽根と沢入は早速猛然と食べ始めました。


「ライス大盛り!」


 なぎさが言いました。中曽根と沢入は思わず手を止めました。


(何考えてるの? ライスなんか食べたら、ラーメンが食べられなくなるわよ)


 中曽根はなぎさを心の中で笑いました。


「ええ!?」


 なぎさはライスをタンメンに入れてしまいました。


(下品な食べ方ね)


 中曽根と沢入は呆れました。


「いただきます!」


 なぎさはまるで飲み物のようにタンメンライスを食べてしまいました。


「……」


 言葉もない中曽根と沢入です。


「いただきます」


 樹里も次々に味噌ラーメンを食べていきました。


「気持ち悪い……」


 中曽根も沢入もなぎさと樹里の食欲を見ていて食べられなくなりました。


「中曽根さんと沢入さんの手が止まりました! これはなぎささんと樹里さんの一騎討ちの様相を呈して来ました!」


 畠町アナの実況にも熱が入ります。


「追加お願いします」


 樹里が十一杯目を食べ始めました。


「ううん、お腹いっぱい……」


 なぎさは十杯目でギブアップしました。


「おお、なぎささんが脱落です! 優勝は樹里さんに決まりました!」


 畠町アナが興奮して言いました。


「樹里さん、おめでとうございます!」


 畠町アナが目録を樹里に手渡しました。


「ありがとうございます」


 樹里は笑顔全開で応じました。


(結局、樹里さんが勝ってしまった……)


 酒野は顔を引きつらせていました。


 


 そして、その頃。


「あれ? みんなどこ行ったの?」


 まだ焼肉店にいる西園寺伝助です。スタッフ全員に忘れ去られていました。


 めでたし、めでたし。

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